最近の話題 2014 年5月17日

1.TSMCのプロセスロードマップ

  2014年4月22日のElectronics360が,2014年は20nmのCMOSの量産で,高い成長率と利益というTSMCの発表を報じています。2014年の後半には,28nmHKMGプロセスへの移行でシェアを拡大し,同時に20nmの20SoCプロセスの量産を立ち上げる計画です。

  20SoCの先は16FFと16FF+を開発しており,16FF+は16FFと比べて,同じ電力で15%高速。同じ速度では30%電力が小さいとのことです。また,16FF+は20Socと比べると,40%高速としています。

  16nmFinFETは,4月中に,顧客からの最初のテープアウトを受け,今年中に15テープアウトを受ける予定で,量産開始の初年度である2015年には45品種のテープアウトとのことです。16FinFETプロセスの歩留まりの向上は急速で,既に20SoCに追いついているとのことです。

  その先の10nmのFinFETの開発も予定通りで,2015年の4Qにリスク量産の予定です。この10FFプロセスは16FF+と比べて同一電力で25%高速,同一スピードでは電力が45%減とのことです。また,10FFは16FF+と比アックすると2.2倍の密度とのことです。

  16FFの配線は20SoCをほぼ流用すると言われていますので,密度改善は殆ど無く,10FFになって20SoCの2.2倍ですが,速度は,20SoCを基準とすると,16FFが15%,16FF+が40%高速となり,10FFは1.4×1.25=1.75という計算になります。

2.28nm FDSOIでSamsungがST Microと連合

  2014年5月14日のEE Timesが,Samsungが,STMicroから28nm FDSOIプロセスのライセンスを受け,ファブとして協調すると報じています。Fully Depleted SOIは,バルクCMOSと比較すると,動作速度が30%速く,リーク電流も小さいという利点がありますが,ST Microだけでは製造キャパシティーの点で,乗りにくいところがあります。今回,Samsungが加わることにより,ST Microにとって,製造能力の心配が改善され顧客を獲得しやすくなるというメリットがあります。

  業界の中心的な方向はFinFETですが,FDSOIは設計的にはバルクCMOSに近いので,FinFETに移行するよりもずっと簡単で開発費の負担も小さいと主張しています。また,製造プロセスも新規なものが少なく,LSIのコストも安いとのことです。

  ということで,両社は,安価なスマホやウエアラブル用のLSIを開発する中国などのメーカーを主要なターゲットと考えているようです。

3.小米(Xiaomi)がTegara K1搭載のタブレッドを発売

  中国の小米科技のMePadの発売を,2014年5月15日のSemiAccurateが報じています。このMePadはAppleのiPadMiniにそっくりで7.9インチの2048×1536のIPSディスプレイを搭載し,NVIDIAのTegra K1を使う世界初の製品です。

  Tegara K1は192CUDAコアのKepler GPUと4コアのCortex A15コア搭載するSoCで,28HPMプロセスで製造され,低消費電力をうたっていますが,SemiAccuateの以前の記事では,デモされた時のヒートシンクが大きく,フルに動作させると相当大きな消費電力と書かれています。なお,CPUクロックは最大2.2GHzとなっています。

  6700mAhというバッテリを搭載し,音楽再生では86時間,ビデオ再生では11時間使えるとのことです。重量は360gです。

  NVIDIAのTegra 3は初代のNexus 7に採用されたのですが,その次のTegra 4は供給問題などからビジネス的には失敗と見られています。今回のTegra K1が192CUDAコアの性能とこの使用時間を本当に両立できるのかが注目されます。

  MePadは,16GBモデルが1499元($240),64GBモデルが1699元($272)で,中国で6月発売となっています。

4.D-Waveの量子コンピュータの最新状況

  2014年5月8日5月9日5月12日のマイナビが,D-Waveの量子コンピュータの最新状況という拙著の記事を載せています。

  詳細はこられの記事を読んでいただけば良いのですが,現在の製品のD-Wave Twoは512Cubitのマシンで,今年中には1024Cubitのマシンを出す予定で,このチップは現在,社内でテスト中とのことです。

  他のアプローチでは10Cubit位でもコヒーレンスを維持するのが大変という状況で,512Cubitなどは夢のまた夢という状況なので,D-Waveのマシンが本当に量子効果で動いているのか,動いているとしても,本当に速いのかを疑う声もあり,科学的評価は固まっていないのですが,NASAと合同でD-Wave Twoを買ったGoogleでは,Google Glassを操作する意図的な目ばたき検出のアルゴリズムの最適化にこのマシンを使い,消費電力を1/3に減らし,同時に検出精度を2倍に改善したとか,地域の水道配管網の設計の最適化で,従来の方法を上回る最適化ができたなどの実例が報告され,実用化が始まりつつあるという印象です。



  


  

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