最近の話題 2016年1月9日

1.NVIDIAがPascal GPUを使うDRIVE PX2を発表

  2016年1月3日にNVIDIAは,CESにおいてDRIVE PX2を発表しました。

  これまでのDrive PXは,28nmプロセスで作られたTegra X1を2個搭載していましたが,Drive PX2は16nmFinFETプロセスで作られたPascalアーキテクチャのGPUを2個搭載しています。Tegra X1は公称1TFflopsとなっていますが,Drive PX2は8TFlopsと言っており,1個で4TFlopsと性能が4倍に向上しています。この性能は16bit精度の浮動小数点演算かと思われますが,大した高性能です。

  加えて,Deep Learningの処理用の命令を追加しており,Drive PX2は24 Deep Learning TOPSと称しています。このPascal GPUはドーターボードに搭載されているように見えます。また,パッケージに入っているのは,このチップだけのようで,HBM2などの3D積層の高バンド幅メモリは使われていないと思われます。

  Drive PX2のボードの裏面には2個のNVIDIAのチップが搭載されており,こちらは,NVIDIAのリリースで次世代型Tegraプロセサと呼んでいるチップのようです。このチップにどの程度のGPUが搭載され,Pascalチップとの使い分けがどうなっているのかは良く分かりません。また,CPUとして8コアのA57と4コアのDenverを搭載と書かれていますが,これは次世代型Tegraに入っているのでしょうね。

  処理能力としてはAlexnetの画像認識で,Titan Xでは450イメージ/秒のところをDrive PX2では2800イメージ/秒と6倍強に性能が向上しています。

  Drive PX2のボードの消費電力は250Wとなっており,Pascal GPUが付いているサイドには大きな液冷のコールドヘッドが付いています。液冷は良いのですが,車のエンジンの冷却水では温度が高すぎると思うので,専用のラジエータと冷却水(水かどうかは不明ですが)ポンプなどで構成された2次冷却ループを持っているのでしょうね。

2.AMDが新GPU Polarisをプレビュー

  2016年1月4日のEE Timesが,AMDのPolarisの発表を報じています。14nmのFinFETプロセスで作られ,消費電力は86Wとのことです。これは現在のハイエンドGPUの152Wであるのに対して約57%で,性能/電力をほぼ倍増しています。14nm FinFETプロセスの採用に加えて,クロックゲートとパワーゲートの強化を行ったと書かれています。

  そして,GCN 4.0アーキテクチャと新世代アーキテクチャであることを強調していますが,改良点としては, instruction pre-fetch engine,memory compression,primitive discard accelerator, scheduleとshaderの効率改善と書かれており,あちこちを改良したという感じです。アナリストのDavid Kanter氏は,ゲーム機のマーケットをほぼ独占しているAMDとしては,最適化のやり直しになるようなアーキテクチャの大きな変更は取れないので,漸進的な改良は当然の方向との見方をしています。

  AMDはHBMを使うRadeon R9 Fury GPUを販売していますが,このPolarisのメモリがどうなるかについては,今回の発表では触れられませんでした。AMDの広報は,現在はPolarisにGDDR5メモリを付けた形でデモを行っていると述べ,現状ではHBMのコストは高いので,全てのセグメントで使うのには適していないと述べています。

3.RISC-Vの実用化が活発に

  2016年1月7日のEE Timesが,RISC-Vの第3回Workshopに関連する記事を載せています。RISC-V(リスク-ファイブ)はUC.BerkeleyのKrste Asanović先生らが教育用に始めた開発プロジェクトですが,ARMに対抗するライセンスフリーのプロセサコアとして実用化しようという動きが活発化しており,チップだけでなく命令シミュレータ,デバッガ,LLVMコンパイラなどの開発に欠かせないツールの開発も行われています。そしてGoogleやHPEもソフトを移植して貢献しているとのことで,大学だけでなく,企業からの貢献も始まっているようです。

  ケンブリッジ大が開発中のLowRISCチップは28nmプロセスで9mm2のチップで,今年中にテープアウトする予定です。4個のRocktコアと512KBのL2$と32bitのLPDDR3インタフェースを内蔵し,クロックは1GHz以上とのことです。

  OSの世界ではATTがライセンスしていたUnixに替わってLinuxが台頭し,多くの企業が貢献して実用化することで,主流になっています。ARMコアのライセンスも安くはないので,フリーのコアで済むようになれば,移行が起こる可能性があります。特に,IoTの小さなチップなどが増えると,ARMコアでは,ライセンス料が膨大になってしまいます。スパコンではノード数が多いのでOSのライセンスを払うと,費用が馬鹿になりませんから,フリーのLinuxで,それもRedhatなどのサポート料を取られるOSでなく,フリーのCentOSが多く使われています。

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