最近の話題 2015年5月9日

1.IntelがハイエンドのサーバプロセサE7v3を発表

  2015年5月5日にIntelはハイエンドのサーバプロセサであるE7v3(開発コード名Haswell-EX)を発表しました。当然,あちこちのメディアが発表を報じていますが,2015年5月6日のPC Watchの笠原さんの記事が詳しいので,これを参照して紹介します。また,2015年5月5日のSemiAccurateにも詳しい記事が載っています。

  最大18コアを搭載し,4チップまではQPIで直結して,最大72コアのシステムを構築できます。また,外部にQPIを拡張するチップをつければ8チップ,144コアのシステムが作れます。

  トランザクション処理のサポート機能であるTSXは,Haswellで鳴物入りで導入されたのですが,バグが見つかり,すぐに引っ込められてしまいました。主要機能の重大なバグの見逃しですが,浮動小数点の割り算のバグとは違い,全くの新機能なので,使っている人がいないので大きな問題にはなりませんでした。

  今回のE7v3では,バグ修正ができ,正式にリリースされることになりました。これを使わない場合と比べると最大6倍に性能があがるというキャッチフレーズが付いています。

  複数のコアが,クリティカルな変数へアクセスする場合は,排他制御が必要になり,一般にはセマフォなどを使います。TSXは,排他制御を行わないで処理を行い,競合が検出された場合には,その処理を取り消し,元に戻って処理をやり直すことを可能にする機能です。やり直しが必要になるとロスが発生しますが,毎回のセマフォ操作などの
オーバヘッドが減らせます。競合の確率が低い場合には,メリットが生じます。しかし,6倍の性能向上はかなり有利な場合の各種の改善を総合した値で,その場合でのTSX単体の改善は2.2倍とのことです。

  PC Watchの記事では。図が小さく,クリックして拡大しないと良く見えませんが,8コアを繋ぐ2重リングと10コアを繋ぐ2重リングがあり,その間を双方向のバッファで接続しています。従来は,3つのリングで繋いでいたので,それに比べるとすっきりした感じです。3つのQPIポートの内の2つは8コアリング,1つは10コアリングに繋がっており,バッファを通るQPI通信の性能がどうなるかがチョッと気になります。なお,QPIは9.6GT/sと20%高速になっています。

  そして,キャッシュコヒーレンシに関して,ディレクトリ方式となり,Home Agentに各ラインがどのプロセサチップに輸出されているかを示すビットが作られ,そこにだけスヌープを送るようになり,トラフィックが削減されています。

  メモリはJordan Creek2と呼ぶ2チャネルのバッファチップを経由しての接続で,C112というチップではチャネルあたり2DIMM ,C114は3DIMMが接続できます。E7v3チップには4個のJordan Creek2が接続できますので,最大24枚のDIMMが接続できることになります。また,メモリとしてはDDR3とDDR4がサポートされます。そして,DDR4ではアドレス/コマンドのパリティーチェックがサポートされます。

  また,ハイエンドサーバ向けであるのでRASも強化され,Machine Check Architecture Gen2になり,Itaniumのファームモデルに準拠した構成となり,全てのエラーをファームウェアでインタセプトしてログが採れ,ファームやVMMレベルでリカバリできる問題は,OSに通知することなく動作を続けるなどリカバリが改善されるとのことです。。

  Jordan Creek2の2チャネルのDIMMをミラー構成として片方のDIMMにECCでも訂正不可能なエラーが発生しても動作が続けられる構成がとれ,その場合,OSやVMMなどの重要な情報を含むアドレス範囲だけを指定して
ミラーリングすることにより,メモリの無駄を減らせます。また,故障したランクを含むDIMMからスペアに情報を移動して運転を続けるランクスペアは,スペアを別DIMMに作る機能がサポートされ,電源を落とすことなく運転中に故障DIMMを交換できるようになりました。また,Jordan creek2は2チャネルのDIMMを完全に同じように動かすロックステップモードもサポートしています。しかし,ロックステップの場合は,エラー訂正が強力になりますが,Jordan Creek2とプロセサ間のSMIバスの速度が半分(DIMM枚と同じ速度)になります。

 製造プロセスは22nmで,チップサイズは662mm2,消費電力は最大165Wとなっています。消費電力v2から10W増加していますが,これはFIVRで,従来はボードに載っていた安定化電源を内蔵したためで,ボード全体の消費電力は増えていないとのことです。むしろ,FIVRによるコアごとの電源電圧制御とクロック制御が可能になったことで,全体としての消費電力は減っているのではないかと思います。

