最近の話題 2016年4月30日

1.AppliedMicroが,次世代X-Gene 3プロセサのWhite PaperをLinley Groupが公表と発表

  2016年4月21日にAppliedMicroは,Linley GroupがX-Gene 3(Skylark)プロセサのWhite Paperを公表したと発表しました。AppliedMicroは正式発表したわけではないので自社でWhite Paperを出さないで,Linley Groupに出させたと思われますが,ちょっと変な発表です。

  なお,正式な社名はAppliedMicro Circuits Corporationで,Nasdaqでの略称はAMCCで,昔は略称としてAMCCを使っていたのですが,このところ,APMという略称を使うようなので,この記事でもAPMを使うことにします。

  X-Gene 3はAPMの3代目のARM V8アーキのサーバ向けチップです。設計は進み,アーキテクチャは完全にフィックスされていますが,まだ,テープアウトされておらず,2017年の2Hの量産を予定しています。

  X-Gene 3は,TSMCの16FF+プロセスで作られ,3GHzクロックで動作するコアを32個集積し,LLCは32MB,DDR4メモリを8チャネル接続できます。I/OはPCIeを42レーン,SATA3.0を4ポート持っています。コアはX-Gene 2から大きな変更はありませんが,分岐予測テーブルとTLBが強化されており,IPCが10%程度上がっているとのことです。また,16FF+プロセスの採用で,X-Gene 2の2.4GHzクロックから,3.0GHzクロックに引き上げられています。

  Linley Groupの推定では,1スレッドの場合のSPECint_rate2006は17.2で,ソケットあたりのSPECint_rateは550となっています。これはIntelのXeon E5-2680 v4が,それぞれ18.8と527となっているので,ほぼ同等の性能ということができます。これまでのAPMのX-Gene 2チップやCavium ThunderやAMD A1170はXeonと比べると性能がかなり低かったのですが,X-Gene 3では,Xeon E5と対等に競争できる性能というのが大きな改良点です。

  そして8チャネルのDDR4というのはXeon E5の2倍のメモリバンド幅で,メモリアクセスの多いアプリではXeon E5より優位と見られます。消費電力は110W〜125Wと見積もられており,ハイエンドのXeon E5と変わらない電力となっています。 

   2017年2HというとIntelのSkylakeベースのXeonが出てくる時期ですが,Linley Groupは,Xeonは性能的には大きな改善はないと見ており,X-Gene 3は若干,性能は低いがメモリバンド幅では優位で,チップの価格アドバンテージもあるので,対抗できると見ています。

  X-Gene 3のもう一つの大きな改良はRASで,1個のメモリチップの全ビットがエラーでもECCで救えるChip Kill,ECCで訂正できないエラーがあっても,そのデータをCPUが使うまではエラーにしないend-to-end Data Poisoning,マルチビットエラーが発生する確率を減らすScrubbingなどをサポートしており,大分,サーバ用CPUらしくなりました。

  全体的に見て,Xeonをよく勉強して,それに対抗できるものを作ろうとしていることが分かります。ただし,その結果できたものは,性能,消費電力の点でも同じようなもので,ARMだから低電力というわけではありません。

  なお,2016年4月25日のSemiAccurateの記事で は,X-Gene 3XLというプロセサの計画があり,コア数を2倍の64個に増やし,SPECint_rateで1000以上を狙うとのことです。また,LLCの増加,メモリチャネル数の増加,PCIeレーン数の増加などを考えているとのことです。そして,X-Gene 3は1ソケット専用ですが,X-Gene3XLではXeon E5と同じように2ソケットでキャッシュコヒーレントという構成をサポートするとのことです。

2.CypressがBroadcomのWireless IoTビジネスを$550Mで買収

  2016年4月28日のEE Timesが,Cypress SemiconductorがBroadcomのWireless IoTビジネスを$550Mで買収すると報じています。BoradcomのIoT向けのWiFi,BluetoothとZigbeeの製品ラインと知的財産が買収の対象となっています。

  BroadcomのIoT部門は430人を抱え,直近の12か月の売り上げは$189Mとのことです。

  Cypressは,CypressのPSoC SoCテクノロジとBroadcomの無線通信テクノロジを組み合わせて提供することでIoTのユーザには使い易くなるとしています。

  なお,CypressはT.J.Rodgers氏が34年前に創立し,ずっとCEOを務めてきた会社です。Rodgers氏は自由主義者で自分の意見を声高に述べることで知られたシリコンバレーの名物経営者の一人ですが,この3月に68歳になり,引退することを発表しました。

3.IntelがモバイルSoCから撤退

  2016年4月29日のEE Timesが,Intelがスマホやタブレット向けのモバイルSoCから撤退と報じています。12000人の削減を発表したIntelですから,不採算の部門から撤退するのは当然です。ということでSoFIAブランドで展開されていたAtomベースのモバイル向けSoCとその後継のBroxtonは,即時,キャンセルと発表されました。

  しかし,Intelは5Gのモデムなどは引き続き開発を行うようです。そして,中国のSpreadtrumの株式を20%保有し,SoFIAを中国のモバイル市場に押し込もうとしていたのですが,これがどのようになるのかについては発表されていません。

4.マイクロソフトがDNA記憶を研究

  2016年4月28日のThe Inquirerが,マイクロソフトリサーチが,サンフランシスコのTwist Bioscienceから,1000万本の合成DNAを購入したと報じています。DNAの情報は1万年後にも読み取りが可能で,HDDやNAND Flashなどより安定した記憶ができます。

  そして,1立方ミリの体積に1Exabyteの情報が記憶できるとのことです。

  ただし,指定した情報をDNAに記憶させる方法は確立されていませんし,読み取りに関しても,シーケンサでの読み取りでは記憶装置としては実用的ではありません。ということで,かなり先を見た研究を意図しているようです。

5.Google,FORD,Uberが自動運転車の実用化を推進する連合を設立

  2016年4月26日のReutesが,Google,FordとUberが自動運転車の実用化を議会や政府に働きかける団体を設立したと報じています。UberのライバルのLyft,ボルボと中国のZhejiang Geely Holding Group Coも参加するとのことです。基本的には自動運転車の方が事故が少なく安全という主張を広めていくとのことです。

  この団体の顧問とスポークスマンには,前のNHTSAの長官だったDavid Strickland氏が就任するとのことです。

  現在は,カリフォルニア州では,自動運転車でも公道を走行する場合は,ハンドルやブレーキペダルが必要で,人間のドライバが何時でも交代できるようになっていることを義務付けています。Googleは元々完全自動派ですし,FordやUberも完全自動が望ましいと思っているのでしょうが,事故の責任はだれが負うのかなど,政治を動かして法律を作る必要があり,議会や政府を動かすことが必須です。

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