最近の話題 2015年5月23日

1.Samsungが2016年末までに10nmFinFETの量産を開始

  2015年5月22日のEE Timesが,2016年末madeni,10nm FinFETの量産を開始すると発表したと報じています。10nmという以外にプロセスの詳細は発表されていませんが,14nmに比べて,面積,電力で大きなアドバンテージがあるとのことです。

  TSMCもほぼ同時期に10nmの量産を発表しており,どちらが早いか,AppleやQualcommなどの巨大ユーザをどちらが獲得するかの熾烈な競争になります。

2.ASC15 Student Supercomputer Challengeで精華大が総合優勝

  2015年5月22日のHPC Wireが,ASC15で行われたStudent Supercomputer ChallengeでTsinghua(精華大)が総合優勝と報じています。総合2位は国防科技大(NUDT)です。

 そして,Highest LinpackではシンガポールのNanyang Universityのチームが11.92TFlopsを達成したと報じています。ルールはSCで行われるStudent Cluster Challengeと同じで,3kW以下の電力のシステムで,最高のHPL性能を目指すというものです。

  Nanyang大のチームはInspurの7ノードのサーバに8台のNVIDIA K80 GPUを搭載しているとのことです。

  これまでの記録は,ドイツで行われたISC14において,イギリスのEdinburgh Universityのチームが出した10.1TFlopsですから,これを20%近く上回る新記録です。

3.ImaginationがOmniShieldセキュリティーシステムを発表

  セキュリティー機能としては,ARMのTrustZoneが有名ですが,それの向こうを張って向こうを張って,Iamgination TechnologiesがOminiShieldというセキュリティーシステムを発表したと,2015年5月20日のEE Timesが報じています。

  OminiShieldは,MIPS CPUハードウェアに,暗号ユニット,乱数発生器,セキュアROMなどのRoot of Trust機構を持ち,これらを使ってセキュアBootや信頼できるハイパーバイザを実現しています。そして,その上に,最大255個のセキュアドメインを作ることができ,その中でセキュアなOS,トラステッドなプリを動かすことができます。

  OmniShieldは,MIPS CPUだけでなく,同社のPowerVR GPU,Enigma Radio Processorなどもカバーするとのことです。

  Imaginationは,今年末にはリファレンスプラットフォームを出すとのことですが,OmniShieldのAPIはBroadcom,Qualcomm,Lantiqなどが参加するグループで検討しているので,APIの制定は,リファレンスプラットフォームの提供開始よりも遅くなるとのことです。

  IoTの世界ではよりセキュリティーの重要性が増すので,このような機能の実装は必須になると思われます。

4.NVIDIAのSumit Gupta氏がIBMに移籍

  2015年5月19日のHPC Wireが,NVIDIAのGPU Accelerated Data Center Computing部門のジェネラルマネージャで,HPC向けのTeslaビジネスを担当してきたSumit Gupta氏がNVIDIAを辞め,IBMに移ると報じています。

  Gupta氏は2007年にNVIDIAに入ったとのことで足掛け8年の在籍ですが,ほぼゼロであったTeslaのビジネスを現在の状態に育て上げた人で,IBMではVPとして,OpenPOWERのHPCビジネスを担当するとのことです。

  NVIDIAはOpenPOWERグループに入っており,POWER CPUがNVIDIAのNVLINKのサポートを表明しているなど,IBMとNVIDIAは敵ではなく,味方ですが,NVIDIAとしてはGupta氏が居なくなるのは痛手ではないかと思います。

  Sumit Gupta氏には,GTCやSCなどで何度もインタビューさせて戴きお世話になりましたが,今度はOpenPOWERの話を聞きにいくことになりそうです。

  なお,IBMでのGupta氏のオフィスはシリコンバレーとのことで,引っ越しの必要はなさそうですが,オースチンや東海岸との往復が増えるのではないかと思われます。

5.Discoのウェファ研磨と切断技術

  数年前に技術は完成しており,ニュースというわけではないのですが,2015年5月18日のSemiAccurateがDiscoのウェファ研磨と切断技術の記事を載せています。英文を読まなくても,写真だけを眺めても面白いです。

  Discoは日本の会社で,シリコンのインゴットを輪切りにしてウェファを作ったり,チップを作り込んだウェファを賽の目に切断してチップを作る装置では世界的なメーカーです。

  サーバやPCでは0.5mm程度の厚みのチップでもあまり問題になりませんが,スマホなどではチップの厚みが問題になります。また,話題のTSVによる3D積層を行う場合は,ウェファを研磨して100um以下にする必要があります。

  しかし,薄くすると,ペニャペニャになり,50um厚のするとフィルムみたいに曲がってしまい,チップに切断するのが難しくなります。また,チップが小さくなると,切断のための鋸刃の幅の部分のロスがバカになりません。

  これに対して,Discoは太鼓グラインダーという技術を開発し,記事に写真がありますが,太鼓状のグラインダーで,日蓮宗のうちわ太鼓のように外周の部分は厚いまま残し,中央の部分を薄く研磨する技術を開発しました。そして,そのウェファをキャリアに取り付けます。キャリアはウェファがある程度くっつくフィルムが貼ってあり,ここにくっつけてペニャペニャで無くして取扱います。2014年4月26日の話題で紹介したように,Disco等はVLSI Symposiumにおいて,DRAMウエファを4umまで研磨したという論文を発表しています。

  切断ですが,丸鋸で切ると,刃の幅の部分がロスになりますし,粉が飛び散るなどして面倒です。そこで,DicsoはStealth Dicingという技術を開発しました。この技術では赤外レーザを使い,ウェファの表面より内側に焦点を当てて,内部に欠陥を作ります。このレーザヘッドを切断したい線に沿って移動させます。

  これで点線が入った状態になったウェファが張り付いたフィルムを4方向に引っ張って伸ばすと,点線に沿ってウェファが割れ,それぞれのチップに分かれるというわけです。

  丸鋸だと1直線にしか切れませんが,レーザの場合は,オンオフすれば,連続した直線でなくとも切れます。SemiAccurateの記事に写真が載っていますが,異なるサイズの長方形のチップを混載したウェファが切れます。少量生産で何種ものチップを混載する場合には便利です。

  また,ウェファを120度ずつ廻してオンオフしながら切れば,6角形のチップも切れます。

6.中国が自前プロセサで100PFlopsスパコンを開発か?

  上海交通大学のJames Lin氏のTwitterに,どこかの学会での発表スライドの写真が掲載されています。この情報は,松岡先生のTwitterで見つけました。

  それによると,Tianhe 2の第2フェーズでは,インタコネクトをアップグレードし,ノード数を増やし,ノードもKNCからKNLにアップグレードし,CPUとの比を2:2に変更する計画で,インタコネクトの変更やノード数の増加は終わったが,米国の禁輸措置で,計画の変更が必要となった。そこで,自前のFTプロセサを開発することになり,Tianhe 2に使われたFTプロセサの次の新たなFTプロセサを開発中とのことです。

  さらに,2016年末までにSunway-NG?と呼ぶ,第2の100pFlopsシステムを開発するとのことで,現在開発中のSunwayのメニーコアプロセサを使うとのことです。

  その程度信憑性のある情報かは分かりませんが,十分,あり得る話です。

  



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