最近の話題 2015年10月10日

1.Qualcommがサーバ向けのプレ量産の24コアARMプロセサを公表

  2015年10月8日のThe Registerが,Qualcommの24コアARMサーバ向けのプロセサとサーバを公開したと報じています。QualcommはスマホのARM SoCでは大手ですが,その技術を使ってサーバへの進出をもくろんでいます。特に,クラウドコンピューティングの今後の大きな拡大が見込める中国市場を狙っています。

  今回公表されたチップはARMの64bitアーキで24コアですが,これはソフト開発などに使うためのプレ量産品で,本当の量産時にはもっとコア数を増やすとのことです。プロセスはFinFETとのことですが,詳細は発表されていません。

  今回の発表では,XilinxとMellanoxとの協力関係が明らかにされました。XilinxのFPGAやMellanoxの100GbitのEthernetなどが量産品では組み込まれる可能性があります。

  これ以上の詳細の発表は無く,量産の時期も明らかにされませんでした。

  今回公表されたサーバは,Qaulcomのサーバの顧客やソフト開発者向けに提供されるとのことです。

  これで,AppliedMicro,Cavium,AMDに続くARMサーバチップのメーカーが参戦したことになります。

2.Flex LogixのSoCに埋め込むFPGA IP

  2015年10月2日のEE Timesが,Flex Logixという会社のFPGAの記事を載せています。昨年のISSCCで"A Multi-Granularity FPGA with Hierarchical Interconnects for Efficient and Flexible Mobile Computing"というタイトルで発表された論文の製品化で,この論文は今年のISSCCでOutstanding PaperとしてThe Lewis Winnner Awardを獲得しています。

  Flex LogixのFPGAはSoCに組み込むマクロの形でライセンスされ,それをマイクロコントローラやネットワークプロセサなどに組み込んで使います。このようなSoCは基本的な処理は変わらないけれど,標準が変ったりして,少し機能を変更したいということが出てきます。このような時にFPGA部分で変更を吸収できれば,作り直しを避け,すぐに仕様変更ができます。

  ISSCCで発表されたものは,40nmプロセスで作られ,20.5mm2の面積で,その中に,11,040個の6入力CLBと42個の48bit DSP,32K×1bit〜512×72bitのBRAMを16個,そして64〜8192点FFTのプロセサと16個の汎用DSPが入っています。

  通常のFPGAは回路が1に対して,配線領域が4という程度の比率になるのですが,このFPGAは刈り込まれたBenes Networkという接続網を使い,回路と配線の領域を1対1程度に抑えていることが特徴で,同じ面積なら,それだけ多くのCLBを搭載することができるというのが売りです。また,配線が短くて済むので,消費エネルギーの点でも有利です。

  FIRフィルタをCLBで作った場合,Virtex 6では1V,300MHz動作で0.2GOPS/mWですが,この論文のIPでは0.9Vで300MHzで動作し,0.86GOPS/mWと4倍以上のエネルギー効率と書かれています。また,内蔵のFIRプロセサは0.9Vで400MHzで動作し,1.5GOPS/mW以上と,更に2倍近いエネルギー効率とのことです。

3.Marvellが最初のMoChi製品のサンプル出荷を発表

  2015年10月6日のEE Timesが,Marvellの最初のMoChi製品のサンプル出荷の開始を報じています。微細化が進むと設計は複雑になり,チップの設計や製造コストも高くなってきています。このためMarvellは,一つの大きなSoCチップを作るのではなく,主要な部分に分けたチップをパッケージやMCMに載せて相互接続を行うという方法を提唱し,このアプローチをModuler Chipと呼んでいます。

  今回,この部品となるARM Cortex-A72を4コア集積したAP806モジュール,Cortex-A53を2コアのArmadaA3700モジュール,そしてUSBやSATAをサポートするストレージモジュール,WiFi,BLE(Bluetooh low Energy),Zigbeeなとをサポートするネットワークモジュールのサンプル出荷を発表しました。

  MoChiモジュール間の接続はARMのAXIをシリアル化して8Gbit/sのリンクに載せたもので,1本でも1GB/sのバンド幅があるので,モバイル用のシステムの場合,殆どはこれで間に合うとのことです。もし,これで足りなければ,複数本を束ねることもできるようになっています。

  また,MarvellはFLC(Final Level Cache)と呼ぶ方式を提唱しており,AP806ではこの技術が使われています。FLCはCPUと同じパッケージに搭載する1〜4個のDRAMチップを最終レベルのキャッシュとして使い,メインメモリはFlashを使うという方式で,256MB〜2GBという巨大なキャッシュは高いヒット率を持ちこれで性能を稼ぎ,ビット単価の安いFlashで容量を稼ぐというアプローチです。

  Flash書き込み寿命が心配ですが,DRAMのキャッシュが大きく,ミス率が非常に小さいことと,3D Flashで書き込み寿命が改善されていること,コントローラの改良などで,携帯機器の使い方では大丈夫とのことです。

  そして,MoChiは,全部のモジュールを最新世代のテクノロジで作る必要は無く,CPUやGPUなどの高性能を要求されるモジュールは最新の16nm FinFETテクノロジを使っても,ストレージやネットワークのモジュールはコストの安い28nmテクノロジで,十分というようにチップコストを最適化することができます。また,分割されているのでチップは小さくなり,歩留まりが向上します。これらのコストダウン要因があるので,マルチチップのパッケージと組み立てのコストアップをカバーできるとしています。

  昔はワンチップにする方がコストが安かったのですが,ムーアの法則が曲がり角にきている現在では,これを見直すべきというMarvellのアプローチは注目されます。

4.MicrosoftがSurface Bookを発表

  2015年10月6日のEE Timesや他のメディアが,MicrosoftのSurface新製品の発表を報じています。コンバーティブルの13.5インチスクリーンを持つSurface BookはCore i5,あるいはi7を搭載しており,ゲームなどの用途にはNVIDIAのGPUを搭載できるという仕様で,Macbook Proに対抗できる仕様とのことです。

  Surface Pro 4タブレットはi5あるいはi7コアを搭載し,前世代のSurface Pro 3から30%の性能アップです。

  また,スマホではWindws10が走るLmina 950と950 XLを出しました。こちらは8コアのSnapdragon 808を搭載しています。そしてこれらのスマホはDisplay Dockをサポートしており,オフィスでは大きなスクリーンに表示させることができます。

  MicrosoftはAppleの戦略を真似て,Windowsとハードを一体化したビジネスを強化するようです。

5.Sonyが半導体ビジネスを分社

  2015年10月6日のEE Timesが,Sonyの半導体ビジネスの分社化について報じています。このニュースは当然,日本のメディアでも報じられています。

  Sonyのイメージングデバイスは世界でも市場シェアは約27%で,1位のシェアを誇るドル箱です。ソニーのイメージングデバイスビジネスを立ち上げた某氏は,稼いだ金を久多良木氏のゲームが浪費してしまうとぼやいて居られました。自動運転などで,CMOSイメージセンサーなどのイメージングデバイスの重要性は高まる方向で,分社化で意思決定が早まるのはビジネス的に有利ではないかと思われます。

  どうもディジタルチップの設計もIPを組み合わせるレゴやプラモデルに近づき,日本企業が強みを発揮できるのは本当の製造ノウハウを必要とする部品レベルになって来ています。その中でもSonyのイメージングデバイスは有望なテクノロジですから,頑張って戴きたいと思います。


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