最近の話題 2013年11月9日

1.Apple A7 PoPの断面

  2013年10月29日のSemiconductor Manufacturing & Designが,Chipworksの行ったA7 PoP(Package on Package)の断面写真を掲載しています。Chipworksのホームページには,この写真は掲載されていません。

  それによると,A7チップのパッケージの上に,ElpidaのDRAMパッケージが載っているのですが,相互の接続はボールではなく,Through Mold Viaで,ピッチは0.35mmで,3周で合計456接続となっているそうです。ElpidaのDRAMパッケージに銀の線が使われているのが驚きと書かれており,DRAMパッケージの3層の配線層はAgだそうです。Agを使った理由は分かりません。TMVの接合のために必要なのでしょうか?

  そして,A7パッケージとプリント板は0.4mmピッチのボールで接続されており,34×38=1292端子となっています。A7のパッケージはコア材の両側に3層の計6層のように見えます。

  2013年11月8日のEE Timesの記事では,ファブは,TSVを使う3D実装のチップには通常のチップの10倍の値段を付けているとのことで,本格的な3D実装を使うのは高く付きます。その点,このAppleの実装は,Poor Man's 3D ICでそれほどコストアップにならず,現実的な解のようです。

2.来年のISSCCでIntelはIvytownを発表

  2013年11月5日のEE Timesが,来年2月のISSCCで,IntelはIvybridge世代のハイエンドサーバチップであるIvytownを発表すると報じています。ISSCCのサイトにはAdvanced ProgramもPress Kitも上がっていないのですが,メディアへの事前のブリーフィングでの発表と思われます。

  Ivytownは22nmプロセスで作られ,15コアと37.5MBのL3キャッシュを搭載し,それらをEnhanceされたリングで接続するそうです。集積度は4.31Bトランジスタです。

  そして,AMCCは64bit ARMのX-Geneを発表します。3GHz動作のデュアルコアモジュールの消費電力が4.5Wで,これを4個搭載しています。プロセスはTSMCの40nmで,0.9Vで動作させています。

  IBMはHot Chipsでアーキテクチャを発表したPOWER8の実装関係を発表し,AMDはSteamrollerコアを発表します。

3.Intelは巨大顧客向けのカスタム化したCPUを提供

  2013年11月6日のThe Registerが,IntelのカスタムCPUに関する記事を掲載しています。FacebookやeBayのような大量にCPUを買う顧客に対しては,Intelは市販しているCPUではなく,色々なカスタム化の要求を入れたCPUを提供しているとのことです。

  Facebookは,CPUコアなどの主要部分はいじっていないのですが,電力マネージメントなどは自社の要求を入れてカストマイズしたチップを使っているとのことです。 顧客によって,キャッシュ容量の変更,IOポートの数の増加,クロックの向上などの要求があり,Intelは,今年,18種のカスタムCPUを出荷したいとのことです。

  大口のユーザのニーズに応えるというのは,ビジネスですから当然ですが,モジュール化でカストマイズがやりやすい設計になったことも効いているのでしょうね。

4.AmazonのクラウドでNVIDIAのGRID GPUが使用可能に

  2013年11月5日のHPC WireがNVIDIAの発表を報じています。AmazonのEC2クラウドのG2インスタンスで,NVIDIAのGRID GPUが使用可能になるとのことです。

  GRID K2 GPUはGK104チップを使っており,倍精度の浮動小数点演算性能は,2個で190GFlopsとあまり高くは有りませんが,単精度の性能は2個で4577GFlopsと高く ,3Dグラフィックスでは高い性能を発揮します。GRID GPUは,科学技術計算というより,表示画面を作ってネット経由で送るビジュアルコンピューティングや仮想デスクトップ,オンラインゲーミングなどを主要な用途しています。強力なGPUを持っていない携帯デバイスでも,高度なビジュアライゼーションが使えるようになるというのが売りです。

  なお,NVIDIAのGRID GPUはK1というローエンドの製品もあり,K1かK2かどちらが使われているかは不明です。

5.HPがXeonベースのNonStopシステムの開発を公表

  2013年11月5日のThe Inquirerが,HPがItaniumの棺の釘を打つと報じています。HPのハイエンドサーバのIntegrityシリーズと二重化による高信頼が売り物のNonStopシリーズはIntelのItaniumプロセサを使っています。今や,Itaniumの顧客は,これらのサーバだけと言っても過言ではない状況で,IntelはItaniumの開発を止めたがっているのは公然の秘密です。

  HPもItaniumに先が無いことは分かっているので,ItaniumからXeonに切り替える開発を行っているのも公然の秘密ですが,両社ともに公式的には認めていません。

  Integrityシリーズは,OSがHP-UXではなく,WindowsとLinuxですが,既にXeonベースの製品が出ており,Itaniumオンリーの製品はNonStopシリーズだけとなっていたのですが,今回,Xeonベースの製品を開発しており,2015年には,顧客がItaniumかXeonかを選べる状況になると発表しました。NonStop OSのアプリが動くとのことですが,アプリはリコンパイルが必要か,エミュレーションでバイナリがそのままで動くのかは明らかではありません。

  しかし,Itaniumにしがみついていても先が無いのは分かっているので,当然,顧客はXeonベースのNonStopシステムに流れるはずで,Itaniumの棺の蓋を留める釘を打つことになると思われます。  

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