最近の話題 2016年10月15日

1.Galaxy Note7はなぜ発火するのか

  SamsungがGlaxy Note 7の発火問題で,Glaxy Note 7の販売中止に追い込まれた件は,一般紙にも報道されています。なぜ,Galaxy Note 7が発火するのかは分かりませんが,2016年10月12日のEE Timesは,急速充電回路が問題ではないかという見方を報じています。急速充電はユーザに取っては嬉しい機能ですが,バッテリにとっては厳しい使い方で,これが発火に繋がったという見方です。

  一方,2016年10月13日のEE Timesは,Samsungの労働環境にその原因があるという記事を掲載しています。Saumsungでは労働組合の結成を妨害する動きが続き,長時間労働など厳しい労働環境だそうです。700倍という競争率を突破してSamsungに入った新入社員としてはなかなか,上司の命令には逆らえません。

2.2016 3QのPCの出荷数は5.7%ダウン

  2016年10月12日のThe Registerが,GartnerとIDCの調査結果を引いて,PCの出荷量と各社のシェアを報じています。Gartnerの調査では,2016年3QのPCの出荷は68.945Mで,前年同期と比べると5.7%ダウンです。IDCの調査結果は,67.999Mで3.9%ダウンとなっています。なお,IDCはChromebookをPCに含めているのに,Gartnerは除外しているという違いがあります。

  上位3社はLenovo,HP,Dellで,Lenovoは20.9%のシェアですが,前年同期比で2.4%ダウン,一方,HPは2.3%アップして,シェアは20.4%,3位のDellは2.6%アップして,シェア14.7%です。目立つのはAppleが前年同期比で13.4%ダウン,Acerも14.1%ダウン,ホワイトボックスは16.2%ダウンと,上位メーカーに比べて落ち込みが大きくなっています。

3.Alibaba CloudがAMDのGPUを採用し,協業

  2016年10月14日にAMDは,AMDのRadeon Pro GPUを使うAlibabaのクラウドサービスの提供に関して,協業すると発表しました。

  Alibabaは,世界トップクラスの巨大クラウドサービスを提供しており,AIの開発でもトップクラスの能力をもっています。AMDのGPUは,クラウドサービスではNVIDIAに大きく水を開けられていますが,今回のAlibabaの採用で,巨大データセンタでの採用の実績ができます。

  この採用は,クラウドで要求されるGPUの仮想化やGPUメモリとしてSSDの追加などに加えて,VRサポートなど,AMDのグラフィックス機能のエンハンスなどがAlibabaにアピールした結果でしょう。

  また,Alibabaとの協業で,AMDとして得るものも大きいと思われます。

4.NBNLの研究者が1nmのトランジスタを発表

  2016年10月13日のEE Timesが,ローレンスバークレイ国立研究所の研究者が,1nmのゲート長のトランジスタを作ったと報じています。現在の延長では5nm程度が限界と言われており,今回,作られたトランジスタは,カーボンナノチューブをゲートに使っています。

  これではシリコンのトランジスタを制御できないので,チャネルとしては2硫化モリブデンを使い,ゲート絶縁には0.65nmの厚みの2酸化ジルコニウムを使っています。一応,MOSトランジスタとして動くのですが,現在のシリコントランジスタに匹敵する性能を得るためには,大きな改善が必要とのことです。

  ということで,実用化にはかなり距離がありそうですが,しかし,1nmのゲート長でトランジスタができたということは元気づけられる成果です。

5.Kilopassのリフレッシュ不要な高密度メモリ

  2016年10月11日のEE Timesが,Kilopassという会社のリフレッシュ不要な高密度メモリについて報じています。記憶セルはVertical Layered Thyrister(VLT)という構造で,縦方向にPNPNのサイリスタを作っています。

  サイリスタはいったんオンになると,電流をほぼゼロにしない限り,オン状態を維持しますので記憶機能を持っています。しかし,どのようにオン,オフするかについては記事には書かれていません。また,電流を流している限りはオン状態を維持するのでリフレッシュは不要ですが,電流は流れ続けるので,電力を消費します。この電力がどの程度になるのかが気になります。

  サイリスタは普通のシリコンプロセスで作れ,DRAMのように難しいキャパシタを作る必要はありませんし,ReRAMなどのように,記憶素子の部分に特別な材料も必要としません。

  この構造でDRAM並みの密度で作れるとのことですが,今,どの程度のビット数,ビット密度のものが作れているのかは記事では触れられていません。

6.IBMが25GbpsのOpenCAPIを発表

  2016年10月14日のEE Timesが,25Gbpsのインタコネクトを使うOpenCAPIを発表したと報じています。IBMのPOWERプロセサは,CAPI(Coherent Accelerator Processor Interface)と呼ぶキャッシュコヒーレントなアクセラレータインタフェースを装備していたのですが,それはIBM独自のインタフェースでした。それを高速化して,オープンな規格として,業界に広めようというものです。

  150-160GB/sのバンド幅を持ち,load/storeセマンティックで使え,レーテンシは100ns程度とのことです。

  現在の賛同者は,AMD, Dell EMC, Google, Hewlett Packard Enterprise, Mellanox,Micron, Nvidia とXilinxとのことです。

  しかし,CCIXGen-Zも同様なターゲットで活動しており,キャッシュコヒーレントなアクセラレータ接続規格は激戦状態です。AMD,Mellanoxなどは,CCIX,Gen-Z,OpenCAPIの全てに参加しているのですが,どうするのでしょうね。また,OpenCAPIの盟主であるIBMもCCIXとGen-Zにも参加しています。

  サーバ市場で圧倒的な強さをもつIntelに対抗する動きですが,団結した方が良いのではないかとも思います。まあ,各社とも,今後の情勢が読めないから二股,三股を掛けて置こうというところでしょうか。

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