最近の話題 2015年4月11日

1.TSMCが10nmまでのロードマップを発表

  2015年4月8日のEE Timesが,TSMCのTechnology SymposiumでのTSMCのロードマップの発表を報じています。また,2015年4月7日のSemiWiki.comが詳しく報じています。

  まず,16FF+の量産開始は2015年半ばとのことです。16FF+は競合他社(Samsung)より10%性能が高く,20nmと比較すると電力が半分,クロックは2倍にできると言っています。年末までに50品種のテープアウトと予想しているとのことです。20nm量産立ち上げは3か月だったとのことで,16FFはメタルは20nmと同じなので,もっと速く立ち上げられるとみています。そして,2015年末には10万ウエファ/月の量産という目標だそうです。

  また,16FFCと呼ぶ,中下位のスマホやウエアラブル向けにコンパクト版のプロセスを開発し,このプロセスは0.55Vの電源で動作し,消費電力は半分以下とのことです。また,16FF+ではゲート単価が上昇と言われていますが,16FFCは価格競争力があるとのことです。FFCのテープアウトの受け付けは2016年の後半となっています。

 そして,10nmのテクノロジの概要についても明らかにしました。10FFは16nmプロセスと比べて密度は2.1倍,19%の速度向上,あるいは38%の電力減とのことです。既に256MBのSRAMテストチップを作っており,10FFの量産開始は2016年末(SemiWikiでは,リスク量産は
4Q2015)となっています。

 さらに,28HPC+と28ULPというプロセスが発表されました。28HPCは11Tと9Tのセルを使っているのですが,HPC+は9Tと7Tのセルに変えて密度を向上し,加えて速度も15%速いとのことです。28ULPは超低電力プロセスです。

2.ANLのAuroraはピーク180PFlops,$200M

  2015年4月9日のThe Registerが,Argonne National LaboratoryがCORALプロジェクトで調達するAuroraについて報じています。ピーク演算性能は180PFlopsで価格は$200Mとなっています。現在のMiraは10PFlopsですから,ピーク演算性能は18倍になります。

  稼働時期は2018年で,10nmプロセスで作られるKnights Hillを使うとのことです。これらのチップは主契約者のIntelが供給し,システムはサブ契約者のCrayの開発,製造で,XC40の次世代のShastaアーキテクチャとのことです。規模は50,0000ノードで,7PBのメインメモリを持ち,それに150PBのストレージが付きます。消費電力は13MWとなっています。

  Knights Hillに関しては,The Registerの記事では4TFlopsから4.5TFlopsの性能と書いていますが,4TFlops×5万ノードは200PFlopsとなりますから,もう少し性能が低いのかもしれません。

  また,ORNLのSummitは300PFlops,LLNLのマシンはPOWER9クラスタの100PFlopsで,これらのマシンは2017年に運用開始と書いています。

3.米国が天河2号の開発主体NUDTなどへのIntelチップの輸出を禁止

  2015年4月8日のHPC Wireが,現在,Top500の1位である中国の天河2号の開発者であるNUDT(国防科学技術大学)や設置されているスパコンセンターなどの4団体を米国の禁輸対象に指定したと報じています。

 天河2号はXeon CPUとXeon Phiを使っており,Intelのチップを使っています。また,Intelも70%近い値引きでこのビジネスを取ったと言われています。米国の輸出にあたっては,軍事目的などに使うことは禁止という条件がついているのですが,天河2号を開発した国防科学技術大学は,その名前が示すように,国防に関する用途(核開発など)に天河2号を使っているのではないかという疑惑がありました。

 米国には,国益に反する団体に指定されると,その団体への輸出を禁止する法律があり,今回,NUDTを含む4団体が指定され,Intelの輸出申請が却下されたとのことです。

 これは短期的には,天河2号の増強などにはマイナスですが,中国はプロセ開発に多額の資金をつぎ込んでおり,IntelなどでのCPU開発経験者も多く帰国しているので,近い将来,トップレベルのチップの開発能力を持つということを加速するだけで,米国の国益にはならないという意見もあります。



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