最近の話題 2015年12月12日

1.D-Wave 2XはCPUコアより1億倍高速

  2015年12月9日のThe Registerが,Googleの研究者が,D-Wave 2xはシングルコアの1億倍高速という結果を出したと報じています。

  GoogleはNASAと一緒にD Wave 2xマシンを購入し,その有効性を研究してきました。このほど,Simulated AnnealingとQuantum Monte Carloの問題を解く性能が,シングルコアCPUでソフトで解くのに比べ,1億倍高速という結果を得て,論文を発表したと報じています。

  テストに使った問題は,ミニマムが薄い高いバリアで隔てられているというもので,量子アニーリングで薄いバリアをトンネル効果で突き抜けられれば早く最適解を見つけられますが,トンネル効果のないSimulated Annealingでは難しい問題です。

  その意味ではD-Waveに有利な問題と言えると思いますが,一方,難しい問題が大幅に速く解けるという方が意味があるという見方もできます。GoogleのResearch Blogに論文の要約が載っています。これを見る限りはD-Wave 2Xは有効であるように見えますが,今回は,作られたテストケースの結果で,実問題を色々と解いてみて,実用的に意味があるかどうかを見極めるのが次のステップかと思います。

  D-Waveシンパの人の論文ですが,D-Waveには追い風と思います。

2.Zeno Semiconductor社がIEDMで1TR SRAMを発表

  2015年12月10日のEE Timesが,Zeno SemiconductorのIEDMでの1TRのSRAMの発表を報じています。セルはMOS Transistor 1個と,2個の寄生NPNバイポーラTrで構成されます。寄生バイポーラは,MOS Trのソースあるいはドレインの拡散をエミッタとし,P-wellをベース,P-wellを囲むN-wellを共通のコレクタとして形成されるもので,本来のN-MOSに寄生して自動的に作られるもので,面積が増えたりすることはありません。

  結果として,28nmプロセスで0.025um2でセルが作れ,これは6Trの通常のSRAMセルが0.127um2であるのと比較すると1/5の面積です。10nmのFinFETで作られた6Trセルが0.040um2であるのと比べても37%小さいことになります。

  N-MOSのソースがソース線,ゲートがワード線,ドレインがビット線とのことですが,記事には,R/Wのシーケンスや各端子の電位が書かれていないのでイマイチ動作がわかりませんが,P-wellの電位が0Vになっているのと,寄生トランジスタのB-E接合がソース電流が殆ど流れない程度にフォワードバイアスされているかで状態を記憶しています。

  この1Trでも最小サイズのSRAMとして動作するのですが,寄生Trのコレクタと電源の間に電源を切るN-MOSを入れるとセル面積は70%程度大きくなりますが,アクセス速度は40%改善できるとのことです。

  この寄生トランジスタはプレナープロセスでは自動的にできてしまいますが,FDSOIやFinFETではうまく作れないと思います。FinFETならFinの下の部分の作り方を工夫すれば出来るのかもしれませんが…

3.Facebookが次世代の機械学習サーバをオープンソース公開

  2015年12月11日のThe Inquirerが,Big Surのコードネームで開発してきた機械学習用のサーバをOpen Compute Projectでメンバー会社にも公開すると報じています。このサーバは8台のNVIDIA M40 GPUを搭載することができ,CPUに比べて高速の学習が可能になります。

  また,このサーバは保守性に配慮して作られており,CPUの交換にはドライバーが必要ですが,それ以外の部品はドライバー不要で,故障頻度が高いHDDやDIMMなどは数秒で交換できるとのことです。

4.中国の企業がFairchildの買収に名乗り

  11月21日の話題で,ON Semiが$2.4BでFairchildを買収と書いたのですが,2015年12月9日のEE Timesが,中国政府がバックについている China Resources Holdings Co.とHua Capital Management Ltd.を含むコンソーシアムが,約2.46Bという買収提案を出したと報じています。

5.IARPAが量子コンピュータの研究をIBMに委託

  2015年12月11日のEE Timesが,IARPA(Intelligence Advanced Research Projects Activity)が,汎用量子コンピュータの構成部品の進歩の研究をIBMに委託すると報じています。具体的に何を研究するのか,受託金額はいくらかなどのについては明らかにされていません。

  DARPAは直接戦う方の技術の研究を推進しますが,IARPAはスパイなどの情報収集や暗号解読などの技術の研究を推進する組織です。汎用量子コンピュータができれば暗号解読の強力な武器になります。

  IBMは汎用量子コンピュータができれば,ガンの治療薬の探索,AIの分野での機械学習などの大幅な改善,サイバーセキュリティーなどの分野で大きな進歩が達成できると考えているとのことです。


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