最近の話題 2016年12月10日


1.TSMCがIEDMで最小のSRAMを発表

  2016年12月6日のEE Timesが,IEDMでのTSMCの7nmプロセスの発表について報じています。現在量産している16nmプロセスと比較すると同一電力では40%高速で,同じスピードなら65%少ない電力とのことです。しかし,TSMCは10nmプロセスとの比較は明らかにしませんでした。

  また,セル面積が0.027um2とこれまでで最小のSRAMを発表しました。このSRAMは0.5Vまで動作するとのことです。16nmプロセスのSRAMと比較すると,高速版のHCでは速度は1.8倍,密度は2.5倍という図を示しています。また,高密度のHDでは密度は3倍,速度は2倍くらいと読み取れます。

  TSMCは256MbitのSRAM,GPU,ARM Cortex A-72コアなどを含むテストチップを作っており,歩留まりの詳細は明らかにしませんでしたが,2桁のパーセントにはなっているとのことです。また,SRAMだけの歩留まりは50%に達していると述べています。

 この7nmプロセスのチップのリスク生産は,2017年4月までに開始する予定とのことです。

2.IBMがIEDMで最小のFinFETを発表

  2016年12月6日のEE Timesが,IEDMでのIBMの最小のFinFETの発表を報じています。このプロセスでは,コンタクト付きのポリシリコンピッチが44/48nm,配線ピッチが36nm,フィンピッチが27nmで,コンタクトホールは約10nm,ゲート長は約15nmとなっています。

  Intelの10nmプロセスはゲートピッチが56nmですから,ゲート長が15nmならIntelより微細なプロセスです。しかし,各社の発表のどこを見ても,プロセスノードの数字と一致する寸法は出てきません。

  IBMの発表で驚いたのは,Nトランジスタは通常のシリコンのフィンなのですが,PトランジスタはSiGeのフィンを使っている点です。断面写真を見ると,SiフィンとSoGeフィンが交互に並んでいます。

  IBMはコンタクトホールやM1配線などのクリティカルな層の露光にはEUVを使っています。27nmピッチのフィンは,セルフアラインのクワッドパターニングを使っています。多分,スペーサをダブルパターニングしているのでしょうね。

  今回のIEDMでは,IntelとSamsungからは先端の微細プロセスの発表は有りませんでした。

3.ARMがTSMCの7nmプロセスの物理IPのライセンスを開始

  2016年12月8日のEE Timesが,ARMがTSMCの7nmプロセスに対応したArtisan物理IPのライセンスを開始したと報じています。そして,Xilinxがライセンスをを取得したとのことです。この物理IPは液浸露光用で,EUV対応にはなっていません。

  7nmになると配線が細くなり,抵抗が増えるので,電源の電圧ドロップには,特別な中止が必要で,ARMはPower Grid Architectというツールを開発しています。  

  また,7nmでは,全てのメモリにECCをつけ,エラーの検出と訂正を行うことが必要になるとのことです。

  7nmプロセスを使うとクロックは3GHzで消費電力を20%程度削減できるとのことですが,以前の予測より電力低減の効果は小さく,設計の手間を考えると7nmプロセスが10nmプロセスと比べて良いかどうかは良く分析してみる必要があるとのことです。

4.Qualcommが10nmプロセスを使うARMサーバチップのサンプリングを開始

  2016年12月7日のEE Timesが,Qualcommが10nmプロセスを使うARMサーバチップのサンプル供給を開始したと報じています。QulcommはSnapdragonの製造はSamsungで行っており,Centriqと呼ぶ,このサバチップもSamsungの10nmプロセスを使っていると見られます。

  QualcommのCentriq 2400シリーズは,Falkorと呼ぶ64bitのARMコアを48コア集積するということだけしか発表しておらず,クロック,消費電力,メモリバンド幅,PCI Expressのレーン数など一切不明です。

  Snapdragonの量産で,Samsungの最大の顧客ですから,最先端の10nmプロセスが使えるという有利な点はありますが,何しろ,ARMサーバという市場が立ち上がっておらず,QualcommのARMサーバチップのビジネスが成功するかどうかは見通せません。

  現状では,Qualcommのサンプルチップはサーバメーカーではなく,Web Giantに供給されているようです。FacebookやMicrosoftなどに採用されれば,一つの顧客で数が出ますから,ねらい目です。

  なお,Vulcanという名称でARMサーバチップを開発していたBroadcomは,プロジェクトをキャンセルしたという話が流れていますが,噂レベルの情報です。

5.2017年にWin32アプリが動くARM版Windows 10を投入

  2016年12月8日のPC Watchが,MicrosoftがWinHEC Shenzhen 2016において,Win32アプリが動作するARM版のWindows 10を来年発売すると発表したと報じています。これまでもARM版のWindowsは有ったのですが,機能に制限があり,フルのWindowsではありませんでした。

  しかし,今回は,OSはARMネイティブに移植されたもので,Explorer,CortanaやEdgeなども動き,x86版のWindows 10と同等とのことです。

  そして,バイナリトランスレータを持っており,x86用のWin32アプリをトランスレートして実行できるというのが,今回の新しいところです。Photoshopを動かすデモを見せたとのことですが,メニュー表示程度の軽い処理で,バイナリトランスレーションで,本当にどの程度の性能が出るのかは分からなかったとのことです。

  この発表にはQualcommの幹部も登壇し,このARM版Windows 10を複数の機種で長期に渉ってサポートしていくと述べています。

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