最近の話題 2013年10月26日

1.AppleがiPadAirを発表

  2013年10月22日のThe Inquirerが,AppleのiPad Airの発表を報じています。iPad4の次世代機で,プロセサがA6Xから64bitのA7に変わっています。これはiPhone 5Sと同じチップです。また,iPhone 5で採用されたMotion CoprocessorのM7チップも入っています。

  売りは,iPad4に比べて20%薄く,厚みが7.5mmとなり,重量も184g軽くなり,478gと9インチタブレットとしては最軽量とのことです。

  2013年10月22日のEE Timesの記事には,ボディーが-23%,バッテリが-25%,レティナディスプレイが-20%,タッチサンサが-70%,ガラスが-17%と,多分,重量の削減の内訳 と思われるものが書かれたダイアグラムが掲載されています。ディスプレイは解像度は2048×1536で,スクリーンサイズも9.7インチで変わっていないのですが,20%重量が減っているのは,ガラスを薄くするなどパネル自体は 変更されているようです。

  ボディーの軽量化は,ベゼルの面積が43%減ったことと,全体的な軽量化があると思われます。そしてバッテリの25%軽量化は,A7やM7の採用で,電力効率が上がり,10時間の動作を小さなバッテリで実現できたことが効いていると思われます。

  その他の改善としては,WiFiのアンテナが2本になりMIMOで801.11nの通信速度が速くなっています。

  また,2048×1536の解像度のレティナディスプレイを搭載する新iPad Miniも,同時に発表されました。スクリーンサイズは7.9インチで,A7の採用とMIMOの採用はAirと同じです。

2.Imagination TechnologyがMIPSのWarrior CPUコアを発表

  2013年10月14日にImagination Technologyは,MIPSのリリース5アーキテクチャに基づくP5600コアを発表しました。RISCプロセサの老舗のMIPSは,今年2月にImaginationに買収されましたが,買収後,初めてのCPUコアの発表です。

  Warriorと呼ばれるこのコアは32ビットアーキですが,アドレス拡張で,40ビットのメモリまでアクセスできるようになっています。また,リリース5の128bitSIMD命令や仮想化サポートなどが入っています。そして,最大6コアまでのキャッシュコヒーレントなクラスタが作れるとのことです。

  5 CoreMark/MHz,3.5DMIPS/MHzを超える性能を持ち,SPECint2000,LINPACK,Javascript/Browser TestなどでARMのコアに比べて1.2〜2倍の性能とのことです。また,Memcopyでは2〜3倍の性能と書かれています。そして,SamsungのExynos 5 Octaに比べて,最大30%チップ面積が小さいとのことです。クロックは,1GHzから2GHz以上まで の広い範囲での実装が可能だそうです。

3.ARMがARMv8−Rアーキテクチャを発表

  2013年10月23日のEE TimesがARMのARMv8-Rアーキテクチャの発表を報じています。

  ARMのCortex-A57などは汎用のARMv8-Aアーキテクチャですが,-Rが付くアーキテクチャはリアルタイム性を持った制御用のアーキテクチャです。このARMv8-Rは,自動車などのECUをターゲットにしたアーキテクチャで,ベアメタルのハイパバイザで,各種のOSとその上でアプリを動かし,アプリ間の完全な分離とリアルタイム性を両立させるという点にポイントが置かれています。

  自動車のエレクトロニクス化が進み,部品メーカの各社が,自社の製品の魅力を増すために,ソフトを開発して,そのソフトを寄付してくるという状況になっているのだそうです。そうすると,ECUはそれらのソフトを動かす必要があり,必然的に色々なアプリが動かせる環境を作る必要があるというわけです。

  しかし,カーナビなどのインフォテインメントといわれる情報提供やゲームなど,また,窓の開閉などは,多少,時間遅れがあってもOKですが,ブレーキのコントロールなどは遅れは許されません。

  ということで,プロセサハードウェアをベアメタルのハイパバイザで分割して,ブレーキ制御などのリアルタイム性の確保が必須な仮想マシンには一定の処理能力を割り当てて, リアルタイムOSを使い,いつも同じ時間で処理できるようにし,時間遅れが許される処理は,Androidなどの汎用のOSを使い,全体では一定の処理能力を全ての処理でシェアしてベストエフォートでサービスするというような制御が必要になります。ARMv8-Rでは,このような使い方ができるようになっています。

  自動車用の用途では,まだ,64ビットアーキテクチャは必要ないとのことで,ARMv8−Rアーキテクチャは32ビットで,ARMv7−Aや16ビット命令のThumbと互換があるのことですが,詳細は10月29日から開催されるARM Techconで発表されるとのことです。

4.IBMがASIC用にARMコアをライセンス

  2013年10月24日のEE Timesが,IBMがASICの制御コア用にARMのCortex-A15,A12,A7とM4コアのライセンスを受けたと報じています。

  IBMは自社のPowerPCコアを使ってきていたのですが,ここ数年,これらのコアをアップデートしていませんでした。そして,今回,PowerPCコアをアップデートする代わりに,ARMコアを使う方針に転換したようです。

5.カムリの急加速事故はトヨタの責任

  2013年10月25日のEE Timesがカムリの急加速による死亡事故はトヨタの責任として,賠償を命じたオクラホマ州の地裁の判決について報じています。

  2011年にNASAが調査を行い,トヨタには責任が無いというレポートを出しているのですが,NASAは調査期間が短く,十分な調査ができていないとのことで,その続きの調査を7人のエキスパートが行ったとのことです。トヨタのソースコードを精査した結果,トヨタの2005年のカムリのスロットルコントロールソフトには保護されていないクリティカルな変数があり,その変数の値が化ける複数の可能性があるとのことです。トヨタのエンジニアは,ビット化けを防ぐ努力をしているのですが,いくつかの重要な変数が漏れており,それらの変数のビット化けを防ぐハードウェア的な防護もされていないと述べています。

  宇宙線起因のビット化けや,バッファオーバフローやレースコンディションなど多くのソフトウェア的なバグでビット化けが起こり,その発生条件の組み合わせは膨大で,全部のケースをテストすることはできない。しかし,実車のテストで,24のタスクの中の一つのタスクが死んだだけで急加速が起こることを証明した。トヨタのシステムは全ての急加速を検出するには不十分と述べています。

  ソフトのバグや宇宙線起因のビット化けをゼロにすることは難しいのですが,何とか,頑張ってもらうより他はありません。航空機では3重系の多数決でハードエラーを防ぎ,各系のソフトは同じ仕様に基づいて,別々のチームが独立にコードを開発して,同じバグが起こらないようにするというような対策をとっています。

6.Dadi Perlmutter氏が来年2月にIntelを退社

  2013年10月23日のEE Timesが,来年の2月20日にDadi Perlmutter氏がIntelを退社すると報じています。Perlmutter氏はイスラエルのTechnionを卒業してIntelに入り,Coreプロセサの最初のBaniasや低電力のAtomの開発などを主導してイスラエルの設計センターをIntelの主要な設計センターに育て上げた功労者です。

  Perlmutter氏は,プロセサを開発するアーキテクチャグループの責任者となり,CEOの最有力候補と見られていました。しかし,製造部門出身のKurzanich氏がCEOになり,Perlmuttter氏は設計部門の知識を生かしてCEOを補佐する役目に着くと見られていましたが,折り合いがつかず,辞めることになったものと思われます。

  Perlmutter氏がIntelを辞めてから何をするのかは,EE Timesの記事は触れていません。

@1182462

 

 

  

  

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