最近の話題 2014年10月11日

1.赤崎,天野,中村氏がノーベル物理学賞を受賞

   今年のノーベル物理学賞は,名城大の赤崎 勇終身教授,名古屋大の天野 浩教授,UCSBの中村 修二教授の3氏が,青色発光ダイオードの開発で受賞と決まりました。

  新聞やテレビに報道があふれているので,特に説明することはないのですが,後で検索するときに出てくるように,書いておきます。

  窒化ガリウムの結晶を作るのが難しく,世界の研究者がみんな諦めるのを横目に,赤崎先生と弟子の天野氏は研究を続け,低温で形成した窒化アルミニウムのバッファ層を付けて,その上に窒化ガリウムを成長させるという方法を考案し,結晶が作れるようになったという功績が評価されました。

  中村先生は日亜化学というメーカーで独自に研究を進め,ガリウムの原料ガスを横から,窒素ガスを表面に直角に吹き付けるという方法で,質の良い結晶を大量生産できる方法を考案し,その後の青色レーザの開発にも重要な役割を果たしたという功績が認められました。

  青色LEDが,照明やディスプレイに広く使われ,省エネにも大きく貢献しているという点も評価されたようです。

2.HPがコンシューマとエンタプライズに会社を分割

  2014年10月6日のEE Timesが,HPの会社分割について報じています。PCとプリンタを中心とするHP Inc.とサーバやネットワークなどの企業向けのシステムやサービスを行うHP Enterpriseに分割するというもので,HP Inc.の売り上げは$57.2B,HP Enterpriseの売り上げは$58.4Bで,ほぼ2等分です。

  HP EnterpriseのCEOは,現在のHPのCEOのMeg Whitman氏,HP Inc.のCEOを,現在,PCとプリンタを担当しているDion Wesiler氏がCEOになるとのことです。

  それぞれ性質の違う,コンシューママーケットとエンタプライズマーケットにより迅速に対応できるマネジメントにするというのが分割の理由です。

  HPは,過去に計測器部門をAgilentとして分割しています。また,IBMは,以前にPC,そして最近,x86サーバもLenovoに売却の話がまとまっており,この業界では,ビジネスのポートフォリオの見直しが活発になっています。

3.Lisa Su氏がAMDのCEOに

  2014年10月8日のEE Timesが,AMDが次期CEOとして,Lisa Su氏を選出したと報じています。マイクロプロセサのライバルであるIntelもRenee Jamaes氏がCOOを務めており,女性のトップマネジメントへの進出が進んでいますが,大手半導体企業のトップのCEOへの女性の就任は,初めてのことです。

  Su氏はMITで学士,修士,博士を取得し,TI,IBMなどで働き,2011年11月にAMDに移る前にはFreeScaleでCTOやネットワークとマルチメディア担当のSVPなどを務めていたとのことです。

4.インドが$730Mをスーパーコンピューティングに投資する計画を発表

  2014年10月6日のHPC Wireが,総額$730Mをスーパーコンピューティングの充実に投資するというインドの計画を報じています。

  全体では7年間の計画で,最初の3年で,国内に70か所以上のHPCセンターを作り,その内の少なくとも3か所には25〜30PFlopsのマシンを設置するとのことです。

  そして,後半の4年間は,スパコンアプリの開発に重点的に費用配分を行うという計画となっています。

5.MicronがAutomataのSDKを発表

  昨年のSC13で,MicronはAutomataという非決定性有限オートマトンのチップを発表しました。このAutomataについては,マイナビに私のレポートがありますので,参照下さい。

  2014年10月7日にMicronは,このチップのソフトウェアを開発するためのSDKの提供開始を発表しました。SC13では,2014年の前半に出すといっていたので,3か月ほど遅れましたが,公開に漕ぎ着けました。

6.Intelプロセサの三角関数に大きな誤差がでるケースを発見

  2014年10月10日のThe Regiserが,Bruce Dowson氏がIntelプロセサの三角関数が大きな誤差を持つ場合があることを発見したと報じています。

  x86/x64プロセサのFSIN,FCOS,FSINCOS,FPTANなどの三角関数は8087命令で計算されています。三角関数は周期的に変化するので,与えられた角度を0〜2Πの範囲に変換して計算を行います。このときに使っているΠの値にわずかに誤差があり,正しく0〜2Πの範囲に変換できないのだそうです。

  The Registerの記事では誤差はLSBの1.3×1018と書かれていますが,これは倍精度浮動小数点数の有効数字で,入力値が非常に大きい場合は,0.0が1.0に化けることもある訳で,この数字に大きな意味はありません。

  Dowson氏も,これをバグと呼ぶかどうかは疑問という立場で,互換性の観点から,Πの値を変更するのは難しいと述べています。


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