最近の話題 2015年4月18日

1.NokiaがAlcatel-Lucnetを買収

  2015年4月15日のEE Timesが,NokiaがAlcatel-Lucnetを$16.6Bで買収すると報じています。Nokiaの2014年の$12.7Bの売り上げの88%が無線アクセス関係ですが,Alcatel-Lucentに$13.2Bの売り上げの内の無線アクセス関係は36%でIPルーターなどの比重が高くなっています。なお,両者の売り上げを合計すると,Huaweiを抜いて業界2位の規模となると考えられます。

 無線アクセスの市場は年率1%くらいで減少していますが,ルーターなどは年率3%で増加しています。Nokiaとしては成長マーケットの売り上げの比重を高める必要があり,AlcaLuを買収すれば,手っ取り早くこれが実現できます。

 Nokiaの売り上げの8%はHEREという自動運転などのために精密な地図を提供するビジネスからのものですが,この買収の費用を賄うため,NokiaはHEREを売却するのではないかという観測が流れています。

 2社の合計の従業員は11万3000人で,重複する部門での人員削減が必要になるとみられています。また,両社を合計した研究者は,ベル研究所(Lucentは電話の発明者のグラハムベルの作ったベル電話会社の流れを引いている)を含めて4万人で,年間の研究費は約$5Bで,これはCISCOの研究費とほぼ同額で,通信業界1位のErricssonを上回りますが,現在業界2位のHuaweiには及ばないとのことです。

2.富士通の新スパコンFX100がJAXAと理研で運用開始

  ちょっとレポートが遅れましたが,2015年4月3日に理研は,1PFlops のHOKUSI GreatWaveと呼ぶスパコンの4月1日からのトライアル運用の開始を発表しました。このシステムは,京コンピュータとは別で,理研内の計算センターという位置づけのマシンです。4月下旬に利用課題の申請の受付を始め,5月下旬から,採択された課題で使用する本格運用を開始する予定です。また,このシ ステムは2016年にはHOKUSAI Big Waterfallを導入し,HOKUSAI GWと一体化して運用する計画になっています。

  同じく2015年4月1日にJAXAは,JSS2「宙(SORA)」の第2期一般運用の開始を発表しました。SORAの第1期は55TFlops強のx86サーバのシステムで,第2期に1PFlopsのFX100が追加されて本格的なスパコンとなります。そして,2016年4月から3PFlopsのフルシステムにアップグレードされる予定です。

  HOKUSA GWのマシンは富士通の新スパコンFX100で,1080ノード,34,560コアという構成です。また,このシステムは,Tesla K20xを4台搭載するサーバ
アプリケーション演算ノード)30台と1TBメモリを搭載するファットノードを2台備えています。オンラインのストレージは富士通のFEFSで2.1PBの容量を持ち,理論帯域は190GB/sとなっています。

  JAXAのシステムは記述がありませんが,マシンはFX100で1080ノードと考えられます。また,ストレージは
J-SPACEと呼ぶシステムで,0.8PBで20PBのテープアーカイブが付き,HPSSを使っています。

  なお,FX100は2014年10月18日の話題で紹介したように,第1ユーザの日本原子力機構への納入が遅延して,注文がキャンセルになり,今回の 理研とJAXAへの納入がFX100の初出荷と思われます。しかし,富士通のWebにはニュースリリースは無いし,理研やJAXAの発表もローキーです。 まだ,歩留まり問題が残っていて,あまり注文が増えると対応できないので,売り渋っているというのは勘ぐりすぎでしょうか?


3.
$269,000でEnigmaを落札

  2015年4月17日のThe Registerが,Bohnham Auctionで第二次大戦でのドイツ軍の暗号マシンであるEnigmaが$269,000で落札されたと報じています。1944年6月にベルリンで製造されたもので,完動品とのことです。Alan Turingの生涯を描いた映画Imitation Gameで暗号解読の対象となったマシンです。

  なお,Imitation GameはTuringの生涯を描いたというキャッチフレーズがついていますが,Turing MachineとかTuring Testなどコンピュータサイエンスに対する功績には触れていません。Enigma暗号の解読も戦争終結を数年早めたと言われ,多くの人の命を救ったという大きな功績がありますが,この映画では触れられなかったコンピュータサイエンスへの功績とどちらが人類への功績として大きいのでしょうね。

  それから,映画ではTuringの作ったTuring BombeでEnigma暗号が解かれたように描かれていますが,解読されたテキストは人名や地名はコードネームで,その他の文章もヤクザの隠語のように表現が置き換えられていて一般人が見ても分からないようになっているので,Turing Bombeの出力を専門の暗号解読者のチームが一般人に分かる文章に解読する作業を担当していました。

  また,師団司令部などハイレベルの部隊にはローレンツ暗号という,より高度な暗号が使われ,イギリスは,この暗号の解読のためColossusというマシンを開発しています。Turing Bombeは電気機械式のマシンですが,このColossusは全電子式で,専用コンピュータの祖と言われています。


  Enigmaは艦船では1隻に1台,陸上部隊でも同程度の規模である中隊くらいには配備されていた筈で,相当な台数が製造されたと思われますが,終戦から70年も経つと,残っている
完動品は限られていて,クラシックカー並みのお値段が付くのかもしれません。



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