最近の話題 2015年11月21日

1.中国が大躍進のTop500

  今回,Top500の上位5位までは前回と変化がなく,Top10でも新顔は6位のTrinityと前回23位からアップグレードされて8位となったHezel Henの2システムだけとなっています,

  これを見ると,今回もTop500に大きな変化が無いと思ってしまうのですが,実は中国の大躍進という大きな変化があります。今回,Top500に新顔として登録されたシステムは135システムあるのですが,そのうちの90システムが中国のシステムとなっています。

  しかし,どの分野で使用されているかを示すSegmentを見ますと,中国のシステムは,もちろんGovernment,Research,Academicも有りますが,大部分がIndustryとなっています。しかし,このところの経済状況からみて,中国の企業が大量にスパコンを導入するとは考えにくいことです。

  Sugon(曙光)の5システムは,今回のTop500で初登場ですが,設置は2013年〜2014年になっており,既に設置されていたシステムを新規に登録することにしたようです。その他のシステムは2015年の設置ということになっていますが,Xeon E5-2600のv2を使っているシステムもかなりあり,最近の設置ばかりではないと思われます。

  推測ですが,国威発揚のため,既設のシステムのHPL性能の測定とTop500への登録を推進したのではないかと思われます。

  Google,Microsoft,Amazonなどのデータセンタが仕事を休んでHPL性能の測定を行うことは考えられませんし,トヨタなどの大企業が衝突解析を止めてHPL性能の測定を行うことも考えられませんが,中国の場合は,政府の意向がより強く働くので実現できたのではないでしょうか?

2.Green500,Graph500

  Green500は前回の結果の横滑りで,ExaScaler/PEZYが開発し,理研の和光に設置されている菖蒲が1位を獲得しました。2位は東工大のTSUBAME-KFCで,GPUをK80にアップグレードして電力効率を向上しています。そして,3位は前々回の1位のドイツのL-CSCです。

  前回の2位,3位のExaScaler/PEZYのシステムは,上記の中国の大躍進で,Top500落ちになってしまい,Green500には入れずにLittleGreen500に回されることになってしまいました。

  Graph500は,前回スコアの横滑りで京コンピュータが獲得しました。

3.マイナビの開幕記事の訂正

  ここで,マイナビの記事の訂正を行うのも変ですが,できるだけ間違いが広がるのを避けたいと思いますので,ここで訂正させて戴きます。展示の中にKorea(4)とRepublic of Korea(1)があり,後者は北朝鮮ではないかと書きましたが,Republic of Koriaは韓国(大韓民国)で,同じ国で2種類の英語表記が出てきたので,誤解してしまいました。この間違いは,神戸大の小柳先生に教えて戴きました。

  なお,北朝鮮はDemocratic People's Republic of Koreaで,民主的な人たちの国であることを忘れておりました。両国の国民の方々にも,お詫びいたします。

  別件ですが,SC15の参加者は12903人と発表されました。

4.キルビーさんのICとノーベル賞のメダルを見てきました

  11月20日の午前中でSC15が終わったので,Bullock Texas State History Museumに行ってきました。昔はメキシコ領だったテキサスが独立し,現在に至るまでの歴史を展示している博物館で,テキサスインスツルメント社で働いていたJack Kilby氏が作った世界初の集積回路と,集積回路の発明で2000年に受賞したノーベル賞の金メダルが展示されているのを見てきました。テキサスインスツルメント社の寄贈と書かれており,本物のメダルと思われます。

  これが展示されていることは知らずに行ったのですが,この業界に関係のある私としては,感激でした。ただし,科学技術的な展示物は,これ以外は,アポロ11が月面に着陸したときに”Heuston, Eagle has landed”と呼びかけたヒューストンの管制卓の一部がある程度です。

  また,日本ではアラモの戦いというと,戦死したデビークロケットやボウイナイフのジェームズボウイの方が知られていますが,全然,出てきませんでした。

5.ON SemiがFairchildを$2.4Bで買収

  2015年11月18日のEE Timesが,ON Semiconductor CorpがFairchild Semiconductor International Inc. を約$2.4Bで買収すると報じています。

  ON SemiはMotorolaの半導体部門が分離して設立された会社で,Fairchildはショックレー研究所で反乱を起こしたノイス氏(後にIntelを創立)らが中心となった草分けの会社で,どちらも半導体の歴史の上ではビッグネームですが,このところは,あまりパッとしません。しかし,この2社が一緒になると,パワー半導体の分野では第2位となり,自動車向けの半導体に強い会社になるとのことです。

  Motorolaは,もともとは無線機の会社で,カーラジオも作っており,そのために半導体にも進出して,32bitマイクロプロセサの68000シリーズを作っていたころはIntelと張り合っていたのですが,時代は変わりましたね。なお,ON SemiはMotorolaのディスクリートやアナログ半導体の部門を分社化したもので,マイクロプロセサなどは,ON Semiより後にFree Scaleとして分社化され,現在のMotorolaは半導体を作っていません。

6.PEZYがImaginationの64bitアーキのWarriorコアを採用

  2015年11月16日に,PEZYコンピューティングは,同社の次世代のメニーコアプロセサであるPEZY-SC2に64bitのMIPSアーキテクチャのWarriorコアを採用すると発表しました。

  現在のPEZY-SCは独自アーキの1024コアのプロセサですが,これらのコアの制御用にARMコアも集積しています。これに対して,PEZY-SC2では独自アーキコアを4096個に増加し,これらのコアを動かすプロセサとしてMIPS64コアを採用するとのことです。


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