最近の話題 2015年6月6日

1.IntelがAlteraを$16.7Bで買収

  先週,AvagoがBroadcomを$37Bで買収したと思ったら,今週はIntelが$16.7Bで買収というニュースが出てきました。色々なところで報道されていますが,ここでは2015年6月1日のEE Timesの記事をベースに紹介します。

  AlteraはXilinxに次ぐ大手のFPGAメーカーで,一部の上位製品をIntelの14nmプロセスで製造しています。しかし,Alteraの全量をIntelで作ったとしてもFabキャパシティーの5%程度にしかならず,IntelとしてはFabを埋めるための買収ではないとのことです。

  買収の目的ですが,MicrosoftがBingのサーチの高速化のために,サーバにAlteraのFPGAを搭載したボードを作って使っているように,繰り返しの多い比較的単純な処理はCPUでやるより,専用のロジックでやった方が効率が良い。しかし,Webでの処理は変わっていくので,ASICという訳には行かないので,FPGAという選択になっています。FPGAなら処理アルゴリズムが多少変わってもプログラムを変えて対応できます。ということで,CPU+FPGAというコンビネーションが注目されてきています。

  また,次に紹介するPurleyのリークスライドでは,FPGAをCPUと同一パッケージに搭載するという製品も予定されており,Intelとしては,社内でFPGAを開発する能力を手に入れるというのは理解できます。

  しかし,多くのアナリストは,$16.7Bというのは高い買い物ではないかという意見が多いようです。また,過去のIntelの大型の買収は殆ど失敗しているので,今回も,本当にうまくいくのかを危ぶむ見方もあります。

  一方,AlteraはTopのXilinxの後塵を拝してきたのですが,Intelというお金持ちのバックがついたので,Alteraの競争力が増すという見方もありますが,この発表でXilinxの株価は上がり,投資家の見方は,Xilinx不利というものではないようです。

  買収は,Alteraの1株に$54で,合計$16.7Bを現金で払うという条件で,買収完了後は,AlteraはIntelの一部門となるとのことです。また,両者の取締役会は賛成とのことですが,Alteraの株主総会の賛成と,当局の承認が必要になります。

2.AMDの新APU Carrizo

  2015年6月3日のPCWatchがAMDのCarrizoの発表を報じています。CarrizoはCPUとして新開発のExcavatorコアを4コア,GPUは第3世代のGCNコアを最大8コア搭載しており,HEVC/H.265に加えて,セキュリティープロセサとサウスブリッジを集積するSoCとなっています。L1D$を倍増,BTBを50%増加などのマイクロアーキの改善でIPCが4〜15%向上しているとのことです。

  GPUはGCN 3となり,CPUとのキャッシュコヒーレンシを改善し,DRAMのフルバンド幅の状態でコヒーレンシを維持できるようになっています。また,GPUはプリエンプションとコンテクストスイッチができるようになり,CPU並の使い勝手になったとのことです。

  前世代のKaviniやIntelのチップではサウスブリッジは別チップであったのですが,これを集積したことにより,小型,省電力のシステムが作れるようになっています。

  プロセスは,前世代と同じ28nmですが,従来はGPU向けに使われていた,密なメタル配線層を多く持つプロセスを使い,高密度な小さなセルを使うなどの方法で,チップ面積を23%縮小しています。

  製品としてはFX-8800P,A10-8700P,A8-8600Pの3種が発表され,8800PはCPUコアは4個でクロックはベース2.1GHz/ターボ3.4GHz,GPUコアは8個でクロックは800MHzです。8700PはCPUコアが4個で1.8GHz/3.2GHzのクロック,GPUは6コアで800MHzクロックです。そして8600PはCPUが4個で1.6GHz/3GHz,GPUは6コアで720MHzクロックとなっています。

  GPUの1コアは64積和演算器を持ち,8コア800MHzの場合のピーク単精度浮動小数点演算性能は819.2GFlopsとなります。

  消費電力は12W〜35Wの範囲で設定することができ,15Wに設定した時が最もエネルギー効率が高くなる設計とのことです。

3.IntelのSylake EX/Purley情報がリーク

  2015年5月?日のWCCF Techが,IntelのBroadwellの次世代のSkylakeの最上位のSkylake EX CPUとそれを使うPurleyプラットフォームに関するリークと考えられるスライドを載せています。元々のソースは5月11〜12日にポーランドで開催されたHPC関係のコンファレンスでのIntelの発表スライドだそうです。

  それによると,Skylake はTock世代で,プロセスはBroadwellと同じ14nmですが,マイクロアーキテクチャは大幅に拡張されています。Skylake EXは26コア×2HTで56スレッドを同時実行し,DDR4メモリを6チャネル接続するとのことです。また,Storm Lakeと呼ぶ100GのOminiPathインタコネクト,CannonLake GPUを内蔵しています。更に,FPGAを内蔵(パッケージ上での接続か?)しています。更に更に,512bit幅のAVX512をサポートしています。

