最近の話題 2015年12月19日

1.BrainChip CTOがニューロプロセサを説明

  2015年12月16日のEE Timesが,BrainChipsのCTO兼Interim CEOのPeter van der Made氏が,BrainChips社のニューロチップの中身について語ったという記事を載せています。

  SNAP(Spiking Neuron Adaptive Processor)と呼ぶ,同社のニューロンチップは,1チップに1万個のニューロンと5Mシナプスを集積することが出来ると述べています。ニューロチップとしてはIBMのTrueNorthが有名ですが,TrueNorthは4096コアを256時分割で使用して,ワンチップで論理的に1Mニューロンを実現しているのですが,同社のSNAPは時分割を使っていないので,大幅に速いとのことです。

  大規模なニューロシステムでは毎秒どれだけのスパイクを処理できるかというスループットが問題で,処理をマルチプレクスするかどうかは第一義的には性能に関係ない筈で,ワンチップの物理的なニューロン数がTrueNorthは4096,SNAPは最大で1万ということで,スループットには大差はないのではないかと思います。

  しかし,Spike Time Dependent Plasticityという学習方法では定常的にメモリをアクセスするので,全てのメモリが分散されているという方式の方が学習が容易と述べています。このような実装上の優劣はあると思います。

  SNAP64と呼ぶアーキテクチャでは同一チップ上の64K個のニューロンをアクセスすることができ,スタックすれば2**48=256Bニューロンと接続できるとのことです。ただし,現在は64Kニューロンはワンチップには集積できませんし,スタックで64K×64K個のチップをどうやって繋ぐのかは分かりません。

  現在は,SNAP64チップは,複数個のFPGAで実現しているようです。

2.続 1TR SRAM

  2015年12月17日のPC Watchに福田さんが,IEDMで発表された1TR SRAMについて記事を書いておられます。先週の話題で,どう動くのか良く分からないと書いたのですが,福田さんの記事で,読み出し,書き込み時の各端子の電圧が書かれており,少し分かってきました。

  福田さんの記事によると,NPNトランジスタのコレクタとなる埋め込みN-Wellの電位は2Vとし,"1"の書き込みはWLとBLは0.8V,SLは0Vで,"0"の書き込みはWLとSLは-0.5V,BLは0Vとし,読み出しはWLを0.7V,BLは0.2V,SLは0Vとなっています。そして非選択のセルは,WL,BL,SLともに0Vにしておきます。

  "1"を書き込んだ状態ではフローティングP-wellの電位は0.6V程度,"0"を書き込んだ状態では0V程度とのことです。

  "1"の書き込みは,BL側のトランジスタはエミッタが0.8Vですから,BE接合は逆バイアスで寄生NPNトランジスタはオフです。WLが0.8Vなので,P-wellの電位は上がります。この時,SL側は0Vとなっていますが,WLが0.8VでNMOSがオンなのでBLからSLに無駄に電流が流れるのではないでしょうか?

  "0"の書き込みは,NMOSはオフで,SLが-0.5VですからBE接合は順バイアスで,P-wellのチャージが抜けて0V付近に落ち着くことは理解できます。しかし,非選択のワードではWLが-0.5Vではなく0Vという違いで,これでP-wellの電荷が十分に残るのでしょうか?

  読み出しはP-wellの電位が高い時はNMOSはオフで,P-wellの電位が0V程度の時はNMOSはオンになります。NMOSがオンで,BLが0.2Vであれば,SLには電圧がでます。

  SLについているセンス回路がどうなっているのか分からないので,まだ,理解が十分ではありませんが,まあ,動きそうな感じはします。しかし,電圧はかなりクリティカルな感じがしますし,あまり,動作が速そうな感じはしません。

  それから,福田さんは寄生バイポーラのコレクタであるCIをチャージインダクタと書かれていますが,チャージを注入するチャージインジェクタではないでしょうか?

3.TPCカウンシルがTPC-DS2.0とTPCx−Vを正式リリース

  2015年12月18日のThe Registerが,TPC−DS2.0とTPCx−Vベンチマークを正式にリリースしたと報じています。TPC-DS2.0はディシジョンサポート処理,TPCx−Vは仮想化されたデータベースの処理のベンチマークです。

  色々なベンチマークが作られていますが,これらは,企業のディシジョンサポート処理処理や仮想化したデータベース処理を本物と近い大規模な環境で評価するベンチマークです。従って,ストレージなども含んだ実際のシステム性能が測れますし,システムのコストも開示されますので,性能とコストを考えて,どのシステムを買うかという判断ができるようになっています。

4.ジャパンディスプレイがシャープの液晶事業を買収提案か

  2015年12月19日の日経新聞が,ジャパンディスプレイ(JDI)が経営不振のシャープに対して,液晶事業の買収を提案すると報じています。年明けから交渉に入り,来春までに合意を目指すとのことです。シャープの先端技術を担う亀山工場の設備や技術者を中心に取得する方針だそうです。買収額は500億円以上で,多ければ1000億円に達する可能性

  ジャパンディスプレイ自体が日立,東芝,ソニーなどの液晶事業を統合した会社で,シャープが加わるとオールjyパンということになります。しかし,韓国,台湾が強く,中国も投資を増やして追い上げており,競争はきびしそうです。DRAMの二の舞にならないよう,頑張って戴きたいものです。



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