最近の話題 2016年10月29日

1.QualcommがNXPを買収

  2016年10月27日のEE Timesが,QualcommがNXPを買収するというDefinitive Agreementを結んだと報じています。買収総額は$47B(約5兆円)の大型買収です。実現すれば,売り上げ$35Bの巨大半導体メーカーとなります。

  Snapdragonを持つQualcommはスマホ用SoCのトップメーカーですが,スマホ市場も飽和して来ていることから,次の成長分野である自動車向けの半導体のトップメーカーであるNXPを買収するという動きに出たものです。

  Qualcommの自動車市場への販売は僅かで,ビジネスに大きな重複はなく,独占禁止法上の大きな問題は無いと見られます。

  両社は買収に合意したわけですが,当局の承認などを考えると,買収が完了するのは2017年の終わり頃になると見られています。

2.ARMがセキュリティー機能を組み込んだIoT向けのM33とM23を発表

  2016年10月25日のEE Timesが,ARM のセキュアIoT製品の発表を報じています。今回発表されたCortex-M33とM23は,ARMv8-Mアーキテクチャの32bit MCUです。そして,コアとメモリ,周辺にはARMのTrustZoneが組み込まれています。加えて,暗号化,セキュアブート,乱数発生などの処理を行うCryptoCellと1V以下の電圧で動作する802.15.4の無線機能も発表しました。

  M33はDSP拡張や,浮動小数点演算などのも付けられる汎用のMCUコアで,M23はM33の1/4の電力で動作し,電力効率が2倍の低電力用途向けです。

  そして,SIE-200バスはセキュアとノンセキュアの信号をハードウェアで分離して扱えるバスとのことです。

  これらのハードウェアIPだけでなく,組込み用のmbed OSや開発システムなども揃えた提供になっています。

  IoT向けには,これまで十分なセキュリティー機能を持つ製品が無かったのですが,今回の発表でIoTのセキュリティー機能の搭載が進むものと期待されます。

3.AppleのA10とA11は,事実上,TSMCが独占受注

  2016年10月26日のEE Timesが,Apple のiPhone 7に使われているA10 SoCと,来年の次世代機に使われるA11 SoCは,事実上,TSMCが独占供給することになるというアナリストの見通しを報じています。その理由は,TSMCはInFOパッケージの歩留まり問題を解決したと見られ,性能,コストの面で他社より優位に立っているからとしています。

  InFOはチップ,あるいはチップを表面を上にして並 べ,チップ間を樹脂で埋め,その上に何層かの配線層を作っていくという方法で,チップ間あるいはチップからパッケージ端子までの配線を短くでき,パッケー ジを20%薄くできます。また,チップの背面が露出しているので放熱の点でも10%有利とのことです。

  他社も,追いかけてくるのですが,少なくとも,来年までには追い付けず,A10とA11はTSMCの事実上の単独受注になると見ています。

4.MovidiusがHiKvisionとDJIと提携

  2016年10月24日のEE Timesが,組込み用ビジョンプロセサのMovidiusが,監視カメラでは世界最大手のHiKvision(発音はKigh K Vision)と同じく中国のドローンの最大手のDJIと提携と報じています。

  Hikvisionは2016年のILSVRCのシーン認識部門で1位とのことで,監視カメラでAIを使って自動で監視する高い技術を持っています。Movidiusと提携してカメラ自体にAIを組み込むことを狙っているとのことです。

  DJIは,ドローンが障害物を認識して避けたり,GPS信号が無くても認識で飛んだりする機能の搭載を目指しているなど,HikvisionもDJIも製品の高機能化を狙っています。

  なお,MovidiusはIntelが買収を持ちかけており,今年中には買収が決まると見られています。MovidiusのCEOは,Movidiusのチームとブランドは残り,Intelの一部となることで,開発力は強化されると述べています。

  1件でも引用されたAI関係の論文数で,中国が米国を抜いて首位に立ったとのことで,中国のAI研究は,量,質ともに世界のトップレベルです。中国と米国で方向が決まってしまい,日本は蚊帳の外という危惧を感じます。

5.SamsungのGalaxyS8はAIとカメラを強化

  2016年10月28日のThe Inquirerが,Wall Street JournalをひいてSamsungの李在鎔副会長が語ったGalaxy S8の新機能について報じています。

  SamsungはVivを買収して,SiriやGoogle AssistantのようなAIの搭載を狙っています。VivはSriを作った主要メンバーが独立して作った会社です。そして,Siriより強力なAIプラットフォームを開発していると見られます。

  また,Galaxy S8はiPhone 7 Plusと同様なデュアルカメラ搭載になるとのことです。iPhone 7 Plusは2つのカメラの信号をディジタルに処理して解像度を改善したり,一眼レフのようなボケを作り出したりしています。

  直接関係は有りませんが,Lightという会社は厚めのスマホサイズの筐体に16台の固定焦点カメラを搭載し,ディジタル処理でこれらのカメラからの情報を処理して,高級ディジタル一眼レフに匹敵する写真が撮れるカメラを2017年には発売するとのことです。ディジタル一眼レフがポケットに入る時代が来るかも知れません。

 李在鎔副会長が語ったのはこれだけですが,業界の噂では,Galaxy S8は5.1インチで2160×3840のAMOLEDディスプレイを搭載し,SoCはQualcommのSnapdragn 830,あるいはSamsungのExynos 8895が搭載されるとのことです。

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