最近の話題 2015年10月31日

1.東芝がイメージデバイスのファブをSonyに売却

  2015年10月30日のEE Timesが,東芝がイメージデバイスの製造工場をSonyに売却するMOU(Memorandum of Understanding)に署名したと報じています。東芝は,粉飾決算のスキャンダルで,多くの不採算事業があることが明らかとなり,リストラを行っていますが,その一環として大分工場のイメージデバイスを製造する300mmファブをSonyに売却することになったというものです。

  売却金額は約20億円と報じられています。また,これにより1100人の雇用に影響がでることになりますが,どのようになるのかについては発表されていません。

2.BitFuryが40MWの巨大浸漬液冷データセンターを建設

  2015年10月27日のHPC WireがBitFury社の巨大な浸漬液冷データセンターの建設を報じています。BitFuryはビットコインの採掘関係では世界の最大手で,ジョージア(旧グルジア)とアイスランドにデータセンターをもっていますが,それを更に大規模にしたセンターをジョージアに建設するとのことです。このデーターセンターの第1期の消費電力は40MWで,PUEは1.02になるとのことです。

  冷媒は,沸騰温度が61℃の3MのNOVEC7100を使い,浸漬したLSI等の発熱で冷媒が沸騰して蒸発で熱を奪い,気化した冷媒を冷却水を通したコイルで冷やして液体となったNOVECが滴り落ちるという循環をさせています。冷却水の循環にはポンプが必要と思われますが,冷媒の循環はLSIの発熱で行われるので,この2フェーズ(気相と液相)の冷却はPUE的には効率の良い冷却です。

  問題は,気相を使うので,装置を密閉する必要があり,保守等がやり難いという点です。

  今年1月にBitFuryが,浸漬液冷のシステムを開発,販売するAllied Contorol社を買収してしまったので,ビットコインのマイニング用のASICの開発から浸漬液冷までBitFuryの社内で手掛けているということになっています。

3.Oracleが5種のSPARCサーバを発表

  2015年10月28日のEE Timesが,サンフランシスコで開催されたOracle Open Worldでの5種のSPARCサーバの発表を報じています。5機種ともに,Oracleが2014年8月のHot Chips 26で発表したM7プロセサを使っています。

  M7プロセサについては,2014年8月30日の話題で紹介していますが,32コア×8スレッドのプロセサで,8チップまで専用のコヒーレンスリンクで直結してSMPを作ることができるようになっています。今回発表の最上位のサーバは16プロセサで,拙著のマイナビの記事で紹介したようにスイッチASICを追加して16チップのシステムを実現していると考えられます。

  今回発表されたのは,T7-1,T7-2,T7-4というラックマウントタイプのサーバとM7-8,M7-16というラックに入ったサーバです。-4のような表記はプロセサのチップ数を表しており,T7-1は1チップで32コア,256スレッドで256GBのメモリを搭載し,最上位のM7-16は8チップで512コア,4096スレッド,8TBのメモリを搭載できます。

  世の中,クラウドの使用が増えていますが,Amazon,Google,Microsoftなどと比べると,パブリッククラウドでは乗り遅れた感のOracleですが,データベースを始めビジネスソフトに強みをもつOracleは,信頼度やセキュリティの面で差別化した,企業の基幹業務向けのクラウドを提供しようとしているようです。この分野は,利益率は高いかも知れませんが,規模の点ではそれほど大きくはないと思われます。

  そして,自前のSPARCサーバだけでなく,Intelと連携してx86サーバでも同様なサービスを提供しようとしていると,EE Timesは書いています。しかし,Oracleは以前からx86サーバも発売しており,x86サーバのクラウドに関してIntelがどのような役割を担うのかはEE timesの記事を読んでも良く分かりません。

4.ARMがインタコネクトをアップグレード

  2015年10月27日のSemiAccurateが,ARMのCCI-550の発表を報じています。CCIはスマホなどの中規模SoC向けのチップ内インタコネクトで,コヒーレンシをサポートしています。現在は,CCI-500が使われていますが,CCI550ではACEと呼ぶプロセサコアやGPUを接続するポート数が4から6に増加し,メモリコントローラの接続も4から6に増加しています。

  メモリコントローラは,現在のDMC-400の後継のDMC-500が発表されました。DMC-500はLPDDR4-4267をサポートし,6チャネル化と相まって,50GB/sとメモリバンド幅が60%増加しています。また,レーテンシも25%短縮されているそうです。

  ACE 1ポートで4コアのユニットがサポートできるので,プロセサについては従来の4ポートでも十分なのですが,今回はMimirと呼ぶコヒーレンシを持つ新GPUが登場し,接続するプロセサが増えることからポートが増やされたと思われます。なお,Mimirは北欧神話に出てくる神様

  そして,CCI-550ではスヌープフィルタがサポートされ,コヒーレンシトラフィックを減らして,バスの飽和を防ぎ,スヌープ電力を減らす設計になっています。しかし,コヒーレンシ維持のためにスヌープ系を常に動かしていると電力を消費してしまうので,オフにする機能があるとのことです。しばらくGPUを使わないということが分かっている場合は,GPUのコヒーレンシをオフにして電力を節約するような使い方を意図していると思われます。

  CCI-550とDMC-500は既に大手顧客には提供されているとのことですが,これらを使った製品が市場に出てくるのは2016年の遅い時期になると見られます。

inserted by FC2 system