最近の話題 2016年2月20日

1.重力波の観測に成功したLIGOのコンピュータ

  2016年2月16日のHPC Wireが,LIGOのデータ処理を行ったコンピュータシステムについて書いています。このシステムはNor-Tech社がインテグレートしたもので,576計算ノードで,演算能力は7TFlops以上と書かれています。1ノ―ド12GFlops程度ですから,最新のCPUなら1コアで間に合います。メモリは1500GBと書かれていますので,ノードあたりでは3GB弱という計算になり,設置から,かなり時間が経っているシステムのようです。

  なお,このコンピュータシステムはLIGOの入力を処理するもので,2つのブラックホールの合体をシミュレーションして,発生する重力波を求めるというような処理には,別のスーパーコンピュータが使われると思われます。

  このシステムはFullertonにあるカリフォルニア州立大の計算センターに設置されており,ORCA(Orange County Relativity Cluster for Astronomy)という名前がつけられています。

2.重力波関係の補足

  牧野先生が「重力波検出の意義と今後の進展」という文章をWebで公開しておられます。これを見て,なぜ,合体したブラックホールの質量が分かるのか分かりました。また今後,どうなっていくのかについても分かりやすく書かれており,非常に参考になります。まだ,見ておられない方は,是非,ご一読を。

  重力波発見の記事で,某大手紙がMIT他と書いていましたが,LIGOのLaboratoryはCALTECH(California Institute of Technology)にあります。MITもLIGOの主要メンバーではありますが,挙げるなら,まず,CALTECHを挙げるべきだと思います。なお,CALTECHには数々のNASAのビッグミッションを成功に導いたジェット推進研究所(JPL)が置けれていることでも有名ですが,某大手紙の記者さんはご存じなかったのでしょうか。

3.Exa関係の米国予算

  先週の話題で,米国のR&D予算を紹介しましたが,その詳細を2016年2月16日のHPC Wireが報じています。それによると,2017年度のAdvanced Scientific Computingの研究予算は$663.18Bで,これは昨年より$42.18B(6.8%)の増加となっています。パーセンテージはともかく,5兆円を近い絶対額の増加は圧倒的です。

  大きな差異は,$112BのExascaleの研究やプロトタイプの開発費がなくなり,オバマ大統領が打ち出したEascale Computing Initiativeを実現するためのExascale Computing Projectに$154Bの予算が付いた点です。

  先週の話題では,R&D予算は$152.3Bとなっており,これと$663.18Bの関係は良く分かりません。

4.PCの退潮にもNVIDIAは増収

  2016年2月18日のThe Registerが,1月31日付けのNVIDIAの決算を報じています。それによると,今4半期のPC用グラフィックカードの売り上げは$810Mとなり,これは前年同期に比べて25.4%の増加です。全社の売上は$1.4Bで,前年同期比で12%増となっています。

  また,年間の売り上げは$5Bで昨年の$4.6Bから8.7%増となっています。しかし,利益は$614Mで昨年と比べると3%の低下です。リストラ費用$131Mやストックオプションなどの$212M支出があり,これが利益が下がった理由と思われます。

  PC用グラフィクスカードの売り上げ増には大型ゲームの登場に大きく助けられています。また,今後のバーチャルリアリティーの普及はNVIDIAへの追い風となることが期待されます。また,データセンタ系への売り上げは前年同期の$88Mから,今期は$97M,自動車系は前年同期の$56Mから,今期は$93Mに伸びており,まだ,絶対額は小さいものの将来が期待されます。



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