最近の話題 2013年11月2日

1.D-Waveが量子コンピュータチップの製造をCypressに移転

  2013年10月22日にCypress Semiconductorは,D-WaveがファウンドリとしてCypressを選び,D-Waveの量子コンピュータチップの製造テクノロジをミネソタ州のブルーミントンにあるCypressのファブに移転することに成功したと発表しました。

  従来,D-Waveは自社で超伝導の量子コンピュータチップを作っていたのですが,それをCypressに外注することにしたというわけです。D-Waveからの移転を今年1月から開始し,Cypressからの1stウエファは6月26日に出荷されたとのことです。

  このウエファは,従来D-Waveが得ていたよりも高い歩留まりを示し,Cypressのファブが高品質であることを示したと述べています。また,Cypressのほうが微細化のテクノロジも進んでおり,微細化を継続できるのも移転のメリットとD-Waveは述べています。

  NASA/GoogleのD-Wave 2の購入などで,D-Waveの量子コンピュータの評価が上がってきており,Cypressとしても,うまくいけば,儲かるビジネスになるという読みがあるものと思われます。

2.Calexedaが第2世代のMidway ARMチップを発表

  2013年10月28日のThe Registerが,CalexedaのECX-2000 Midwayチップの発表を報じています。初代のECX-1000はARM Cortex-A9コアだったのですが,ECX-2000はA15コアを4個と4MBのL2$搭載し,クロックは1.1〜1.8GHzで,これに加えてA7を2コア搭載しています。

  このA7コアは管理用で1コアは,システムや電力の管理,リモートコントロールなどを担当し,もう1コアは用途に応じてプログラムして使うとのことです。

  そして,ECX-2000は,IOコントローラ,10Gbit EthernetとCalxedaのFleet Fabricを集積しています。ECX-2000は1-10Gbit/sのリンクを5本持ち,各種のトポロジのネットワークを構成できます。1ホップのレーテンシは200nsとのことで,Ethernetよりかなり速いスピードです。

  TDPは,現在,決定のためのデータを取得中とのことですが,メモリを含めて,1.1GHz動作で8W,1.8GHz動作で12W程度と書かれています。10月28日のSemiAccurateは1.8GHzでType 11W,TDP 14Wと書いています。

  今年の年末にはベータサンプル,2014年の前半には製品の出荷を始める予定です。

  Intelの9WのAvoton C2630はFabricやマネジメントコアが無いし,L2$も2MBと半分,上位のAvotonは電力が大きいので,競争力はあるとのことです。32bitアーキであるところがAvotonに負けていますが,64bitアーキのSalitaを開発中とのことです。

  このMidwayは初代とピン互換で,ECX-1000を取り外して,ECX-2000を挿して動作させられるようになっています。また,64bitのSalitaもピン互換だそうです。

3.筑波大のHA-PACSがTCA部を増設し1ペタFlops超に

  2013年11月1日に筑波大は,HA-PACSスパコンのTCA部が完成し,全体で1ペタFlopsを超える性能になったと発表しました。

  HA-PACSはCRAY(に買収されたAppro)の268ノードのクラスタで802TFlopsのピーク性能でしたが,Tightly Coupled Accelerators(TCA)と呼ぶ部分を追加してピーク性能が1.166PFlopsになりました。

  TCA部はXeon E5 2680 v2 2ソケットに4台のTeslaK20xを接続したノード 64ノードで構成されています。TCA部の特徴は,筑波大が開発したPEACH 2というLSI(ハードはFPGAですが)でノード間を接続し,別ノードのGPU間で直接データ転送ができるようになっている点です。これによりCPUを使った別ノードのGPU間の データ転送に比べて,通信時間が数分の1の短縮されるとのことです。

  PEACH 2からは4本のx8 PCI Expressリンクが出ており,自ノードとの接続に1リンクを使うので,3つの別ノードと接続できます。従って,4ノードの完全結合や8ノードのキューブなどの接続ができますが,発表文からは,64ノードがどのように接続されているのかは明らかではありません。

4.iPad AirのA7はiPhone5より少し高速

  2013年11月1日のEETimesがChipworksの解体結果を引用して,iPadAirのA7 SoCはiPhone5のA7と同じチップだけど,パッケージは多少違っていて熱抵抗を下げてクロックを1.3GHzから1.4GHzにあげる程度の高速化が図られていると報じています。

  バッテリは,以前のiPadでは3セル43WHrであったのですが,Airでは3.73V 32.9WHrの2セルのバッテリとなり,軽量化に貢献しているとのことです。

5.どのようにして蛇が滑空するのか?

  11月17日からDenverで開催されるSC13で,ジョージワシントン大のLorena Barba準教授が,蛇の滑空をNVIDIAのK20 GPUを使って解析した論文を発表すると,2013年10月31日のHPC Wireが報じています。インドや東南アジアの熱帯雨林に棲むChrysopelia paradisiという蛇は,木の枝から飛んで,最大21mも滑空するそうです。

  蛇は体を扁平にして,くねくねと折り曲げて飛び,滑空方向と直交した部分の体が航空機の翼のように浮力を発生させるとのことです。これを2次元モデルを作ってGPUで流体計算を行い,また,3Dモデルを3Dプリンタで製作して水流に入れて浮力の発生条件を解析したとのことです。

  2次元解析の結果は最大の浮力の発生条件がずれており,GPU数を増やして3Dのモデルでの流体解析を行う予定とのことです。

  

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