最近の話題 2016年8月13日

1.IntelがNervanaを買収予定

  2016年8月10日のEE Timesが,8月16日に開幕するIDFで,Nervanaシステムの買収を発表すると報じています。Nervanaは,NeonというディープラーニングフレームワークとNervana Engineというハードを開発しています。そして,Nervana CloudというクラウドでAIの開発や使用ができるというサービスを提供しています。

  Neonはアセンブラで最適化されており,CaffeやTheanoと比べて2倍以上速いとのことです。そして,Neonの開発で得た知見を基に,GPUの中のAI用には必要のないキャッシュなどを取り払い,MMU機能もソフトにやらせるなどして,コンピュート密度を高めているとのことです。また,演算は16bitですが,IEEE754の半精度ではなく,FlexPointという独自方式を使っています。IEEE754の半精度より,精度が高いそうです。

  Nervana Engineは28nmプロセスで作られ,GPUより演算密度が高いとのことですが,具体的な数字は発表されていません。このEngineにはHBM2メモリが4個付き,メモリバンド幅は1TB/s,容量は32GBです。1GB DRAMチップの8スタックとのことで,かなり高そうです。

  そして,このモジュールは6本の双方向リンクを持ち,3Dトーラスでシステムをスケールアップできるようになっています。8チップで,ほぼ8倍の性能が得られるとのことです。

  ただし,学習の基本的なプロセスは並列化できず,通信量はチップ数に比例するので,3Dトーラスでは,チップ数を増やしていけばどこかで飽和する筈で,8チップでは,まだ,十分なバンド幅がある設計ということと思われます。

  また,7月23日の話題で紹介したWave Computingのチップのように,繋ぎ方を変えてデータフロー的に動作させるというような話はないので,ノイマンコンピュータ型の制御ではないかと思われます。

  GPUを使ったディープラーニングでは,NVIDIAに先行されているIntelとしては,Nervanaの買収で差を詰めたいということのようです。

2.Micronが3D XPointメモリを使ったQuantX SSDの性能を発表

  2016年8月9日のEE Timesが,Flush Memory SummitでのMicronの3D XPointメモリを使ったQuatXというブランドのSSDの性能の発表を報じています。

  それによると,通常のNANDを使うSSDのReadは90us,Writeは190us程度であるのに対して,3D XPointメモリを使ったSSDでは,Readは10us,Writeは20usと,ほぼ10倍速くなっています。そして,x4 PCIeの場合は900K IOPS,x8 PCIeの場合は1.9M IOPSのアクセス性能となっています。IOPSも約10倍です。

  IntelとMicronの3D XPointの発表時には,NANDの1000倍速いとのことでしたが,SSDで出てみると,10倍しか速くないのではがっかりです。また,このスピードでは,DRAMとNANDの間を埋める新階層メモリとなるのも難しいと思われます。

  値段や,発売時期などは発表されませんでした。しかし,同一容量ではNANDの5倍のお値段で来年2Qという推測を載せている報道もあります。

3.Samsungが3D XPointキラーのZ-NANDを発表

  2016年8月11日のEE Timesが,Flush Memory SummitでSamsungが,Intel-Micronの3D XPointメモリの対抗馬を発表したと報じています。SamsungはZ-NANDと呼んでいますが,中身は明らかではありません。

 電気的には,ReadもWriteも20us程度で,V-NANDなどのマルチレベルセルと比べると,Readは10倍速く,Writeは2倍速いとのことです。また,書き込み寿命もSLC並みとのことで,3D XPointと並ぶ性能とのことです。一方,NANDのテクノロジを使うので,コスト的にはTLCのものより多少高い程度とのことで,3D XPointより安そうです。これが事実とすれば,3D XPointキラーです。やはり,3D XPointが10倍しか速くないと,改良型のNANDに追いつかれてしまいます。

 Samsungは構造を明らかにしていませんが,特性から見て,V-NANDのセルをSLCで使い,コントローラを改良してWriteの速度を上げたものではないかという他社のエンジニアの推測も報じられています。

4.HPEがSGIを買収を発表

  2016年8月11日のHPCWireが,HP EnterpriseのSGI買収発表を報じています。一株$7.75で,これは発表前日の終値に30%のプレミアムを載せた値段です。買収総額は約$275Mとなるとのことです。

  SGIはグラフィックスの草分けの企業で,現在のグラフィックスの発展の基礎を築いた会社ですが,経営破綻して,2009年にRackableに$25Mで買収されたのですが,SGIの方がブランド力があるので,買収したRackableが社名を変更してSGIになりました。

 HPEはHPC分野のトップメーカーで,2015年のHPC関係の売り上げは1230Mで,これに対してSGIは$88Mですから,トータルしてもHPEの売り上げはあまり変わらないのですが,SGIは独自のccNUMA技術を持ち,ビッグデータに強い,巨大なメインメモリを持つスパコンなど特色のある製品を持っています。これらを吸収して,HPCビジネスを強化しようということのようです。

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