最近の話題 2014年11月8日

1.ImaginationがCPUと大量のGPUを集積するテクノロジを開発

  2014年11月3日のEE Timesが,Imagination Technologyが,同社のMIPS64アーキテクチャのiW6400 Warriorプロセサと大量のPowerVR GPUを集積したHPC向けのチップを作るテクノロジの開発を計画していると報じています。

  ImaginationはiW6400プロセサと数100のPowerVRコアを,コヒーレントに接続するリンクの開発を進めており,この技術を顧客に提供して行くとのことです。つまり,NVIDIAのTegraシリーズのような感じのチップが作れます。ただし。NVIDIAは完成したチップを販売するのですが,ImaginationはIPをライセンスする会社なので,チップは作らず,顧客の求めに応じて,集積するプロセサのコア数やスレッド数,GPUコア数などを決定したチップを設計するサポートを行うことになります。

  そして,プロセサコアとGPUコアはコヒーレントに接続され,単一共通メモリモデルで多数のスレッドが配列に動作することができます。ソフトウェアの開発環境としてはOpenCLを考えているとのことです。

2.国産技術によるスパコンExaScaler-1が稼働開始

  2014年11月6日に,(株)ExaScalerと(株)PEZY Computingが,高エネルギー加速器研究機構(KEK)に設置されたExaScaler-1スパコンが稼働を開始したと共同発表を行いました。

  ExaScalerのフッ化炭素の冷媒を使う浸漬液冷装置ESLC-8を4台使い,それぞれのESLC-8にSupermicroの1Uサーバを8台収容し,各サーバに8個のPEZY-SCをアクセラレータとして付けています。つまり,システム全体では,Xeon E5-2660 v2を64チップ,PEZY-SCを256チップ使い,Xeon側に合計8TB,PEZY-SC側に8TBのDRAMを搭載しています。そして,32台の1UサーバにMellanoxのNICを搭載し,36ポートInfiniBand FDRスイッチで結合したシステムとなっています。

  CPUとPEZY-SCの合計のピーク演算性能は395TFlopsで,初期の試験においてHPLで153.7TFlopsを達成したと発表されています。これは,今年6月のTop500では420位に相当する性能とのことです。しかし,11月16日から開催されるSC14での次回のTop500では,新たなシステムが100システム程度は増えると思われるので,次回のTop500に入るのは厳しそうです。また,ピーク性能に対するHPL性能は38.9%で,初期のGPUアクセラレータ付きのマシンでも50%程度,6月に6位となったPiz DaintはNVIDIAのK20xを使って80%を超えるピーク比率を達成しているのと比べると,かなり,低い効率で見劣りします。ただし,初期の試験と断っているので,まだ,十分にチューニングがなされていないのかも知れません。

  一方,Green500では4.02GFlops/Wで,これは6月のリストでは2位に相当します。ただし,Top500の500位を超える性能を出していないとGreen500には入れないので,こちらもランク入りは微妙です。しかし,18か月前のTop500の性能を上回るという条件のLittle Green500では良いところに行くと思われます。いずれにしろ,GFlops/Wが高いのは,PEZY-SC自体の電力効率が高いのと,液冷でチップ温度が下がってリーク電流による電力消費が抑えられていることが効いていると思われます。

  国産技術によるスパコンというキャッチフレーズですが,東工大のTSUBAME-KFCがNVIDIA GPU,冷却がGreen Revolution Coolingと米国のテクノロジを使っているのに対して,国産という主張と思われますが,CPUは米国,InfiniBandはイスラエルであり,PEZY-SCのファブはTSMCですから,…。とは言え,アクセラレータと液冷を自主開発したのは大したものです。

  PEZYとExaScaler両社を合わせて20名強の社員数で,PEZY-SCチップのテープアウトから7か月という短い期間でExaScaler-1を開発しており,これは前例がないスピードの開発であったとPEZYの齊藤社長は述べています。

  KEKに設置されたExaScaler-1はSuiren(睡蓮)と名付けられました。KEKのBG/QスパコンはSakura(桜)とHimawari(向日葵)という名前で,液冷を思わせる睡蓮は良い命名です。

3.Intelの14nm Skylakeは2015年9〜10月に遅延か

  2014年11月5日のThe Resiterが,10月31日のDigitimesの記事を引いて,IntelのSkylakeは9〜10月に遅延かと報じています。なお,オリジナルのDigitimesの記事はMembers Onlyとなっており,会員にならないと読めません。

  IDF 2014では,Skylakeは2015年の後半までには出荷と発表されており,2015年の6〜7月と見られていたので,これと比較すると2〜3か月の遅延となります。

  遅延の理由は,主力の Broadwellが14nmプロセスの遅れで,現在,やっと出始めたところであり,半年後に次世代のSylakeを出してしまうとBroadwellを 売る期間が半年と短くなってしまうから,とのことです。通常,次世代製品は1年くらいの間を空けるので,それに倣えば,もう少し遅くても良いのでしょう が,Windows 10ベースの製品の売れ行きにも影響するので,遅れが大きくなるとMicrosoftやOEMメーカーからの苦情も大きくなるし,そのあたりのトレードオフで発売時期が調整された感じです。
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