最近の話題 2016年5月28日

1.7社がアクセラレータインタフェースの標準仕様を策定

  2016年5月23日のEE Timesが,AMD,ARM,Huawaei,IBM,Mellanox,Qualcomm,Xilinxの7社が,Cache Coherent Interface for Accelerators(CCIX,発音はC6)と呼ぶ標準のアクセラレータインタフェース使用を策定すると報じています。

  MicrosoftはアクセラレータとしてFPGAをサーバに搭載しています。また,先週はGoogleがTPUというアクセラレータを開発して使っていると報じられましたが,これらはPCI Express接続で,キャッシュコヒーレンシはサポートされていませんし,速度も物足りないところがあります。

  IBMのCAPIやNVIDIAの第2世代のNVLINKはキャッシュコヒーレンシをサポートし,速度もPCI Expressより速いといっていますが,NVLINKは,まだ実物がありませんし,CAPIも出たてでCAPIを使ったアクセラレータが出回るという状況には程遠いところです。IntelはXeonとAlteraのFPGAを同一のパッケージに入れたものを見せましたが,これはQPI接続ではないかと見られています。

  このような状況で,業界標準のアクセラレータインタフェースができることは望ましいのですが,CCIXのグループにNVIDIAとIntelは入っておらず,この2社がどう動くのかがカギになりそうです。

  なお,CCIXの性能は,現状のリンクと同等かそれ以上の性能を目指すというだけで,具体的な使用については,何も発表されていません。

2.MicrosoftがHololensのハードウェアについて発表

  2016年5月25日のEE Timesが,IMECのTechnology Forumにおける,Microsoftの Ilan Spillinger氏のHololensの発表を報じています。

  それによると,HololensはIntelの14nmプロセスのCherry Trail SoCと,自社開発の28nmプロセスを使うHPU(Holographic Processing Unit)が使われているとのことです。HPUは,ヘッドセットに付けられた4つの環境センサ,小型低電力化されたKinectのデプスカメラ,加速度センサからの入力を処理して,環境とユーザの動きやジェスチャを検出し,それに応じたイメージを表示します。

  HPUにはTensilicaのDSPコアのアレイが搭載されており,それぞれがカスタムの処理に最適化されているとのことです。消費電力は10W以下となっています。

  メモリは64GBのFlashと,CPUとHPUにそれぞれ1GBの外部メモリが付いています。画面表示は2M Pixelで,同じ解像度のHDビデオカメラを備えています。

3.インドが70台以上のスパコン調達を計画

  2016年5月24日のHPC Wireが,インドが,2015年からの7年間に70台以上のスパコンを調達すると報じています。インドは,米,中,日,独,英,仏に次ぐ7位のスパコン保有国ですが,その地位を強化しようという計画で450億ルピー(約$670M)を投じるとのことです。

  マシンは,インド製と海外からの輸入品の両方が使われます。昨年設置されたSahasraTはCrayのXC40システムで,ピーク性能1.2PFlops,LINPACKで901TFlopsとなっています。2017年8月に完成予定の国産のPARAMマシンの次世代機は,LINPACKで1PFlops超えのマシンとなる予定です。

4.Insilico Medicine社が創薬と年齢判別DNNの論文を発表

  Insilico Medicine社は,ディープラーニングを医薬品の開発に応用しようというスタートアップです。2016年5月26日のHPC Wireが,同社の2つの論文の発表を報じています。

  一つは,遺伝子情報,Transcriptome,Proteomeと言った細胞の生成物,そして,薬の候補となる化合物を入力とするDNNを使い,化合物の機能などを予測するというものです。このネットワークは971の入力を持ち,このように多数の変数がある場合,それらの間にどのような相互関係があるのかを求めるという作業を解析的に明らかにするのは難しいのですが,DNNなら学習で相互関係を見つけることができます。

  このシステムで,ある化合物が何に効くのか,毒性はなどが判別でき,ある薬品の従来は知られていなかった用途を発見するということも起こっているそうです。

  医学関係では,DNNを使って,このような多数の性質の違う入力の間にどのような関連があるのかを見つけるという研究が多く,成果が出始めています。例えば,ロスアンゼルス子供病院のDr.Tedシステムは,脈拍,血圧などの測定データと投与する薬(複数)を入力として死亡率を推定することで,死亡率の低い薬品を見つけて,救急医療の救命率を上げようとしています。

  もう一つの論文は,血液中の色々な成分量を入力として年齢を推定するというもので, albumin, glucose, alkaline phosphatase, ureaとerythrocytesが最も年齢に直結することが分かったとのことです。幾つものDNNを作り,もっとも精度が高いDNNは81.5%の正答率であったのですが,全てのDNNのアンサンブルを取ると,正答率は83.5%に向上したとのことです。

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