2.AMDがプロセサとGPUのロードマップを発表

  AMDはFinancial Analyst Dayni置いて,CPU,APU,GPUなどのロードマップを発表しました。これも多くのメディアがカバーしているのですが,2015年5月7日のPC Watchの後藤さんの記事が詳しいと思いますので,これをベースに紹介します。

 まず,CPUですが,2016年には,現在の建設機械シリーズの次期アーキテクチャのZenコアをを搭載するFXシリーズを出すと発表しました。大きな特徴は,これまでAMDがやってこなかったSMTの採用です。ZenではIPCスループットが40%向上するとのことです。IPCスループットというのは聞いたことのない言葉ですが,同じクロックで単位時間あたりに実行できる命令数が40%増えるということで,シングルスレッドのIPCが40%あがるというのではなく,SMTを含めて40%多くの命令が実行できると言っていると思われます。

 ZenのSMTの並列度は明らかになっていませんが,4スレッドなら40%向上は十分有り得る話で,2スレッドでも,かなり資源を追加したSMTなら可能な範囲で,驚くには当たらないと思います。
  

 Zenの投入は2016年で,20nmは飛ばして14/16nmのFnFETを使うとのことです。これも当然という感じです。

 また,キャッシュシステムも高バンド幅,低レーテンシになると書かれていますが,SMTなどでプロセサの振舞いが変わるので,それに合わせて変更するのは当然と思います。

 2016年にはZenコアはデスクトップのAPUにも使われるとのことです。

 そして,もう1系列のARMベースのK12ですが,予定が2017年とずれ,x86側とソケット互換というSkybridgeが取りやめになりました。基本的に,ソケット互換にしてほしいという要望自体殆ど存在しなかったと,その理由を説明しています。

 しかし,ZenとK12でIOブロックなどのインタフェースを共通化するなどの設計効率化は,引き続き推進されるのではないかと推測されます。CPUコア自体も,相当,共通化が進むという観測もあります。K12のマイクロアーキがZenとぼ同じレベルになるとすると,現在は性能的にx86に負けているARMコアとしては,大幅に性能の高いコアになり,面白いと思います。

 そして,GPUでは2015年の中ごろにも,HBMを搭載するGPUを出すと発表しました。予定通りに行けば,NVIDIAのPascal以前で業界初のHBM登場となります。GPUコア自体は2016年には,現在のGCNを最適化してエネルギー効率を2倍に引き上げたGCN 3.0を出します。しかし,この2倍にはFinFETの採用の効果も含まれているようです。

 ということで,ロードマップは発表されたものの,その技術的中身は,殆ど明らかになっていません。

 後藤さんの記事では,CEOのLisa Su氏が2014年の売り上げは40%が組み込み,カスタムで,これらの市場が急速に拡大するので,ビジネスが急速に上向くと述べたと書かれていますが,1月20に発表した同社の第4四半期の結果は,$364Mの純損失ですから,急速に上向かないとどうにもなりません。

3.Samsungが$14.4BのFabの建設を開始

  2015年5月8日のEE Timesが,Saumsungが$14.4Bを投入する10nm世代の生産を行う新Fabの建設を開始したと報じています。場所はPyeongtaek City (韓国南部の平沢市)です。稼働開始は2017年前半の予定です。

  15万人を雇用し,DRAMだけでも$40B/年の売り上げで,それ以外にモバイル,サーバ,IoTなど各種の製品を作るとのことです。


4.UberがHereの買収に名乗り

  
2015年5月7日のNew York Timesが,Webベースで配車を行うサービスを提供するUberが,NoikiaのHere部門を買収に名乗りを上げたと報じています。

  5月8日のマイナビに,私の書いた自動運転のパネルのレポート記事が載っていますが,自動運転を行うには交差点の詳細や車線レベルで道路を表現する高精度マップが必須です。この高精度マップの大手がHereです。また,通常のマップでも,BingやYahoo,Facebookにマップを提供しているGoogle Mapsのライバルです。Hereは,2011年にNokiaに買収され,現在はNokiaの1部門となっています。

 しかし,2015年4月15日の話題で紹介したように,NokiaはAlcatel-Lucentを$16.6B($15.6Bという報道もある)で買収するためにお金がいるので,本業とは関係の薄いHereの売却を計画していると言われています。これに関して,UberがHereの買収に$3Bという値段で名乗りを上げたとのことです。

 Uberとしては,Google MapsやApple Mapsへの依存度を下げたいとの意向だそうです。しかし,BMWやMerceds Benzなどの自動車メーカー,Apple,Amazon,Facebookなども興味を持っていると言われ,激戦になりそうです。

  

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