最近の話題 2016年2月13日

1.重力波の観測に成功

  2016年2月11日にLIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)の研究グループが重力波の観測に成功したと発表しました。アインシュタインが一般相対性理論から,その存在を予言していましたが,効果があまりにも小さいので,観測は困難と思っていました。

  LIGOは,約3000km離れたワシントン州のHanfordとルイジアナ州のLivingstonの2か所に超高感度のレーザ干渉計を作り,重力波の観測に成功しました。それぞれの干渉計は4kmの直交する高真空の2本のパイプの中をレーザ光を400往復させ,直交する2つのレーザビームの到着時間の違いから空間のゆがみを検出します。

  改良型のAdvanced LIGOの検出精度は10-19mで,レーザの発信周波数安定度や出力安定度,パイプ内のガスの影響を除く高真空度(10-9torr),振動を除くアクティブやパッシブの除振装置などの改良でノイズを減らして,今回の検出に繋がったとのことです。

  検出した重力波は,太陽の29倍と36倍の質量の2つのブラックホールが合体する時に発生したものと見られています。この合体では太陽の3倍程度の質量に相当するエネルギーが重力波として放出されたと見られています。

  光では宇宙が晴れ上がったBig Bangの38万年後以降の状態しか観測できませんが,重力波が観測できるようになるとBig Bang直後の状態の観測が可能になり,宇宙生成の謎に迫れることになります。

2.NHTSAがGoogleの自動運転車のAIをDriverと認定

  自動運転の技術は急速に進歩していますが,カリフォルニア州では,法律的には人間のドライバが乗っており,緊急事態などの場合,操作を替われるようにハンドルやブレーキペダルを備える必要があると規定しています。これに対して,2016年2月10日のReutersが,NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration)がGoogleの質問状に対して,Googleの自動運転のAIは,米国の連邦法上はDriverと認められると回答したと報じています。

  NHTSAは全米の交通安全に関する監督官庁で,連邦法ではAIをドライバと認めたとしても,各州の法律が自動的にそれに倣うとは限りませんし,事故が起こった場合は,誰がどのように責任を取るのかは,全く別の議論が必要です。このように,今回のNHTSAの見解で自動運転車の実用化の障害が無くなったというわけではありませんが,AIがドライバと認められたことは,推進派にとっては大きな前進です。

  また,人間が運転免許を受けるには試験をパスする必要がありますが,AIに運転資格を与える場合,同じ試験で良いのか,同じでないとすると,どのような試験を課すべきかという問題もあります。

3.米国の2017年度R&D予算は4.2%増の$152.3B

  2016年2月9日にObama大統領は予算教書を発表しました。それによると,2017年度のR&D予算は$152,3Bで,2016年度と比較して4.2%の伸びとなっています。その中で国防関係のR&Dは$80B,非軍事のR&Dは$72.4Bとなっています。

  非軍事の$72.4Bの分野別の内訳は,NIHが$33.1B,NASAが$19.0B,NSFが$7.96B,NOAAが$6.0B,DOEのOffice of Scienceが$5.67Bなどが大口です。

  National Strategic Computing Initiativeには,DOEからの$285MとNSFからの$33Mがあてられるとのことです。

  STEM(Science,Tehcknology,Engineering,Math)の教育には$4Bが予算化されており,その中には25万人の教師のトレーシングなどが含まれています。

4.ARMがUMCの28HPCプロセスのPOPを発表

  2016年2月8日のSemiAccurateが。先週の,ARMがUMCの28HPCプロセスを使うPOPの発表を報じています。

  28nmプロセスは,ハイエンドから見ると,過去のプロセスですが,現実のスマホのマーケットからみると,主流のプロセスです。というのは,28nmプロセスは,同じ4コアのSoCが,先端の14/16nmプロセスの1/3のコストで作れるからです。

  一部のユーザはスマホのプロセサの性能を気にしますが,大部分のユーザはプロセサの性能は気にしません。しかし,値段を気にしないユーザは殆どいないでしょう。

  UMCはTSMCなどと比べると,先端プロセスの開発速度は劣りますが,その分を低価格でカバーしています。ということで,UMCの28HPCプロセスに最適化されたPOP(Process Optimization Package)のARMコアが提供されるのは,低価格スマホの世界では大きなメリットがあります。そして,IoTの分野でも性能はあまり要求されず,値段は大きな関心という使い方も多いと考えられます。

5.今年のARMベースのサーバと40Gbitネットワークの普及は?

  2016円2月9日のEE Timesが,調査会社のLinley Groupの予測を報じています。

  それによると,Applied Mircro,AMD,CaviumなどがARMベースのサーバ用SoCを出してきていますが,サーバ市場でのこれらの会社のシェアは合計でも5%に届かないと見ています。サーバ市場では,Google,Facebook,Amazon,Microsoftなどの大手のデータセンタが大きなシェアを持っており,これらの顧客を獲得することがシェア拡大には必要と見ています。中ではAmazonは,ARMチップ開発のスタートアップのAnnapurnaを買収し,潰れたCalxedaのエンジニアを多く採用しており,一部の用途かも知れませんが,ARMチップの採用の可能性が高いと見ています。

  40Gbitのネットワークは,今年は普及し始める年ですが,来年には25/50と100Gbit/sのチップが出始め,近い将来,こちらの方が主流になると見ています。


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