最近の話題 2015年5月16日

1.MediaTekが3クラスタ10コアのスマホ用SoC X20を発表

  2015年5月12日のThe Inqirerが,MediaTekの3クラスタで合計10コアを搭載するHelios X20の発表を報じています。Heliox X20は2.5GHzクロックのARM Cortex-A72を2コアと,2GHzクロックのCortex-A53を4コアと,1.4GHzのCortex-A53を4コア搭載しています。

  CorePilot 3.0というスケジューリングアルゴリズムを使って,ハイエンドのA72と,
2種のクロックの64bitアーキでは低電力のA53のクラスタを必要な性能に応じて使い分けることで,ARMのbig.LITTLEより30%少ない電力にできるとのことです。

  また,Helios X20はMali T880 GPUとMediaTekのWorldMode Category 6 LTEモデムを搭載しており,これらもCorePilot 3.0で制御されています。

2.今年の夏からGoogleが第2フェーズの自動運転車の公道走行を開始

  2015年5月15日のThe Inqirerが,今年の夏からGoogleの自動運転車が,Googleの本拠があるMountainView市の公道の走行する第2フェーズの実験を始めると報じています。この車は昨年12月に公開されたまるっちい自動運転専用のプロトタイプです。

  Googleは,これまでもLexuss RX450 SUVを使って自動運転を行ってきており,これまで100万マイルを自動走行しており,その間の事故は11件と発表しました。この11件はいずれもマイナーなもので,また,これらの事故は人間側のミスが原因とのことです。なお,今回のプロトタイプは,このLexusと同じソフトを使うとのことです。

  今回は第2フェーズの自動走行とのことですが,システムがおかしくなった時などに対応する人間のセーフティードライバーの搭乗が義務付けられており,事故の場合のダメージを小さく抑えるため,最高速度は時速25マイル(おおよそ時速40km)に制限されているとのことです。日本では,ちょっとした道路でも40km制限のところは多くありますが,MountainViewでは25マイル制限は住宅地の道くらいで,これで走ると,多くのところで,周りの車から見ると,かなり遅いと思われると思います。

 この第2フェーズでは,周囲が自動運転車をどうみて,どう振る舞うかなどを学ぶのが目的とのことです。また,行先として指定した場所が,工事や混雑などでそこには行きつけないというような,実際に起こり得る各種の問題を洗い出すのも目的だそうです。

3.D-Waveマシンは量子コンピュータか?

  2015年5月14日のEE Timesが,D-Waveのマシンは量子コンピュータか?と題する記事を載せています。疑問符がついたタイトルですが,D-Waveの発表をもとに,開発責任者のJeremy Hilton氏へのインタビューに基づく記事のようです。

  量子ゲートを使って演算を行う汎用のマシンを量子コンピュータと呼ぶとすれば,最適化問題しか解けないD-Waveのマシンは量子コンピュータではありません。しかし,離散最適化問題というのは重要な分野であり,従来のコンピュータでは解けない問題が解けるというのは大きな意味があるとのことです。

  D-Waveのマシンは,量子アニールという原理で問題を解いており,初期状態から,系全体のエネルギーが最小になる状態を見つけます。普通のアニールは高温の初期状態から温度を下げて行って,エネルギーの低い状態の持っていくのですが,常に最低エネルギーの状態になるとは限らず,局所的な低エネルギーのポケットに捕まってしまうということが起こります。変数の数が多く,複雑な山,谷が入り組んでいる場合は,幾らやっても最低エネルギー状態にはならないということが起こります。このような場合,少し温度をあげて,熱エネルギーで,ポケットの壁を乗り越えて,隣の谷に移すというようなことが行われますが,これも確実ではありません。

 量子アニールの場合は,量子トンネル効果で,山を突き抜けて隣の谷に系の状態がジャンプできるので,最小エネルギーの状態が見つかると説明されています。

 また,量子ゲートを使う計算では,量子ゲートは完全に動作する必要があり,各ビットに誤り訂正を組み込んだりする必要がありますが,量子アニールの場合は,多少エラーがあっても,速度は遅くなるのかも知れませんが,動作するようです。

 いずれにしても量子システムは,量子ビットの状態の読み出しは確率的なので,多数回,同じ計算をして,結果を読み出して,答えの出現確率の高いものが正解という感じですから,時々,エラーが起こっても致命的ではありません。D-Waveのマシンは安定的に動作する量子ビットは作り出していないとしても,量子アニールには使えるというレベルになっているということでは無いかと思います。

 なお,D-Waveには投資家からお金が集まっています。また,金融機関などもD-Waveのマシンをリモートで使って研究を行っているようです。D-Waveのマシンが理論的に正しい量子コンピュータであるかどうかは問題ではなく,投資を超えるリターンが得られそうかどうかという判断で投資が行われるというのは,ビジネスの常です。

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