  メモリはDDR4 2133 ,2400では2DIMM,2666では1DIMMしか接続できませんが,DIMMの代わりにApatche Pass(NAND込のDIMMか?)を使うと,容量を4倍に拡大でき,インメモリのデータベースの容量を拡大できるようです。

  そして,CPUソケット間はQPIではなく,UPIと呼ぶ最大10.7GT/sのリンクで接続され,最大8チップまで直結でシステムを構成できます。QPIとUPIの違いは不明です。更にPCIeは48レーン装備しており,x4,x8,x16に分割して使用できます。

  このCPUにLewisburg PCHと710 Ethernet Contorollerなどが付いてPurleyプラットフォームとなります。Lewisburgの接続はPCIe3.0と同じ速度の4レーン幅のDMI3になります。

  消費電力は45W〜165Wの範囲で設定できるそうです。

  そしてハイエンドのXeonですからエラーリカバリやエラーコンテインメントも充実し,OEMシステム用にIntegrated Management Procssorを内蔵しているとのことです。また,BufferOverflow攻撃を防ぐと書かれていますが,具体的にどのようなメカニズムかは分かりません。

  デスクトップ版のSkylakeは,この夏から秋に掛けて登場する予定ですが,ハイエンドサーバ向けのEXチップは1年以上遅れるのが常で,資料では,登場時期は2017年終わりから2018年頃というロードマップとなっています。

4.核融合研が2.6PFlopsのFX100スパコンを導入

  2015年6月1日に核融合科学研究所は,プラズマシミュレータのスパコンを富士通のPRIMEHPC FX100に更新し,従来比で8倍の性能に引き上げたと発表しました。

  このシステムはFX100 2592ノードで構成され,ピーク演算性能は2.62TFlops,メインメモリの総量は81TBで,これに10PBのストレージが付いています。牧野先生のブログによると,予算は 3,576,960,000円で,14億円/PFlopsとのことです。

 京の後継の商用マシンは,2014年3月の理化学研究所 放射光科学総合研究センターからのFX10の受注で,11システム,11832ノードの受注でしたから,理研 和光の北斎とJAXAのSORAの受注と,今回の核融合研で,合計14システムの受注で,目標の50システムまで残り36システムです。ノード数はJAXAと理研和光が,それぞれ1080,核融合研が2592で,合計は,16584ノードとなります。このノード数は,まだ,京スパコンの1/5に届きません。

5.PEZYが4倍密度のES-1.4の計算ノードを発表

  2015年6月5日にPEZYは,次世代のES-1.4スパコンのノードが動き始めたと発表しました。KEK設置の睡蓮スパコンはES-1で,次はES-1.5と言っていたのですが,ES-1.5で実現する予定だった4つのPEZY-SCチップを直結して直接通信ができるようにするという機能が実現できていないので,機種名を少し遠慮して,ExaScaler-1.4と呼ぶことにしたとのことです。

  ES-1ではSupermicroの1Uサーバ用マザーボードを液冷していたのですが,ES-1.4では実装を完全にやり直して,ES-1.0のほぼ4倍の物量を,同じ体積に詰め込んでいます。形状だけでいうと初期のブレードサーバのような細長い形状ですが,PEZYの発表資料に写真があるので,詳しくはそちらを見てください。

  ES-1.4のユニットは,やっと動き始めたところで,まだ,チューニングがなされていないとのことで,直接比較するのは適当ではないかも知れませんが,現状では1ノードのHPL性能は5.8%向上,GFlops/Wは4.2%向上とのことですから,こちらはES-1からの改善はわずかです。液冷の高い熱輸送能力を利用して,設置面積を1/4に縮小したのが大きなメリットです。

6.Apple 1がゴミとして捨てられていた

  2015年6月1日のThe Registerが,CleanBayAreaという廃品回収業者に持ち込まれたごみの中からApple 1が発見され,蒐集家に$20万(約2500万円)で売れたと報じています。

  このゴミを持ち込んだのは60〜70歳の婦人で,夫が無くなったのでガレージを片付け,不用品をいくつかの段ボール箱に詰めて持ち込んだとのことです。しかし,名前も告げず,受取などももらわなかったので,どこの誰であるかは不明とのことです。

  CleanBayAreaは,廃品が売れて利益が上がった場合は,元の持ち主と利益を半分づつに分けるという規則があり,半分の$100,000の受取人を探しているとのことです。

  なお,1976年に作られたApple 1はおおよそ200台で,現存しているのは数10台と見られています。また,昨年,ヘンリーフォード博物館は完動品のApple 1を$905,000で購入したそうです。


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