最近の話題 2014 年1月25日

1.Top500創始者のHans Meuer教授が77歳で逝去

  2014年1月21日のHPCWireが,昨日,Hans Meuer教授が逝去したと報じています。Meuer教授はDongarra教授,Strohmaier氏とTop500を創始した方で,ドイツで開催されるISCのジェネラルチェアーを務めていました。

  一昨年のSCではTop500の第40回のお祝いパーティーに招いて頂き,そこでお会いしたのですが,昨年11月のSC13のTop500の発表には欠席されていて,お忙しいのかと思っていたのですが,がんだったんですね。77歳は,まだまだというお年で,お悔やみ申し上げます。

2.D-wave 2量子コンピュータのテスト結果

  2014年1月21日のThe Registerが,ETH ZurichのMatthias Troyer教授らのグループが行ったD-Wave 2マシンの評価結果を報じています。

  NVIDIAのGPUを使うシミュレーテッドアニーリングと,D-Wave社のD-Wave 2マシンで最大503Qubitを使った性能比較を行い,量子効果によるスピードアップは見られないと結論付けています。

  以前に行われた128QubitのD-Wave 1では,Qubit数が少ないので,明確な効果が出なかったのですが,512Qubitならシリコンのコンピュータより格段に速くなると期待されていたのですが,今回も,D-Wave 2が10倍速いケースもあるが,100倍遅いケースも多くあり,1000ケースのテスト全体を見ると,量子効果によるスピードアップがあるとは言えないとのことです。

  Troyer教授のテストには,D-wave のユーザであるGoogleのAIグループの人や,D-wave 1のユーザである南カリフォルニア大の人も参加しており,反D-waveグループの人たちだけのテストではありません。

  この結果に対して,GoogleのAIラボは中間結果の報告を掲載しています。量子コンピュータのスピードを制約しているのは,Qubit間の結合が疎なためで,次世代のD-Waveの素子は結合の本数を増やすので,性能が改善すると書かれています。

  また,The Registerの記事によると,D-Waveは,スピードが問題ではなく,量子効果でコンピューティングを行っているかどうかが問題と述べています。そして,エンタングルメントが起きているかどうかを検証するテストを提案しています。

  今回のテストでも,本当に量子アニーリングで計算しているのかどうかに明確な決着は付きませんでした。しかし,500Qubitに規模を大きくしても,GPUベースのシミュレータと同程度の性能ということで,D-Wave 2で飛躍的に性能アップとはならず,D-Wave社としてはビジネス的には苦しい状況と思われます。

3.AMDが昨年の4Qは黒字を達成

  2014年1月22日のEE Timesが,2013年4QのAMDの決算について報じています。売り上げは$1.59Bで,3Qから9%の増加,昨年同期比較して28%増です。そして,損益は$45Mの黒字となっています。

  売り上げの45%を占めるComputing(CPUなど)は,前期から8.6%のダウン,前年同期からは12.9%のダウンで,PC市場の縮小が響いています。

  一方,売り上げの55%を占めるGraphics &Visual Solutionsは前期から28.9%増,前年同期からは163.5%と大幅な伸びです。これはSonyのPS4とMicrosoftのXbox OneのSoCの売り上げとR7,R9 GPUの売り上げが好調なことが主因です。

  4Qは黒字になったのですが,2013年全体で見ると,売り上げは2012年からは2%ダウンの$5.3Bで$83Mの赤字という成績です。

  また,開発中の64bit ARMプロセサを,2014年のうちに1種は出すとのことで,x86とARMv8のコアを揃えることで製品の競争力を強化するとのことです。

4.AMDが16コアOpteronを発表

  2014年1月22日にAMDは12コアのOpteron 6338Pと16コアの6370Pを発表しました。これらはWarsawというコードネームで開発されてきたサーバ用のプロセサです。

  AMDには2チップ搭載のパッケージで16コアという製品がありましたが,今回のWarswaはシングルチップで16コアを集積しています。ただし,コアは第2世代のPiledriverで, 先週紹介したKaveri APUに使われている第3世代のSteamrollerではありません。

  6338Pはクロックが2.3GHz,ターボでは2.8GHzで,TDPは99Wとなっています。6370Pはクロックが2.0GHz,ターボでは2.5GHzで,TDPは99Wと同じです。メモリチャネルは4チャネルで,DDR3-1600をサポートしています。また,低電力のULVやLRDIMMもサポートされています。

  部品ディーラのPenguinやAvnetは,6338Pを$377,6370を$598で販売しているとのことです。

5.IBMがx86サーバビジネスをLenovoに売却

  2014年1月23日のEE Timesが,IBMがLenovoにx86サーバビジネスを$2.3Bで売却することに合意したと報じています。

  IBMのx86サーバビジネスは,2013年には税引き後で$26.4Mの赤字とのことで,収益の低下に苦しむIBMのお荷物になっていました。Lenovoに売却交渉を行っているという報道は以前からあったのですが,値段で折り合わないとのことでした。

  それが$2.3Bで,そのうちの90%の$2.07Bは現金,残りはLenovoの株で支払うという条件で折り合いが着いたとのことです。IBMは当初,$6Bの値をつけていたと言われ,IBMは大幅に値段を下げても売りたかったようです。

  売却されるビジネスはSystem X,Blade Center,Flexシステムのブレードサーバとスイッチ,x86版のFlex Integratedシステム,NeXtScale,iDataPlexとなっています。そして,IBMはサーバとしてはzメインフレームとPowerシステムに集中し,また,最近$1B超の投資を決めたWatsonやクラウドサービスなどを伸ばすことで,高い利益率を維持しようとしています。かなり,勇気ある決断と言えます。

  Lenovoは中国でのx86サーバの販売を伸ばせ,一方,IBMは不採算部門を切り,利益率の高い分野に集中できるので,多くのアナリストは,両社にとって良いWin-Winの取引であると見ています。

  この買収に伴って,IBMの従業員7500人はLenovoに移籍することになります。

  売却のDefinitive Agreementはサインされましたが,もちろん,正式な売却には,当局の承認が必要になります。

@1210100

 

  

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