最近の話題 2014年10月4日

1.次世代スパコンも富士通が担当

  2014年10月1日の日経が,京の次世代のエクサ級スパコンも,富士通が基本設計を理研から受託と報じています。15年度までに基本設計を終え,2020年の完成を目指します。総費用は約1300億円を予定しています。また,同日,理研の計算科学研究機構は,理研と基本設計を行う実施者が富士通に決まったというプレスリリースを発表しています。

  京の時は,45nm半導体プロセスラインを富士通の三重工場に作ったのですが,今回は,費用を削減するため,CPUの製造は台湾の企業などに委託する方針とのことです。

  当初は汎用型に加え,演算性能重視のアクセラレータ型とメモリバンド幅重視のベクトル型も検討対象に入っていたのですが,これらは検討の過程で落ちて,汎用型だけになってしまったので,富士通が担当することになったのは,当然の帰結と思われます。また,富士通は(あるいは日本全体として)先端半導体製造からは撤退しており,自社のCPUもSPARC IXfx以降はTSMCで製造しているので,次世代エクサ級スパコンのCPUも,まあ,TSMCで決まりでしょうね。

2.Crayが新スパコンXC40とCS400を発表

  2014年9月30日に,CrayはXC40スパコンとCS400クラスタスパコンを発表しました。

  XC40とCS400は,CPUをXeon E5-2600 v3に変更し,性能を2倍に引き上げたと書かれています。

  また,XC40は,高性能のFlash SSDをコンピュートノードに直結し,アプリのIO性能を向上させるDataWarpと呼ぶテクノロジを採用しています。Flash SSDを搭載したIOブレードをAriesインタコネクトで接続していて,CPUノード間と同じ速度でSSdとの通信ができ,バースト的に大量のデータのR/Wを必要とする用途に威力を発揮するとのことです。

  Xeon CPU以外にXeon PhiやNVIDIA Teslaアクセラレータを搭載できるのはXC30と同じです。

  発表には,スイスのCSCSがXC40を契約したと書かれていますが,費用は$9M以上と比較的安いので,現用のXC30のPiz Diantをアップグレードするのではないかと思われます。

3.HPがMoonshot用の初のARMサーバカートリッジ2種を発売

  2014年9月30日のEE Timesが,HPがMoonshotサーバに,Applied Microの64bit ARMのX-Geneプロセサを搭載したモデルと,TIの32bit ARMとDSPを集積するチップを搭載したモデルを発売と報じています。

  HPのMoonshotサーバは,今は無きCalxedaのチップを搭載した試作機をデモしたりしていましたが,これまで製品になったのはIntelとAMDのx86チップを使ったものだけでした。それが,今回,64bit ARMv8アーキテクチャのX−Gene 1を使うm400と,TIのKeystone 2と呼ぶCortex-A15を4コアとTIのC66X DSPを8個搭載するチップを使うm800カートリッジを製品として発表しました。

  X-Geneは独自の64bitコアを8個搭載し,クロックは2.4GHzとなっています。カートリッジには最大64GBのDRAMと480GBのFlashが搭載可能となっています。m800はHeavy Duty Multimedia用という位置づけです。また,強力なDSPを使って専用用途のサーバに仕立てるという使い方を考えているようです。m400,m800ともに,HPとしては汎用サーバではなく,特定の用途にカストマイズした使い方をするサーバプラットフォームと位置付けているようです。

  初期のユーザとしてPayPalとSandia国立研究所,ユタ大学が挙げられています。PayPalはm800を新しい用途に使うようですが,報道では具体的なイメージはよくわかりません。

4.OracleのSPARC M7の真の強味はアクセラレータ

  2014年9月29日のThe Registerが,Oracle OpenWorldでのLarry Ellison CTOの基調講演について報じています。その中で,Ellison氏は,M7はこれまでで最も重要なシリコンで,その理由はデータベース用のアクセラレータを搭載していることと述べたとのことです。

  M7はデータベースのデータの圧縮と伸長を行うアクセラレータを搭載しています。データをメモリにロードする時に圧縮を行い,データを読んで処理する時には伸長を行うのですが,伸長の方がより高い頻度で使われます。M7のアクセラレータは,この伸長を10倍の速度で行うことができ,120GB/sという高速のクエリ処理ができるとのことです。

  また,メモリプロテクションに関しても重要な改善があり,他の領域のデータを壊してしまうというようなバグを非常に短期間で見つけられるとのことですが,具体的にどのような機構なのかは明らかにされていません。

  なお,M7ベースのマシンの出荷は2015年の予定です。

5.TSMCが16FFプロセスを使うネットワークプロセサの出荷を発表

  2014年9月25日にTSMCは,16nm FinFETプロセスを使うネットワークプロセサを製造し,完動品をHiSilicon Technologies社に提供したと発表しました。

  このプロセサはARM A-57コアを32コア集積する16FFプロセスのチップと,28nmプロセスを使うIOチップをCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)で3D実装するものとのことです。このチップは最大2.6GHzクロックで動作し,前世代の製品の3倍の性能とのことです。

  16FFプロセスはTSMCの28HPMプロセスと比較して,ゲート密度は2倍で,同一電力レベルで40%以上高速,あるいは同じ速度なら電力を60%以上低減できるとのことです。16FFプロセスは昨年11月に信頼性評価を終わり,非常に良い歩留まりでリスク生産を開始していると書かれています。

6.Samsungも14nm FinFETのExynos SoCをデモ

  2014年10月2日のEE Timesが,ARM TechConにおけるSamsungの14FFプロセスの発表を報じています。次世代のExynos SoCでHigh Defのビデオのデコードをデモしたとのことですが,それ以上は,何も明らかにされなかったとのことです。

  但し,14FFプロセスについてのGlobalFoundriesとの協業は続いており,2105年には量産に入るとのことです。

7.LenovoがIBMのx86サーバ事業の買収を完了

  Lenovoは2014年9月29日のプレスリリースで,IBMのx86サーバビジネスの買収に関わる諸条件が満たされ,2014年10月1日を効力発生日として,本取引のクロージング手続きを開始すると発表しました。

  これにより,System x, Bladecenter, Flexsytem Blade ServerとSwitch, x86 Flex integrated NextscaleとiDataplex ServerのビジネスがLenovoに移ることになります。この買収により,x86サーバ市場で,LenovoはHP,Dellに次ぐ3位のシェアのメーカーとなります。

  この$2.3Bの買収は,米国,中国,どちらの政府にとっても懸念があり,なかなか許可が下りなかったのですが,遂に,承認されたようです。


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