最近の話題 2016年9月10日

１．富士通のPost-Kは1～2年遅延

　　2016年9月8日のHPC wireが，富士通が開発するPost-Kスパコンは，2020年の目標から1～2年遅れ，2021年か2022年になると報じています。

　　Flagship2020のプロジェクトリーダーの石川先生がオースチンで開催されたHPC User Forumで発表したとのことです。遅延の理由は，プロセサの量産が間に合わないためとのことです。TSMCの7nmプロセスの開発が遅れ気味なのでしょうか？

　　1～2年の遅延となると，米国の2023年という目標に近づきます。

　　石川先生は，アーキテクチャをARMに変えたのは正しい判断で，ツールやソフトウェアが揃い易くなると述べていますが，Post-KのツールやソフトがARMがハイエンドに進出するのを助けることはありそうですが，ARMのコミュニティーがPost-K規模のシステム用のソフトを作ってくれることは期待薄ではないかと思います。まあ，欧州勢がARMのベクトルアーキにコミットしてくれれば別ですが．．．

　　Post-Kの開発費は1300億円（ソフトの開発費などを含む）で，その内の200億円は富士通の負担となっていますが，富士通は減額を交渉しているとのことです。まあ，京コンピュータの後継機がどれだけ売れたかを見ると，Post-Kも製品機で200億円を回収するのは難しそうですから，交渉するのは当然と言えます。

２．IntelがMovidiusの買収を発表　（この記事は，読者のご指摘で訂正を行っています）

　　2016年9月7日のEE Timesが，AppleのiPhone 7のアプリケーションプロセサのA10 Fusionプロセサについて報じています。

　　A10 Fusionは3.3Bトランジスタで，big.LITTLE構成になっているとのことですが，それぞれのコアが何であるかは発表されていません。多分，big側はApple設計のA10コアで，LITTLE側は，ARMのローエンドv8コアを使っているのではないかと思われます。

　　A10 Fusion SoCは，2個のハイエンドコアを使いA9より40%高速とのことです。また，2個のローエンドコアを使い，消費電力を1/5に減らしているとのことです。従来，big.LITTLE構成を使って居なかったので，低負荷の場合，消費電力1/5は理解できます。

　　また，GPUは6コアで，A9より50%高速になっています。

　　Appleの発表で驚きをもって迎えられたのは，ワイヤレスイア―フォンのAirPodsです。W1というカスタム設計の無線チップを使っています。しかし，WiFiやBluetoothは使っていないようです。また，AirPodsはマイクロフォン，デュアル光センサとデュアル加速度センサを搭載しているのですが，EE Timesの記事では，それらの使い方には触れられていません。

４．IntelがMcAfeeを売却

　　2016年9月7日のEE Timesが，Intelがアンチウイルス大手のMcAfeeを売却すると報じています。Intelは2010年にMcAfeeを$7.68Bで買収したのですが，その51%を$3.1Bで投資会社に売却するとのことです。単純計算では，$1B弱，損をしたことになりますが，EE Timesの報道では，アナリストは，本業にフォーカスする動きと評価しています。

　　分離された会社には約7500人が所属することになり，社名はMcAfeeに戻るそうです。ただし，この売却が決まるのは2017年の2Qと見られています。