最近の話題 2014年6月21日

1.IntelがCPUとFPGAを同一パッケージに入れるXeon Dを発表

  2014年6月20日のThe Inquirerが,Gigaom Structure 2014コンファレンスにおいて,IntelのSVPでデータセンターグループを担当するDiane Bryant氏が,Exon E5 CPUとFPGAをペアでパッケージに入れたXeon Dと呼ぶ製品を出すと発表したと報じています。

  IntelはGoogleなどの大手のユーザには,要望に応じたカスタム化したCPUを作っており,2013年には15品種を作り,今年はそれが倍増するとのことで,あまり増えてはやりきれないという事情もあるようです。

  FPGAを使えば,イメージ処理や遺伝子マッチングなどの専用の計算処理がCPUを使うより効率よく実行できますし,金融関係でもオプションの評価などの計算にFPGAが使われています。現在は,FPGAは外付けでボード上での接続ですが,同一パッケージに入れれば接続が近くなり,効果は倍増と述べています。

  ただし,この製品がいつ出るかについては,1年以内というだけで,値段がどうなるのか,FPGAの規模はなどの情報は全くありません。

  2014年6月20日のSemiAccurateは,3日前のISCA 2014でのMicrosoftのFPGA搭載のサーバに関する論文発表を見て,急ごしらえで作った裏付けのない発表だろうと書いています。ISCAでの発表はFPGAの使用で,Bingのページランキング処理スループットがCPUだけの処理に比べて倍増し,レーテンシが29%短縮し,コストは30%以下で電力は25W以下というスライドがSemiAccurateに載っています。この結果はFPGAを搭載した1632台のサーバのクラスタの結果と書かれており,Microsoftは,かなり本気でやっているようです。

2.AMDが2020年までに25倍の電力効率改善を宣言

  2014年6月20日のThe Registerが,AMDのフェローのSam Naffiziger氏が,AMDは2020年までにAPUの電力効率を25倍に改善すると述べたと報じています。

  電源電圧が下がらなくなって,デナードスケーリングによるエネルギー効率の改善は大きくスローダウンしてしまったのですが,それでもAMDは2008年のPumaから2014年のKaveriの6年間で約10倍の電力効率の改善を実現してきたとのことです。

  それをさらに加速して,2020年までの6年間で,25倍のエネルギー効率の改善を目指す25X20と呼ぶプロジェクトを行うとのことです。

  なお,ここで言う消費電力はEnergy Starで決められた標準的な使用状態の加重平均で,TDPではありません。

3.SANDISKがFusion IOの買収を発表

  2014年6月16日にSanDiskはFusion IOを買収することを発表しました。SanDiskは日本では,東芝のNAND Flash製造のパートナーという程度にしか知られていませんが,共同出資でNAND Flashの工場を作り,SDカード,USBメモリ,SSDなどを製造して販売している垂直統合型のメーカーですが,Flash専業で,昨年度の売り上げは約6200億円という大会社です。一方のFusion IOの売り上げは約440億円で10倍以上の差があります。

  一方,Fusion IOは,PCI Express接続のFlashストレージボードと,それを使ってシステム性能を最適化するソフトソリューションに強いメーカーで,SanDiskの製品ラインの高性能側をカバーする製品群を持っています。この買収で,SanDiskはエンタプライズ向けのSSD市場でIntelとSamsungと並ぶTop 3の一角に食い込むと見られます。

  ということで,SanDiskが買収を持ち掛け,両者の取締役会で承認されて,合意文書を取り交わしたという発表です。実際の買収には当局の承認とFusion IO株の公開買い付けが成功する必要があります。公開買い付けは1株$11.25で,総額では約1100億円とのことです。この費用はSanDiskの内部留保で賄われるとのことです。

4.AmazonがFire Phoneを発表

  2014年6月20日のThe InquirerがAmazonのFire Phoneの発売を報じています。現状では,米国で7月25日に発売というだけで,その他の地域での発売計画は発表されていません。お値段は32GBメモリのモデルが$649,64GBのモデルが$749で,ATTの2年契約にすると,それぞれ$199と$299になります。

  ハードウェアは,スクリーンは4.7インチのHD 720pで,CPUはQaulcommのSnapdragon800で,メモリは2GBという構成です。そして,前面に4つのカメラと背面に13MPの自動フォーカス,手ぶれ防止カメラが付いています。そして4G LTEと802.11 a/b/g/n/acをサポートし,2400mAhのバッテリを搭載しています。

  他社にない売りは,Dynamic Perspectiveと呼ぶ3Dの表示で,これは前面の4つのカメラでユーザの虹彩と頭の向きを検出して画像の見え方を調整することで実現されているそうです。カメラ画像の認識と3Dのパースペクティブ変換が動き続けるわけで,電池は食いそうです。

  もう一つは,Fireflyと呼ぶ,カメラで撮った画像やマイクから拾った音楽などから,Amazonのセンターでそれがどういう商品であるかを判別して,それがAmazonで販売されていれば,ワンクリックで買えるという機能です。Firefly機能は側面の専用ボタンで起動できるとのことです。便利ですが,恐ろしくて子供には持たせられませんね。

5.Bletchley Parkの修復が終わり,一般公開

  2014年6月19日のThe Inquirerが,第二次大戦中にドイツの暗号解読を行っていたBletchley Parkの修復が終わり,6月18日に開会式が行われ,ケンブリッジ侯爵夫人が来臨されたとのことです。

  情報科学の巨人のAlan TuringがTuring Bombeを作り,ドイツ軍のエニグマ暗号を解読していました。Turing Bombeは電気機械式のマシンでしたが,より高度なドイツ軍の司令官用の暗号を解読するColossusは真空管を主体とする大型の専用電子計算機の走りで,コンピュータの歴史を語る上で忘れられません。

  ただし,これらのマシンはシンボルの出現確率の偏りなどから,ありそうな文章の候補を出してくるのですが,人や場所は全てコードネームで,一般人が読んでもまったく意味をなさない文章で,それを多数の暗号解読の専門家が読み解いていました。

  また,傍受されたドイツ軍の暗号通信は紙テープにパンチされて,これらのマシンに入力されるのですが,これらの作業や通常のマシンの操作には,(男性は戦場に行っているので)多くの若い女性が働いており,ケンブリッジ侯爵夫人の祖母も,当時,ここで働いていたとのことです。

  Bletchley Parkの暗号解読のお蔭で,戦争終結が2年間早まったと評価されています。



inserted by FC2 system