最近の話題 2017年1月28日

1.アメリカではアメリカ人以外のプライバシーは保護されない

  2017年1月26日のThe Registerが,トランプ大統領がサインした不法移民に関する大統領令に,プライバシーの保護法はアメリカの市民権や永住権を持たない人には適用されないという一節が含まれていると報じています。

  これでは,EUの国民のプライバシーは米国に送られると保護されないことになり,これはPrivacy Shield協定に違反するとEUが噛みついています。

  同様に,日本人がGoogleやFacebookなどに 登録している個人情報やGoogleなどが集めた個人情報は,米国内では保護されないことになってしまって大問題です。IEEEやACMなどの学会の会員登録や HotChipsやSCなどのカンファレンスの登録に含まれる個人情報も,保護されないことになってしまいます。日本政府の対応はどうなっているのでしょ うか?

2.ピュアプレイ半導体ファブのマーケットシェア

  2017年1月23日のEE Timesが,IC Insightsの調査結果をひいて,ピュアプレイ半導体ファブのマーケットシェアについて報じています。ピュアプレイ半導体ファブは,受託生産だけを行っているファブだけが対象で,IntelやSamsungは受託だけでなく自社の製品の製造も行っているので,この調査には含まれていません。

  市場シェア1位はTSMCで,2016年の売り上げは$29,488Mで,シェアは59%というガリバーです。2位はGlobal Foundriesで売り上げ$5,545Mでシェアは11%です。続いてUMCの$4,582Mで9%,SMICの$2,921Mで6%,PowerChipの$1,291Mで3%と言ったところです。

  2015年と比べて業界全体の売り上げの増加率は11%ですが,中国のSMICは31%,イスラエルのTowerJazzは30%,アナログやミックスシグナルに特化したドイツのX-Fabは54%の増加です。

3.D-Waveが2000QbitのD-Wave 2000Qシステムを発表

  2017年1月24日のHPC WireがD-Waveの2000Qbitの量子コンピュータの発表を報じています。Qbit数を1000から2000に倍増した点と,計算を高速化するアニールオフセットという機能を入れたのが目玉です。

  NVIDIAのGTX1080を使ってQuantum Monte Carloで計算を行う場合と比較すると,D-Wave 2000Qは10,000倍速いとのことです。

  D-Waveのマシンは多値の値を表現するには複数のQbitのチェインを使う必要があるのですが,このようなチェインは,普通に計算すると中々状態が変わらず,計算に時間が掛かる原因になっているのだそうです。チェインのQubitをアニールオフセットを使って,入力となる他のQbitが変化した状態で評価を行わせるようにオフセットすると,最大で1000倍速く計算できるそうです。

  White Paperに整数の因数分解の例が載っており,確かにアニールオフセットを使った方が圧倒的に速いのですが,アニールオフセットを使っても10bitの整数の因数分解に苦労しているようで,これでは実用的なケースでどのようなご利益があるのかよく分かりません。

  しかし,Temporal Defense Systemsというサイバーセキュリティの会社が1号機を購入するとのことです。D-wave 2000Qのお値段は$15Mとのことです。

4.東芝がFlashメモリビジネスの分社化を決定

  2017年1月27日に,東芝はFlashメモリビジネスの分社化の決定を発表しました。日経などで報じられているように,米国での原子力関係の損失が7000億円程度となり,このままでは今年度の決算で債務超過で倒産になってしまうので,メモリビジネスの19.9%を他社に売却して2000~3000億円を手に入れようというものです。3月末までに,このお金を手に入れる必要があるので,この分社化の決定はギリギリのタイミングです。

  分割するメモリビジネスの2015年度の売上高は8,456億円,営業利益は1,100億円とのことです。その他,分社した会社の社名や所在地,資本金など全て未定です。19.9%の株を譲渡しても80.1%は東芝が保持しているので,コントロールは維持できます。

  白物家電,東芝メディカルを手放し,今度,虎の子のメモリの20%を手放して,どんどん儲けが減ってしまうので,再建への道は険しいと見られています。

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