最近の話題 2013年12月21日

1.ARMサーバチップのパイオニアのCalxedaが業務を停止

  2013年12月19日のEE Timesが,ARMサーバチップのパイオニアであるCalxedaが業務を停止すると報じています。CalxedaはECX-1000,ECX-2000というARMコアと,それらを接続するファブリックなどを内蔵したサーバ用のSoCを開発して来ました。HPがMoonshotのプロトタイプとして評価したり,Boston ComputersやPenguin ComputingがECX-1000を使う製品を出したりしましたが,32bit ARMコアを使うサーバ市場は立ち上がらず,大きな収入をもたらさなかったようです。

  2013年12月19日のPC Worldによると,Calxedaは2014年の終わりまでには64bit版を出す計画を発表していますが,それまで資金が続かず,資産を保護するため,業務を停止し,IPの売却などを担当する少数の従業員を残して,大部分の従業員を解雇するとのことです。

  Applied Microは既に64bitチップを完成していますし,AMD,TI,NVIDIA,Marvell,Samsungなどの大手がARMサーバSoCの開発に乗り出してきており,2014年後半にCalxedaが64bit版を出しても,これらの会社に対抗していけるかどうかは難しいところで,ベンチャーキャピタルも追加の投資には二の足を踏んだようです。

  また,10月には,Facebookのハード部門の責任者のFrank Frankovsky氏がCalxedaのボードに加わったことが報じられましたが,Facebookもお金は出さなかったようです。

  アイデアは良かったのですが,時期が早すぎて,市場より先に走ってビジネスにならなかったという例です。

2.GoogleやFacebookはARMサーバに移行するのか?

  2013年12月13日のBloombergが,内部の事情に詳しい人の発言として,Goolgeが自社用のARMコアのサーバプロセサの開発を検討していると報じています。GoogleはIntelのサーバチップの第4位の顧客だそうで,これが減るのはIntelにとって大きな痛手です。

  もっとも,どの程度まじめに検討しているかは不明で,Intelとのサーバチップの価格交渉を有利に運ぶためのジャブではないかと見る向きもあるとのことです。

  また,2013年12月13日のThe Registerが,FacebookはHip Hop Virtual Machine(hhvm)のARM移植を行っており,ARMでhhvmが動くようになればFacdebookのPHPが動くようになる。また,ARMのスキルを持つ人材の求人広告も出ていると報じています。

  FacebookはARMベースのサーバへの移行を準備しているようですが,プロダクションに使えるようになるには,まだ,2年くらいは掛かるという発言のあり,直ぐに移行が始まるわけではないし,どれだけの部分が移行するかも分かりません。  

3.東大の先端科学技術研究センターが富士通のTCクラウドを導入

  2013年12月19日に富士通は,東大 先端科学技術研究センターにテクニカルコンピューティングクラウドサービスを提供すると発表しました。東大先端研はIT創薬の研究のためのスパコンの導入を考えたのですが,電力供給に制約があることと,将来の研究ニーズの増大に合わせてフレキシブルに処理能力を増強したいという要求から,自前のスパコンの設置ではなく,クラウドサービスを使うことにしたのだそうです。

  富士通が提供する環境は,PRIMERGY CX250 S2とCX270 S2からなり,全体では1万コア以上で230TFlops以上のGPU性能を持ち,それに加えてGPUの性能が250TFlops以上となっています。これにEternus DX80 S2のFEFSファイルシステムが付きます。EFFSはLustreをベースに富士通が拡張したファイルシステムです。

  そして,富士通研究所が開発した高速表示ができる仮想デスクトップを持ち,東大からネットワーク経由で動画や高精細な画像の表示ができ,プレ,ポスト処理もリモートで行えるとのことです。

  富士通はTCクラウドの提供を2年前から行っていますが,あまり導入事例を聞きませんから,このような大規模の導入は初めてではないかと思います。

  リモートでプレ,ポスト処理ができて解析が走らせられせれば,ローカルにスパコンを持つ必要はありません。その場合,同じハードを使うなら,富士通の大規模データセンタに置いておく方が,冷却の効率や,セキュリティーなどで有利ではないかと思います。また,能力が足りなくなれば,増設してと富士通に言えば済みます。勿論,利用料は増えますが,増設やアップグレートの予算の確保から,センターの先生は,メーカー選定,設置という作業に掛かる時間を創薬の研究に使うことができます。また,富士通も創薬での使用から,将来のスパコンをどうして行けば良いのかというインプットが得られ,Win-winではないかと思います。

4.マイナビのSC13レポート

  私のレポートですが,マイナビがSC13のレポートを掲載しています。これまでに,CPU-GPU統一メモリを実現したCUDA6NECのSX-ACEスパコン富士通の次期スパコンの記事が掲載されています。

  この後,Top500,Green500,HPC Challenge,MicronのHMC,MicronのAutomataなどの記事が予定されえています。また,日本の大学,研究所のブースなどを紹介する展示の記事も書いています。ご期待ください。

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