最近の話題 2016年3月19日

1.AlphaGoが4勝1敗でLee Se-dol 9段を降す

  先週,AlphaGoの3連勝まで紹介しましたが,13日の対戦は李9段が意地を見せて勝利。15日の最終戦は,AlphaGoが勝利して,結局,4勝1敗でAlphaGoの勝利に終わりました。人間も1勝はして面目を保ったというところですが,AlphaGoが世界トップレベルの強い棋士であることを示しました。

  勝った方には賞金100万ドルが出るのですが,AlphaGoのチームは福祉目的に寄付するとのことです。

2.TSMCの5nmプロセスまでのロードマップの発表

  2016年3月16日のEE Timesが,TSMCのロードマップについて報じています。

  TSMCのCo CEOのMark Liu氏によると,10nmプロセスと比較して,7nmプロセスはロジックの密度が1.63倍,速度が15-20%速く,あるいは同じ速度を35-40%少ない電力で実現できるとのことです。そして,この7nmプロセスは今から1年後にリスク量産を始めるとのことです。

  そして,7nm世代ではモバイル,HPC,IoT,自動車向けなどプロセスバリエーションを提供すると述べています。

  HPC向けのプロセスはモバイル向けよりも10-15%高速で,4GHzで動作するクロック分配系を持ち,L3キャッシュに最適化したSRAMコンパイラを提供します。

  そして,1200mm2を超えるシリコンインタポーザを提供します。TSMCは,16FF+プロセスで製造するCPUと2個のHBM2スタックを搭載するインタポーザを先月テープアウトしたとのことです。このシステムは今年の秋までに検証を完了する予定で,7nmプロセスのチップを搭載した大型インタポーザの量産は2018年の予定です。また,10nmや16nmプロセスのチップと4個のHBM2を搭載するものはより早い時期と言っています。

  7nmプロセスはArFの液浸スキャナを使用する予定で,最大では4重露光が必要とのことです。それでも達成できるピッチは20nm止まりで,それ以下のピッチのパターンを作るにはDAS(Direct Self Assembly)が必要とのことです。しかし,現状では,DASはウエファあたり1層につき平均5個の欠陥が出ており,まだ,改良が続けられているとのことです。

  また,EUVの評価も並行して行っています。EUVが使えるようになると,露光回数が減らせるだけでなく,パターン設計の自由度も改善されます。

  この記事から分かるように,10nmプロセスについては,殆ど情報がなく,今年に一部の顧客からアーリーテープアウトを受け付けるが,量産は来年になるという程度のことしか明らかにされませんでした。

  この発表を信じると,10nmの量産と7nmの量産時期の違いは1年あるかないかです。また,10nmに関しては,その詳細が発表されず,TSMCとしては7nmに重点を置いているように感じられます。

  この発表では,5nmプロセスの開発についても言及され,FinFETの使用は7nmまでで,その後はGeチャネルのトランジスタやGate-All-Around構造などを研究しているとのことです。

3.IntelがXeonとFPGAのArriaチップのコンボを発表

  2016年3月14日のThe Next PlatformがOpen Compute SummitでのIntelのCPUとFPGAを混載したパッケージの発表を報じています。発表と言っても製品ではなく,研究しているというレベルです。

  掲載された写真によると,15コアのBroadwellとArria 10 GXをマルチチップパッケージに入れています。そして両者をQPIで接続していると見られます。

  昨年,MicrosoftがFPGAを使ってWebデータセンターの処理を加速するシステムを発表しており,CPUにFPGAを付けるというのは,計算が比較的単純で,計算量が多い処理には有効であることが示されていますが,どのようにすれば,このような製品が受け入れられるかをリサーチしようとしていると思われます。

  CPUとFPGAをQPIで接続するのは,技術的には難しくないと思いますが,ユーザが必要とする各種の機能のFPGAプログラムのライブラリを揃え,機能を開発,デバグする開発キットなどを提供する必要があります。

4.Dropboxが500PBをAmazonから社内に移動

  ファイルのシェアなどにDropboxを使っていらっしゃる読者も多いと思いますが,DropboxはAmazonのS3システムに大部分のデータを格納していました。しかし,社内でMagic Pocketと呼ぶシステムを開発し,2014年からデータの移動を開始したとのことです。

 そして,2016年3月14日のThe Registerによると,昨年10月には,データの90%に相当する500PBをMagic Pocketに移動したとのことです。

  ExaByteのストレージシステムは,この規模で安定して動くという実績のあるオープンソースのシステムはなく,自社で開発する必要があるとのことです。そして,自社システムに切り替えることにより,性能を最適化することができ,コストも下がったとのことです。また,このシステムのデータ信頼性は99.9999999999%(12-9s)で,システムの可用性は99.99%以上とのことです。

  なお,インタネット経由のシステムでは,インタネット自体の故障もあるので,システムの可用性を99.99%以上に高めてもユーザの満足度は殆ど改善されません。

5.クラウドストレージは使えるのか?

  筆者は,これまでBuffaloのRAIDのNASにデータを格納し,NASをUSB接続のHDDでバックアップするという構成を使ってきました。しかし,Buffaloのカストマーサポートの対応が不満で,クラウドストレージへの乗り換えを検討していることは1月23日の話題に書きました。

  現在,取材した写真などと,趣味の落語のビデオや音源などを合計すると2TB近いデータがあり,これを保存し,かつ,安全に保管するというのがクラウドストレージの要件となります。仕様を調べると,現在,2TBのデータ容量が使えるのは,AcronisのクラウドとAmazon.comのUnlimitedのクラウドストレージです。1TBであれば,DropboxやOneDriveが使えますが,これらは調査していません。また,コストの点で,個人向けのサービスだけで,法人向けのサービスも調査対象にはしていません。

  バックアップの機能の点では,一番良さそうなのがAcronisのクラウド(年間約1万円で容量無制限)です。ということで,これを試用してみたのですが,バックアップの速度が1〜1.4Mbit/sしか得られませんでした。128KB/sでは8000秒/GBで,2TBをバックアップするには16M秒(約半年)掛かります。

  差分バックアップなどを使えば,2回目以降は比較的短時間で済みますが,1回目のバックアップが取れていない期間が長すぎます。ということで,Acronisは没ということにしました。

  もう一つ,評価したのがAmazon.comのUnlimitedのCloud Storageで,年$55で,容量無制限という仕様です。無制限と言いながら,6GBくらいバックアップするとエラーになるので,サポートに問い合わせてみると,驚くべき回答が来ました。このAmazon.comのサービスは米国だけで,日本ではサポートしていないという回答です。それで,日本(Amazon.co.jp)で無料サービスしている5GBで制限が掛かっていると思われるとの回答でした。

  しかし,米国のAmazon.comのCloud StorageのWebページは日本語化されており,日本から,日本のクレジットカードで申し込みを行い,ちゃんとアカウントが造られています。米国以外では使えないという記述も無かったと思います。

  善意に解釈すれば,近く,日本でもサービスするので,その準備のため,日本語ページを作ったのかも知れませんが,それでサービスしていないとは,紛らわしい限りです。

  加えて複数のクラウドストレージを統合して扱えるodataというソフトも試してみたのですが,2バイト文字のファイルやフォルダに対応していないようで,ファイル構造がぐちゃぐちゃになり,手動でもとに戻すのに苦労しました。

  ということで,作戦の練り直しが必要になっています。

  

  

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