最近の話題 2015年10月24日

1.Western DigialがSandiskを買収

  先週の話題で,Sandiskが身売りを検討中という話題を紹介しましたが,2015年10月21日にWestern DigitalがSandiskを買収することが発表されました。

  Western Digitalは,中国の紫光集団の子会社のUnisplendour社からの投資を受けるという話があり,このSandiskの買収の前に投資が実現していれば,Sandiskの1株につき$85.1の現金とWestern Digital株を0.0176株。それまでに投資が実現していない場合は,現金$67.5と0.2387株という条件で,Sandiskの全株を取得します。買収総額は,約$19B(2兆3000億円)となります。

  Western Digitalはハードディスクの大手で,SandiskはNAND Flashなどの大手ということで,補完関係にあり,殆ど製品の重複はありません。

  また,Sandiskはこれまで15年に亘って東芝とパートナーを組み,東芝の四日市工場にも投資してJoint Ventureという関係を築いています。この関係は維持され,JVは東芝とWDのジョイントとなり,東芝はFlashチップをWDに納入するということで,協力関係は変わらないようです。

  新会社のCEOにはWDのCEOのSteve Milligan氏が就任し,SandiskのCEOのSanjay Mehrotra氏は取締役として新WDに参加すると見られています。

2.Lam ResearchとKLA-Tencorが合併計画を発表

  2015年10月21日のEE Timesが,Lam ResearchとKLA-Tencorが合併するという計画を発表したと報じています。一般にはなじみの薄い会社ですが,Lam Researchは半導体の成膜,エッチングなどの製造装置のメーカーで,KLA-Tencorは加工された半導体の仕上がり寸法の測定や検査関係の装置のメーカーです。プロセスの途中で,測定を行い,ずれがあれば次の工程でそれを補正するようなフィードバックを掛けるという造り方が普通であり,両社の製品はペアで使われるという感じで,両社が合併すると,半導体産業の微細加工の技術を進歩させる能力が強化されると予想されます。

  合併という発表ですが,資本の面では,Lam ResearchがKLA-Tencorを買収する形で,KLAの1株に付き,$32とLam Researchの株0.5株を支払って,KLAの全株を買収するということになります。これは1株,おおよそ$67.02相当で,KLAを$10.6B(約1兆3000億円)で買収することになります。両社の役員会は,この条件での合併を承認していますが,株主と当局の承認を得る必要があります。

  しかし,Applied MaterialsとTokyo Electornの合併は,競争を制限するということから,米国と中国の当局から反対されて潰れており,今回のLam-KLAの合併が当局の承認が得られるかどうかは分かりません。

  一方,この合併が成功すれば,Lam-KLAの売り上げは,Applied Materialsと並び,半導体製造装置業界でのトップを争うことになります。

3.Intelが大連市の工場で3D NAND Flashの製造を発表

  2015年10月22日のThe Registerが,Intelが中国の大連のFabでの3D NANDチップの製造について報じています。大連工場は,現在は65nmテクノロジを使うロジックチップを作っているのですが,この工場に最大$5.5Bを投じて,3D NAND Flashの製造ができる工場に転換します。そして,更には,3D XPoint Memoryについても,この工場で製造する計画です。

  半導体工場ができれば,雇用や,税収が見込めるので,好条件を出して誘致するのは,世界中,どこでも普通ですが,中国は,一時はMicronに買収を持ちかけたように,最先端のNVRAMの製造能力の保有に強い関心を持っていると見られます。従って,雇用や税収に加えて,国家レベルの技術獲得というモチベーションもあるので,Intelの大連工場の3D NAND FlashやXPoint Memory製造への転換にあたっても,相当な好条件を提示したのではないかと見られています。

 この工場が稼働し,3D NAND Flashの量産が始まるのは2016年の後半とのことです。

  Intelはこれらの3D NAND FlashやXPointメモリをMicronとの合弁のIMFT( Intel Micron Flash Technologies)で作ると見られていたのですが,この大連工場はIMFTではなく,Intelの工場となるようで,Micronとの競合が出てくることになります。

4.PEZYの齊藤社長が日本イノベーター大賞を受賞

  2015年10月22日の日経が,日経BP社の選ぶ,「産業界で活躍し,独創的なアイデアや技術で世界に通じる新しい価値を創り出した人材」を表彰する第14回「日本イノベーター大賞」の受賞者として,PEZY/ExaScalerの齊藤氏を選んだと報じています。

  PEZY/ExaScalerは,今年7月のISCで発表されたスパコンの性能/電力を競うGreen500において,1位から3位までを独占したスパコンを開発した会社で,齊藤氏はPEZYの社長,ExaScaler1の会長を務め,これらのスパコンの開発を主導したした人物です。

  表彰式は11月27日にコンラッド東京で行われるとのことです。

5.サーバ用の新ベンチマーク ScaleMarkが登場

  2015年10月20日のEE Timesが,来月に開催されるARM Tech Conで,ScaleMarkというサーバ向けのベンチマークプログラムが発表されると報じています。

  現在のデータセンタでは,小規模なサーバを多数使用して分散処理を行うという使い方が多いのですが,これまでのSpecベンチマークなどは,このようなスケールアウト型の処理の性能を測定するには向いていない。ScaleMarkは,CPUだけでなく,メモリやディスクも含めたシステム全体の性能を測定するとのことです。一方,Cloud SuiteやGoogle Perf Kitはスケールアウト型のシステムの性能を測定しますが,結果の再現性が良くないという問題があるとのことです。

  ScaleMarkは,最初のテストプログラムとしてmemcachedを評価中で,media streamingのプログラムも11月にはリリースされる予定と書かれています。memcachedはFacebookの使用状態から抽出したデータを使うとのことで,media stremingは独自のプログラムを開発しますが,NetflixやYoutubeの使い方と似たものになるとのことです。測定は最大10msの応答時間に収まる状態でのスループットを計測します。ScaleMarkを開発するEEMBCのMarkus Levy氏は,単にスループットだけではなく,価格や消費電力なども考慮しないと,全貌が分からないと述べていますが,具体的にどのように評価されるのかは不明です。

6.DDNがOmni-Path対応製品を発表

  2015年10月22日のHPC Wireが,Data Direct NetworksのOmni-Path対応のストレージ製品の発表を報じています。DDNはスパコン分野での高性能ストレージのトップメーカーですが,これまでの製品は,スパコンでは標準的なInfiniBand接続をサポートしていました。

  Omni-PathはIntelが開発したInfiniBand対抗のネットワークで,MellanoxのIBスイッチチップが36ポートであるのに対して,IntelのOmni-Pathスイッチチップは48ポートとポート数が多く,その分必要なスイッチの数が減るので,コストが下がり,スイッチ段数も減って通信遅延が減るというメリットがあります。

  DDNは,業界で初めて,このOmni-Path接続をサポートするストレージ製品を発表しました。また,SSDを使うDDN Infinite Memory Engineという技術を使ってスループットを改善し,これらの合計で,他社製品と比較するとスループットあたりのコストは,もっとも良いケースでは1/10と言っています。

7.Appleの特許侵害に$234Mの損害賠償との判決

  先週の話題で,「AppleのA7プロセサがウィスコンシン大の特許侵害で最大$862Mの支払い」という話題を紹介しましたが,2015年10月19日のEE Timesが,Wisconsin大の損害額は$234Mという判決が出されたと報じています。

  地裁レベルの判決ですから,Appleが控訴する可能性がありますが,先に訴えられたIntelは法定外で和解しており,Appleも和解という途を選ぶ可能性もあります。


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