最近の話題 2014年9月27日

1.Intelが中国の半導体企業に$1.5Bを投資

  2014年9月26日のEE Timesが,Intelが中国のTsinghua UniGroup傘下のSpreadtrumとRDA Microelectronicsに$1.5Bを投資する計画であると報じています。これは20%の資本参加になるとのことです。

 Spreadtrumはスマホの無線チップでは大手の一つですが,スマホのSoCはQualcommと台湾のMediatechなどに席巻されており,中国としては自国の大手メーカーが欲しいところです。一方,スマホなどではARMが業界標準で,Intelは中々浸透できていません。

 この出資が決まったからと言って,Spreadtrumがx86ベースのスマホSoCを作るとは限りませんが,Intelとしては中国に足がかりを作れば,Fabの活用も考えられます。中国側としても巨額の投資は歓迎ですし,x86コアも使い方によってはARMコアのSoCに対する差別化要因になり得るということで,利害が一致したと思われます。

2.ARMがCortex-M7コアを発表

  2014年9月23日のSemiAccurteが,ARMのCortex-M7コアの発表を報じています。一言でいうと,28nmプロセスで製造した場合,従来のM4コアの2倍の演算性能と2倍のDSP性能を持つ組み込み用マイクロコントローラということですが,SemiAccurateの記事によると,その中身は大きく改良されています。

  まず,M4は3段という簡単なパイプラインであったのですが,M7は6段のパイプラインとなり,オプションのFPパイプラインを実装した場合は,INTとFPの命令を並列に発行できるスーパスカラ実行を行います。また,M7はキャッシュを持つことが可能で,L1I$,L1D$ともに4KBから64KBの範囲で容量を選択できます。I$は2way,D$は4way Set Associativeです。

  また,命令とデータ用のTCM(Tightly Coupled Memory)を接続できるようになっています。AXIバスが出ているので,ここにDRAMコントローラを付けてメモリを接続できるのですが,ローカルにTCMのメモリを付けると,DRAMより高速のローカルメモリとして動作し,リアルタイム用はどではありませんが,応答時間を一定にしたい処理などには便利です。また,TCMにはECCが付けられ,高信頼の用途にも使えます。

  高信頼という点では,AXIバス経由のメモリにもECCが付けられますし,デュアルコアの構成ではロックステップの運転でコアのエラーも検出できる機能がサポートされています。

  単に2倍の性能の組み込み用コアというだけでなく,新たな用途に向けて,多くの新しい機能が追加されたコアになっています。

3.CaviumがXpliantの次世代Ethernet Switchチップを発表

 2014年9月16日のEE Timesが,CaviumがXpliant社のEthernet Swtichに関する発表を報じています。CaviumはXpliant社の創立に際して$15Mを出資していたのですが,今年の7月30日に,残りの株を$75Mで買うという完全な買収を発表しています。まだ,Xpliant社の買収は終わっていないようですが,まあ,子会社のようなものです。

 Xpliantは,Software Defined Network向けのソフト制御のできるXpliant Packet Architectureを開発し,それに基づくEthenet Switchを開発しています。最大規模のチップは25Gbpsのリンクを128本サポートし,チップのバンド幅は3.2Tbit/sに達します。製品としては100Gbit/sのEthernetの32ポートスイッチが作れます。そして,ソフト制御なのでOpenflowなどVirtual Networkの規格に,チップを作り直すことなく柔軟に対応できるというのが売りです。

 ただし,具体的にXPAがどのようなアーキテクチャであるのかは発表されていません。

 28nmのHPプロセスでの製造で,これからテープアウトで,シリコンができるのは年末頃ですから,本当にCaviumの製品になるのは,まだ,時間が掛かりますが,一部のOEMにはXpliantのSDKが提供されているとのことです。


4.Broadcomが次世代Ethernet SwithチップTomahawkを発表

 このXpliantのチップは,現在のBroadcomのTrident II XGSチップの2.5倍のバンド幅となっていますが,当然,業界首位のBroadcomも負けては居ません。2014年9月24日のEE Timesが,次世代のStrata XGS Tomahawkをサンプル出荷中であるというBroadcomの発表を報じています。

 Tomahawkは25Gbpsのポートを128ポートサポートするスイッチチップで,7B Trを集積し,480Mbitのメモリを搭載してori,28nmプロセスで製造されているとのことです。当然,SDN対応で,Openflow1.3をサポートするのですが,Openflow2.0にも対応を謳っているXpliantの製品と比べるとプログラムできる範囲は狭いと見られています。

 来年には,ソフトウェアで接続を変えられる100Gb Ethernetが32ポートのスイッチが出回るとなると,GoogleやAmazonなどのデータセンターにとってはかなり便利になります。

5.なぜ,NVIDIAのGM204は28nmプロセスなのか?

 2014年9月22日のPC Watchに後藤さんが,AppleのA8は20nmプロセスなのに,なぜ,NVIDIAのGM204は28nmプロセスなのかという記事を書いておられます。

 詳細は,後藤さんの記事を見て戴くとして,結論を簡単に言うと,GPUは配線が膨大で,M1〜M6(場合によってはM8まで)細い配線を必要としている。20nmプロセスの場合は,これらの配線層は2重露光を使わないと製造できない。一方,CPUの場合は細い配線はM1〜M3の3層であり,2重露光を必要とする層の数が少ない。

 2重露光は手間が掛かるので,同じ20nmプロセスと言ってもGPU用のプロセスはコストアップが大きい。このため,GM204では20nmプロセスではなく,28nmプロセスの使用を継続したという説明が書かれています。

 一方,28nmプロセスを使うことで,GM204は398mm2と,前世代のGK104の294mm2より,30%あまり大きなチップになってしまっているのですが,28nmプロセスは習熟度が高く歩留まりも上がっているので,GK104の時よりコストは下がってきているので,28nmでも大丈夫とのことです。

 この説明は正しいのですが,そんなことはMaxwell GPUのロードマップを計画した時から分かっている筈で,当初は20nmプロセスで計画されていたGM204が,28nmプロセスに変わったことの説明にはなっていません。やはり,9月13日の話題で紹介した大原さんの記事のような裏の事情がありそうです。



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