最近の話題 2016年7月30日

1.最後のITRSレポートITRS2.0 

  2016年7月28日のHPC WireがITRS2.0レポートについて報じています。トランジスタ構造としてFinETは2020年ころまでで,その後はGate All Around構造に移行するとしています。

  HPC Wireは2021年以降はスケーリングが止まると書いていますが,ITRSレポートでは,2021年は6/5nmノード,2024年は4/3nmノード,2027年は3/2.5nmノード,2030年は2/1.5nmノードとスケーリングは続くと言うロードマップになっています。また,平面のスケーリングに加えて,3D NANDのように積み上げる3D構造になっていくとしています。これで積層の数を増やしていけば,従来より速いペースで,集積度は上がるという論調です。

  HPC Wireは微細化が止まるとトランジスタコストの低減も止まると書いていますが,3D化のコストがどうなるかで,トランジスタコストが変りますから,一概にトランジスタコストが下がらないとは言えないと思います。

  なお,半導体のロードマップだけを切り離して議論できなくなっており,体制を変えて,IEEEの傘下で,システムまで含めたInternational Roadmap for Devices and Systems(IRDS)として再出発することになっています。このため,ITRSのレポートとしては,このITRS 2.0 2015 Editionが最後となります。

2.ウエスタンディジタルが64層の3DNANDを発表  

  2016年7月27日のEE Timesが,2016年7月26日にWestern Digitalが64層の3D NANDを発表と報じています。実際に作ったのは東芝の四日市工場で,Western DigitalはSanDiskの買収で,東芝のパートナとなったことで,発表を行ったものです。

  このBiDC3と呼ばれるプロセスは,64層の3D NAND構造で,この層数は世界最大です。そして,3ビット/セルを実現し,最初は256Gbit/chipですが,将来的には2倍に拡大するとのことです。

  現在,BiCS3は四日市工場でパイロット量産に入っているとのことです。

3.SamsungがWD/東芝に先行して64層3D NANDを量産  

  2016年7月29日のEE Timesが,Samsungが64層3D NANDを年末までに量産を開始すると報じています。WD/東芝は64層で256Gbitチップの量産は2017年6月ですが,それより6か月先行するという計画です。

  WD/東芝の発表に対抗するために,急遽発表したのでしょうが,やはり,Samsungは技術的には先行しているようです。

4.アナログデバイスが$14.8でリニアテクノロジを買収  

  2016年7月26日のEE Timesが,Analog Devicesが,Linear Technologyを$14.8Bで買収提案を行っていると報じています。アナログデバイスはアナログIC分野の業界4位で,リニアテクノロジは8位です。両者の合計の売り上げは$4Bを超え,ガリバーのTIに次ぐ2位になります。

  リニアの1株に付き$46とADI株0.23株を与えるという条件で,おおよそ$60に相当し,月曜の終値の$48.47に比べて24%のプレミアムです。

  両者ともアナログICの大手ですが,ADIはデータコンバータに強く,リニアは電力制御関係に強いということで,大きな重複の無い補完的な関係です。

  株主総会での承認や当局の承認などが必要ですが,2017年の前半には買収を完了する見込みとのことです。

5.AMDのRadeon Pro SSG  

  2016年7月25日にSIGGRAPHにおいて,AMDは3種のRadeon Pro WX GPUを発表しました。これらのGPUはAMDの最新のPolarisアーキテクチャのGPUを搭載してします。しかし,技術的に興味深いのは,GPUではなく,SSGと呼ぶ1TBのM.2 SSDをGPUボードに搭載し,GPUのフレームバッファの拡張として使えるようにした点です。

  SSDをファイルとして使うには,GPUにファイルシステムを載せる必要が出てきますが,デバイスメモリの拡張として使うなら,ソフト的には簡単ではないかと思います。しかし,ランダムアクセスをされると,書き込み寿命が心配で,この辺をどのように解決しているのかは興味深いところです。

  GPUに1TBのメモリを持たせると,色々なことができるようになります。現状では8Kビデオの処理は17フレーム/秒でしかできないのですが,SSGを使うと96フレーム/秒のリアルタイムで処理できるとのことです。また,大量のデータを扱うビッグデータの処理や科学技術計算でも,CPUにデータのコピーを要求する頻度を大幅に減らして高速化できます。そして,大量のテクスチャの格納も楽々です。

  現在はデバロッパー向けのSDKと込みで$9,999ドルでの提供ですが,2017年には一般提供の予定です。また,$9,999のお値段も,大量のデータを扱うエンジニアや高精細のコンテントクリエータの能率アップを考えると,数ヵ月で元が取れると思います。

6.AirBusとDedrone社のJVがドローン撃退システムを発表  

  2016年7月27日のThe Regiserが,AirbusとカリフォルニアのDedroneというスタートアップのジョイントベンチャーのドローン撃退システムの販売開始を報じています。

  ドローンは便利ですが,スパイや不法な荷物を運んだりという用途にも利用できますし,危険な物質を積んでテロを行うことも可能です。セキュリティー上,このようなドローンを撃退することは重要です。

  Dedrone社は,カメラ,レーダー,マイクロフォン,その他のスキャナなどのセンサを備え,10km離れた通常の商用ドローンを検出するシステムを開発しており,これとAirbusの電波妨害装置を組み合わせて商品化したものです。

  Airbusのジャマーは,電波を出して,ドローンの操縦に使われる通信を妨害するもので,他の周波数を使う通信には影響を与えないとのことです。通信を遮断されたドローンがどうなるのかは,ドローンが非常事態にどのように振る舞うように設計されているかにより,元の場所に戻ったり,近くに着陸するとのことですが,単純に墜落というケースもあると思われます。

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