最近の話題 2014 年4月12日

1.JAXAが富士通のFX10後 継スパコンを導入

   2014年4月7日に富士通は,JAXAからPRIMEHPC-FX10の後継機を中心とする,合計で3.4PFlopsの演算性能をもつス パコンを受注したと発表しました。これは現行のシステムの24倍の性能とのことです。

  このスパコンは,FX10後継機に加えて,PRIMERGY RX350 S8 160台と大規模メモリ空間を持つサーバが含まれています。このスパコンは,2014年10月に一部のシステムが稼働し,2016年4月よ り全面稼働とのことであり,FX10後継機は2016年4月,それ以外は2014年10月ということと思われます。

  FX10後継機ですが,CPUはSPARC64シリーズの最新(というか現在開発中の)プロセサで,1TFlops以上の演算性能を持ち,Tofuイン タコネクトを統合,そして,HMCを使うと書かれており,昨年11月のSC13でボードの展示とベンダーフォーラムで発表を行ったものと考えられます。この富 士通の次期スパコンに 関しては,2013年12月 17日2013 年12月19日と のマイナビに詳しい記事が掲載されています。

  筐体には216ノード搭載なので,1筐体で216TFlopsとすると15筐体で3.32PFlopsとなり,かなりコンパクトなシステムになります。

2.3M,Intel,SGIがNOVEC浸漬液冷サーバをデモ

   2014年4月9日のSemiAccurateが,3M,Intel,SGIの浸漬液冷サーバのデモを報じています。 XeonE5-2690 の2ソケットに8枚のDIMMを付け,IB NICを付けたサーバ36台を収容するラックを,3MのNOVECというフッ素系 の液体に浸漬しています。


  このSGIのサーバは水冷のコールドプレートを使っているのですが,これを取り外してCPUには銅製の ヒートスプレッダを取り付けています。表面に短い円柱上の突起を多数設けてNOVECに触れる面積を増やしています。また,表面は削り出しではなく,粉末を焼 結したものとのことで,隙間にNOVECが入り接触面積をさらに増やすようになっているのかも知れません。



  サーバを動作させるとCPUやDIMMの温度は,NOVECの沸点の49℃より高くなるので,表面では NOVECが気化して熱を奪います。気化したNOVECはタンクの上につけられた水冷のコイルで冷やされて液体に戻り,タンクにポタポタと落ちるというループ となります。コイルの水冷ですが49℃以下にすればよいので,冷凍機は必要なく,クーリングタワーだけで済みます。しかし,浸漬で気化を使う液冷では,ヒート スプレッダの表面に気化でできた泡がついてしまうと,冷却能力が急に下がるという問題があります。どのようにして,これを抑えているのでしょうか?NOVEC 自体がこのようなことが起こりにくいように設計されているのでしょうか。

   デ モに使われたシステムのラックの半分は空で12kWを消費していたとのことですが,このタンクは80kWまで冷やせるとのことです。


  記事には書かれ ていませんが,沸点が 49℃ということから,使われたのはNOVEC649と考えられます。常温での比重は1.6位の重い液体で,蒸気となっても空気より重く,蒸発してなく なってしまうことはありません。ということでエアコンのフロロカーボンのようなグローバルウォーミングの影響はほとんどないという優れものです。また,東 工大のTSUBAME-KFCで使われているエクソンモービルのSpectra-Syn合成オイルのようにべた付かず,引火もしません。

  NOVEC649のお値段はわからないのですが,或る問屋ではNOVEC7000シリーズは1kgで 15000円から2万円くらいで売られています。このタンクには770kgのNOVECが入っているとのことで,NOVEC649が15000円/kgとする と,1155万円となります。2ソケットサーバ1台が200万円とすると,36台で7200万円ですから,NOVECのコストは馬鹿になりません。



3.IBMのSystem 360メインフレームが50周年を 迎える

  2014 年4月7日のThe Inquirerが,4月7日でIBMのSystem 360に始まるメインフレームが50周年を迎えると報じています。

  
   System 360はGene M. Amdahl氏をチーフアーキテクトとして,IBMが社運を賭けて開発したコンピュータで,大型から小型までシリーズのマシンで同じバイナリプログラムが動くシリーズ化を 実現した画期的なコンピュータでした。今ではバイナリ互換は当たり前になっていますが,当時は,マシンの規模に合わせて最適な命令体系を作り,マシンごと に命 令が違うのが当たり前でした。
  それがバイナリ互換のシリーズを実現したことにより,最初は小型機を入れて,会社が成長して仕事が増えた ら中型機や大型機に交換しても,以前のプログラムがそのまま使えるようになり,IBMの優位を確立することになりました。

  IBMのメインフレームは銀行や企業の基幹システムとして広く採用され,現在でも銀行やクレジットカード の決済などではメインフレームが多く使われています。性能の割にはお値段は割高ですが,東京と大阪のシステムで二重化して,一方のセンターがダウンしても, 残ったセンターで運用を継続できるというような機能を持つシステムは他にはありませんし,ハード,ソフト両面で高い信頼度を誇ります。銀行などでは,システム が割高でも,ダウンしないことの方が重要なので,メインフレームが使われます。また,動いているソフト資産が膨大なので,容易にIntel Xeonには乗り換えられないという事情もあります。




 それやこれやで,50周年を迎えたメインフレームは,まだ,現役です。

4.富士通がハイエンドUnixサーバSPARC M10の性能を30%アップ

  2014年4月8日に富士通は,SPARC M10サーバのCPUを3.7GHzクロックで16コアを搭載するSPARC64 X+に交換し,従来に比べて約30%性能を向上した製品を発売する と発表しました。これまでは3GHzクロックのSPARC64 X CPUを使っていましたが,これを3.7GHzクロックのX+に変え,SPEint_rate2006性能が約30%向上しています。



   最上位機のSPARC M10-4SはSAP SDベンチマークやSPECjbb2013など15種のベンチマークで世界一の記録を達成したとのこ とです。
5.富士通が基幹IAサーバPRIMEQUEST 2000シリーズを発売

   2014年4月10日に 富士通は,Xeon E7 v2ファミリのCPUを搭載する基幹IAサーバPRIMEQUEST 2000シリーズの5モデルを発売すると発表しました。


  基幹IAサーバ はIntel CPUを使 うことでコストパフォーマンスを改善し,メインフレームやUnixサーバの高信頼度設計を受け継ぎ,企業の基幹システムに使用できる信頼度を実現したとい う製品で,東証のArrowsにも使われています。

   最大規模のPRIMEQUEST 2800Eは,8ソケットで最大120コア,12TBのメインメモリを搭載でき,8ソケットサーバとしては最高の SPECint_rate2006とSPECfp_rate2006を達成したとのことです。

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