最近の話題 2015年10月17日

1.DELLが$67BでEMCに買収提案

  2015年10月12日のHPC Wireが,DELLがEMCに対して$67.1Bで買収を提案し,事実上合意したと報じています。日経によると,より良い条件のオファーがあれば変わることもあると書かれていますが,日本円にして約8兆円の巨額の買収ですから,おいそれと対抗馬が現れるとは考えられません。

  DELLは元々はコンシューマ向けのPCの会社としてスタートしましたが,PCのマージンの低下から,最近では企業向けのサーバに力を入れています。一方,EMCはストレージの大手で,データセンタインフラであるサーバ仮想化のVMWareやストレージを管理するPivotalなどのを社内に持っています。また,暗号のRSAも持っています。従って,DELLがEMCを買収することにより,サーバとストレージを組み合わせたシステム提供のポジションが強化され,IBMやHPへの競合力が高まります。

  しかし,HPのWhitman CEOは,新会社は$60Bの借金を抱えることになり,利息だけでも$2.5B/年の負担で,その分,研究開発費を減らさざるを得ない。とコメントしています。

  PCが減り,一般の人はスマホを使い,処理はクラウドで行われるというトレンドであり,データセンタのサーバとストレージにフォーカスして,その分野での競争力を高めるというのは正しいと思いますが,GoogleやFacebookは大部分のサーバやストレージは自分で特注して安いメーカに作らせており,DELLやIBM,HPからは買っていません。もちろん,中規模かそれ以下のデータセンタでは,自社開発するほどのスタッフは無く,DELL,IBM,HPから買うという層は存在するのですが,FacebookのOpenComputeが浸透すると,そのようなマーケットは縮小して行く心配があると思います。

  DELLの後ろにはSilver Lakeが付いており,半分くらいの買収資金を負担するようですが,年間の売り上げが$80Bくらいになると予想されるDELL+EMCが,現在のDELLのように株式を上場しないプライベートな会社として存在できるのかどうかは分かりません。

2.Sandiskが身売りを検討中

  2015年10月14日のThe Registerが,Flashストレージの大手のSandiskが,身売りを検討中と報じています。Sandiskは東芝とパートナーを組んでおり,東芝をFabとしてFlashチップを作り,それをMicroSDなどとして販売したり,Flashを使う機器のメーカに販売したりというビジネスを行っています。また,Fusion IOを買収して企業向けのFlashストレージビジネスを強化するなどを行っています。

  2015年2Qの売り上げは$1.2B(1400億円)ですが,これは前年同期と比較すると24%減と不調です。このあたりが売却も一つの選択肢と考える理由と見られます。

  興味を示す買い手としては,HDD大手のWestern Digitalとメモリ大手のMicronの名前が挙がっています。

  しかし,Flashも製造しているMicronが買うことになると,現在Flashチップを供給している東芝はどうなってしまうのでしょうね。

3.AMDのHSAのキーマンのPhil Rogers氏がNVIDIAに移籍

  2015年10月14日のThe Registerが,AMDのHSAのキーマンでHSA Foundationの会長を務めていたPhil Rogers氏がライバルのNVIDIAに移籍し,コンピュートサーバ アーキテクトとしてオースチンで働くと報じています。

  Rogers氏は1994年にグラフィック会社のATIに入り,AMDのATI買収に伴ってAMDに移ったという経歴の持ち主で,最近まで,HSA Foundationの会長として活躍していました。ZenプロセサのアーキテクトのJim Keller氏が辞め,Phil Rogers氏がやめるというのはAMDにとっては痛手です。特にRogers氏の場合は,将棋と同じで対戦相手の駒として攻めてくるのですから大変です。

4.AMDがアジアのバックエンドFabを南通富士通とのJVに売却

  2015年10月16日のEE Timesが,AMDがマレーシアと中国に持っている半導体チップの試験とパッケージングの工場の株式を南通富士通とのJoint Ventureに売却すると報じています。

  これによりAMDは$320Mの現金と,Penang,Malaysia,蘇州に工場を持つ,JVの15%の株を持つと書かれています。また,売却されるAMDの工場の1700名の従業員はJVで引き続き雇用されるとのことです。

  AMDはフロントエンドをGlobal Foundriesに売却したのですが,まだ,バックエンドの工場を持っていたとは知りませんでした。PCチップの売り上げが減少し,余ったAPUチップは今後売れることは見込まれないので$65Mの損失を計上するなど,今四半期は$197Mの赤字のAMDとしては,お金に替えるのは当然とも言えます。

  また,これも半導体のFabビジネスから撤退方向の富士通が中国にバックエンドの会社を持っているとは知りませんでした。

5.米国特許庁の支所がシリコンバレーにオープン

  2015年10月15日のEE Timesが,米国特許庁(US Patent and Trademark Office;USPTO)の支所がシリコンバレーにオープンしたと報じています。シリコンバレーからの特許出願は全米の出願の10%を占めるとのことで,シリコンバレー支所は,80名の審査官と20名の判事を置くとのことです。

  USPTOは56万6000件のバックログを抱え,特許申請から許可までの期間が平均26.7ヵ月という現状を20ヵ月以下にすることを目標としていいます。

6.AppleのA7プロセサがウィスコンシン大の特許侵害で最大$862Mの支払い

  2015年10月14日のThe Registerが,ウィスコンシン州マディソンの地裁で,AppleのiPhone 5などに使われているA7プロセサが米国特許5,781,752を侵害しているという判決が出されたと報じています。裁判長は,特許侵害の賠償額として,最大$862Mという額を示しているとのことです。

  この特許の発明者はウィスコンシン大のGurinda Sohi教授等で,Sohi先生はコンピュータアーキテクチャの分野では超有名な先生です。

  特許を読むのは大変なので,図を眺めただけですが,投機的なメモリアクセスのハンドリングの特許です。

7.クリスティーズでApple 1を競売

  2015年10月16日のThe Registerが,ChristiesのオンラインサイトでApple 1が競売に掛けられると報じています。最低入札価格は24万ポンドで,落札価格は30万ポンド(約5500万円)から50万ポンド(約9200万円)と見られるとのことです。このApple 1が最後に動作したのは2005年で,現在,動作するかどうかは不明とのことです。

  また,ドイツ軍の暗号器のEnigmaも競売に掛けられ,こちらの最低入札価格は6万ポンドとなっています。

  入札の締め切りは10月29日となっています。興味のある方はChristiesのサイトを覗いてみて下さい。


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