最近の話題 2017年1月21日

1.EUのMont BlancプロジェクトがCaviumのThunderX2 ARMプロセサを選択

  EUが推進するMont Blancプロジェクトは,ARMコアをベースにExascaleクラスのHPCサーバを開発するものですが,2017年1月16日のHPCwireが,ARMプロセサとしてCaviumのThunder X2を採用したと報じています。

  Mont blancのプロトタイプは,フランスのAtos(Bullの親会社)が開発することになっており,AtosとCaviumは,協力して開発に当たるという契約を結んだとのことです。


2.Crayが英国向けにARMベースのスパコンを開発

  2017年1月18日のTop500ニュースが,英国向けにIsambardと呼ぶARMベースのスパコンを開発すると報じています。ブリストル大の Simon McIntosh-Smitt教授がバルセロナで開催されたMont Blancのイベントで発表したとのことです。

  このマシンはCrayのCS400ベースで,CS400のXeon CPUをARM CPUに乗せ換えたもののようです。Isambardシステムは1万以上のARMコアとx86,KNL,NVIDIA P100 GPUを搭載して,全体では数10TFlopsの規模になると書かれています。

  どのARMサーバチップを使うのかは書かれていませんが,別の開発で,CrayはCaviumのThunder Xを使いCaviumと協力関係にあるので,Thunder X2を使う可能性が高いと思われます。

3.中国がExaFlopsスパコンの試作機を年内に開発

  2017年1月18日のYahooニュースが,国営新華社の報道をひいて,中国がExa Flopsスパコンの実現に向けて,年内に試作機を開発する計画であると報じています。

  この報道では試作機がどのようなものであるかは明らかになっていないのですが,1月19日に早稲田大学で開催されたSISAワークショップで講演した中山大学のQian教授の発表によると,試作機はエクサスケールのテクノロジを確認するためのもので,5-10TFlopsのノードを512ノードという規模だそうです。電力効率は10-20GFlops/Wで,インタコネクトは200Gbps以上となっています。

  また,天河2号のアップグレードの禁輸に懲りたのか,Emphasis on self-controllable technologiesと書かれています。太湖之光のように,自前のチップを使うと考えられます。

  全体で2.5-5PFlopsの規模で,電力効率もExaFlopsをシステムの目標の30GFlops/Wに届いていません。テクノロジのアプローチやアーキテクチャの妥当性を確認するということでしょうか。ExaFlops機開発の1ステップではありますが,大騒ぎするほどのことはありません。

4.PEZYグループが2017年に20-30PFlopsシステムの開発を発表

  1月19日に早稲田大学で開催されたSISAワークショップで,PEZYの齊藤社長が講演し,PEZY-SC2チップを使うZettaScaler-2.0システムを,今年中に開発し,20-30PFlops規模のスパコンを開発する計画であることを発表しました。

  この技術を使えば,お金さえあれば100PFlops以上のシステムを作れると言っています。それに関して,2017年1月20日に,JSTは,産学共同実用化開発事業(NexTEP)未来創造ベンチャータイプの平成28年度緊急募集における新規課題を発表しましたが,磁界結合DRAM・インタフェースを用いた大規模省電力スーパーコンピュータが採択されています。新技術の代表者は慶応大学の黒田忠弘教授で,開発実施企業はPEZYグループのExascalerとなっています。これでいくらお金が出るのか分かりませんが,20-30PFlopsより大きなシステムが作れることになるのかも知れません。

  なお,JSTのお金は,開発成功の場合は10年間以内の年賦で返済,失敗の場合は9割は返済が免除されますが,1割は返済の必要があるという借金で,Exascalerがいくらの開発費を申請したのかは不明です。

  そして,PEZYは7nmプロセスを使うPEZY-SC3の開発を計画しており,2019年に,このチップを使うZettaScaler-3.0を開発する計画です。このZettaScaler-3.0のシステムでExaFlopsを超えるという意気込みです。

5.AMDのInfinity Fabricは全てを繋ぐ

  2017年1月19日のSemiAccurateが,Instinct GPUと共に発表されたInfinity Fabricについて詳しく書いています。Infinity FabricはInstinct GPUだけでなく,RYZENやVegaにも使われ,AMDが今後開発するCPU,GPU,APUに実装されると書いています。

  そして,Infinity FabricはControl FabricとData Fabricを持ち,現在のHypertransportのスケーラビリティーやセキュリティー,QoSなどの問題を解決するとのことです。そして,Infinity Fabricでは粒度が小さくなっており,シェーダ―単位で数1000個のsubcontrollerとCharlie Demerjian氏は書いていますが,私は,これは小さすぎて,AMDのいうCU単位くらいではないかと思います。

  Data FabricのプロトコルはHypertransportを拡張したHT+で,ネットワークのトポロジはP2P,リング,メッシュ,トーラスなど自由度が高いと書いています。

  このようなインタコネクトが出来,CPU,GPUが密に繋がるようになると,NVIDIAのNVLinkよりずっと良くなります。となると,NVIDIAはOpenCAPIに行くのでしょうか?

6.中国のChina OceanwideがIDCの親会社を買収

  2017年1月19日のHPCwireが,中国のChina OceanwideとIDG Capitalという投資会社が,米国のInternational Data Group(IDG)を買収すると報じています。なお,買収する側のIDG Capitalは中国の会社で,買収される側のIDGは米国の会社で,独立の会社のようです。

  このページでもPCの出荷台数などIDCの調査結果を紹介していますが,このIDC(International Data Corporation)はIDGの子会社です。

  なお,IDCのHPCグループはHPC User Forumのオーガナイザで,政府からのHPC関係の調査を受託したりしており,この機能が中国の企業に移ってしまうのは,国家機密の観点からも望ましくないので,中国企業の買収前に,IDCからHPCグループは切り離して,買収から外すとのことです。


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