最近の話題 2014 年3月8日

1.ロスのNakamoto氏はBitcoinの発明者か?

  2014年3月6日のNewsweekが,Bitcoinの発明者を見つけたと報じています。BitCoinの基本的な考え方はSatoshi Nakamotoという著者の論文に書かれているのですが,Sathoshi Nakamotoというのが誰なのか,実在の人物なのか架空の名前なのかは分かっていませんでした。

  3月6日のNewsweekの記事では,記者がロスアンジェルス近郊のTemple Cityに住むNakamoto氏を見つけ,インタビューを行ったとのことです。記者の質問に対して,Nakamoto氏は私は,「もうそれに係っていない。それについて話すことはない」,「それは他の人に引き継がれ,現在はその人たちが運営しており,もう,私は何の関係も無い」と答えたとのことです。

  しかし,2014年3月7日のAssociated Pressによると,Dorian Prentice Satoshi Nakamoto氏(64)は,AP記者の2時間のインタビューで,「2週間前に,息子がNewsweekのインタビューを受けたと話したが,それまでBitcoinの名前も聞いたことがない」,「私はBitcoinには全く関係が無い」と答えたと報じています。

  Nakamoto氏は別府の生まれで,1959年に米国に移住し,英語と日本語を話すが,英語は完全ではなく,Newsweekの引用は正しくないと述べたと書かれています。しかし,10歳から米国に住み教育を受けて,Newsweekの記者とこのような誤解が生じるというのは,ちょっと信じられません。また,Newsweekの記者が会ったのはNakamoto氏本人か,息子なのかは容易に検証できるはずです。

  また,Bitcoinの創始者は,$400M相当のBitcoinを所有していると見られていますが,Nakamoto氏の暮らしは質素なものだそうです。一方,Nakamoto氏の兄弟が「彼は全て否定する。彼はBitcoinとの関係を認めることはない」と述べたという報道もあります。

  Nakamoto氏は数学に堪能とのことで,Bitcoinの論文の著者としての資格はありそうですが,Newsweekの記事に跳びつくのは時期尚早のようです。

  なお,Satoshi Nakamoto氏の論文はBitcoinの多重使用(実質的な偽札作り)を防ぐメカニズムを書いていますが,Mt.GoxやFlexcoinのサイトがハックされてBitcoinが盗まれたのは,単純にサイトのセキュリティーが弱くて侵入されたためで,これはSatoshi Nakamoto氏が論文で提案したメカニズムの問題ではありません。

2.AppleのA8 SoCはTSMC製

  2014年3月6日のThe RegisterがApleの次期スマホiPhone 6に使われるA8 SoCはTSMC製と報じています。これまでのAppleのプロセサはSamsungが作っていたのですが,スマホで最大のライバルとなったSamsungグループの会社に鍵となるSoCを発注するというのは引っかかるところで,TSMCへのFabの切り替えは以前からささやかれていました。

  A8は64bit CPUコアを4個と,GPUコアを4クラスタ搭載するとのことです。iPhone 5sに使われているA7はデュアルコアであったので,CPUコア数が2倍になっています。クロックなどは不明です。A7のGPUはPowerVR  6430で4クラスタでした。今回も同じGPUが使われるのか,Imagination社の未発表の新GPU,あるいは別のGPUかなども不明です。

3.NVIDIAが統一メモリをサポートするCUDA 6のリリース候補を公開

  2014年3月7日のThe Inquirerが,NVIDIAのCUDA 6のRelease Candidateの公開を報じています。

  GPUを使う場合の最大の問題点は,CPUメモリとGPUメモリが分かれているので,GPUに仕事をさせるためには,CPUメモリからGPUメモリにデータをコピーし,処理が終わったら,結果をGPUメモリからCPUメモリにコピーするというプログラミングが必要な点です。

  CUDA 6では,これをほぼ自動的に行ってくれるUnified Memoryがサポートされます。もちろん,実際にはコピーが必要なのですが,cudaMallocで確保したメモリ領域のデータをGPU kernalの呼び出し時には自動的にGPUメモリにコピーし,GPUの処理が終わったことを確認してCPUが結果を使おうとすると,ページ単位でオンデマンドでGPUメモリからCPUメモリへのコピーが行われます。ということで,殆ど,GPUメモリとの間でのコピーを意識しないでプログラムが書けるようになります。

  このCUDA 6の統一メモリについては,2013年12月9日のマイナビの記事で詳しく解説しています。

  また,CUDA 6には,BLASやFFTWの計算がCPUからGPUにオフロードされて高速になるdrop-in-libraryや8GPUまでスケールするBLASやFFTWライブラリなどが含まれています。

4.富士通の触覚ディスプレイの使用感

  2014年3月7日のThe InquirerがMWCで展示された富士通の触覚ディスプレイの使用感を報じています。

  タッチパネルに超音波を出す装置がついていて,指が触ったところに表示されている物体を触ったようなフィードバックを指に与えるような振動を作り出しています。

  MWCのデモでは,金庫のダイヤルロックを回す,楽器の弦を弾く,ワニの背中を触る,チェス盤の上の砂を払うというシナリオが展示されていたとのことです。

  どのデモでも,指が感じる触覚は,それらしく,非常に印象的であったと書かれています。楽器のデモでは,弦を強く弾いたときと,柔らかくなぜたときで,指に受ける感触が違い,実際に弦をはじいた感触とのことです。また,チェス盤の上の砂を払うデモでは,砂を触っているところと砂をどけた盤の表面では触覚が異なり,多層の触覚も再現しているとのことです。

  問題点としては,金庫のダイヤルを,実際にやるように2本の指で回そうとすると,人差し指だけにしか反応せず,マルチタッチに対応していない点と,タブレッドが水平になっていないと動作しない点を指摘しています。もちろん,今回はデモで,製品化される場合には,これらの点が改善されることが期待されます。

  しかし,画面はカメラで撮ればデータが作れますが,これに触覚データをつけるのは結構大変そうです。

 

  

 

  

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