最近の話題 2017年3月4日


1. SPIEでAMSLが3400B EUV露光機の現状と次期システムを発表

  2017年3月1日のEE Timesが,SPIEにおけるASMLの発表を報じています。

  NXE 3400Bは解像度が13nmで,5nm世代のロジックLSIや20nm世代のDRAMの露光に適するとしています。スループットは公称125Wafer/Hour以上となっていますが,最初の出荷時には148Wの光源で104Wafer/Hourのスループットとのことです。

  Carl ZeissもAIMSというEUVマスクの検査装置の出荷を開始しており,まだ,色々と問題は残っているものの,5nm世代ロジックのクリティカル層にEUVが適用できる環境が整いつつあるという印象です。

  そして,SPIEでASMLは次世代機の概要を発表しました。ウエファステージの加速度を倍増,マスクステージの加速度を4倍にして,ムダな時間を減らしてWefer/Hourを向上させるとのことです。また,露光に重ね合わせ精度も2~3倍に改善するとのことです。レンズはNAを0.5以上に引き上げ,サブ10nmの解像度を目指します。そして,光源のパワーが上がるにつれてスループットが増えるとしています。

  次世代機の絵が載っていますが,横に描かれた人間と比較すると2.5倍くらいの高さで,4mくらいありそうです。そうすると幅は12mくらいとなります。奥行きは不明ですが,まあ,高さと同じくらいでしょう。現在のNXE3400のサイズが図に示されていますが,時期システムの体積は3倍くらいありそうな感じです。

  Zeissのマスク検査装置の図も載っていますが,やはり,高さは4m弱で,幅はその倍という感じで,次世代EUV露光機よりは一回り小さいものの巨大な装置です。


2. AMDが中下位のRyzen 5とRyzen 3を発表

  2017年3月2日のEE Timesが,AMDのRyzen 5とRyzen 3の発表を報じています。先週のRyzen 7の発表に続くもので,Ryzen 5 1600Xは,6コア12スレッドで,クロックは3.6GHzとなっています。Ryzenの得意なCinebench nTでは,対抗するIntelのCore i5 7600Lより69%高い性能とのことです。

  Ryzen 5のラインナップには4コアの製品もあり,$100~$300の売れ筋をカバーする製品群です。これらは6月までに出荷開始の予定です。

  また,AMDは6月までに,Zenコアを32個搭載するサーバ向けのNaplesを出荷するとのことです。

  ドイツ銀行のアナリストは,Ryzenの出荷により,AMDの今年の出荷量は26%増加し,Intelの出荷量は5%低下すると見ています。

  これまでのところ,Intelが対抗してCore iシリーズプロセサを値下げするという動きはでていません。

3. AMDのRyzenチップの半導体の姿

  2017年3月3日のPC Watchが,Ryzenチップの半導体の姿について書いています。後藤さんの記事です。それによると,Ryzenの基本構成要素はZenプロセサ4コアと8MBのL3$からなるCCXというモジュールであり,Ryzen 7チップは,このCCXを2個集積しています。チップサイズは212.97mm2と,IntelのBroadwell Eが246mm2であるのと比べると13%あまり小さくなっています。

  Broadwell Eは10コアで2コア多く,キャッシュ量も多いのですが,同じ14nmプロセスとは言え,Intelの14nmの方が,AMDの使っているGlobal Foundriesの14nmより1~2割寸法が小さいことを考えると,Ryzenの方が面積が小さいと言えます。そして,コアあたりの性能では,Cinebench nTなどではかなり勝っており,SPECベンチマークでも数%程度遅い程度と,ほぼ同等かそれ以上の性能を実現しています。回路設計も影響しているのでしょうが,やはり,アーキテクチャの勝利と見るべきでしょう。

  後藤さんの記事で,1枚,説明の無いスライドがあります。それはLDO(Low DropOut)レギュレータの説明図で,それによると,Ryzenでは,通常のVRMで12Vから0.9Vに落としてチップに供給し,チップ内ではLDOで電源電圧を調整して,各コアに最適の電圧を供給しています。LDOは電源に直列に入れるトランジスタの抵抗を可変して必要な電圧ドロップを得るもので,電圧ドロップが大きい場合は変換効率が悪いのですが,Ryzenの場合,電圧ドロップは小さく,平均的な使用状況では95%の効率が得られるとしています。

  これに対して,IntelがHaswellで導入したFIVRはチップ面積も大きく,チップ上にインダクタンスを作る必要があるなど,構造が複雑で,変換効率もせいぜい90%どまりと書かれています。

4. カーネギーメロン大のAIがポーカーのトッププロに勝利

  ちょっと旧聞に属しますが,2017年1月31日にカーネギーメロン大は,Rivers Casinoで行われたポーカーのNo-Limit Texas Hold’emにおいて同大学のLibratusというAIシステムが4人のトッププロに勝利したと発表しました。結果として
$1,667,250分のチップを手に入れたとのことで,これが換金されていれば大儲けです。なお,敗れた4人のプロは20万ドルの賞金を分け合うことになるそうです 

  このAIはPSCに設置されたHPE Apollo 2000を中心とするBridgesスパコンの約600台の計算ノードを使って学習を行い,使用部分のピーク演算速度は1.35PFlops,メモリ量は274TBとなっています。一方,対戦に使われたハードウェアはGTX 1080 1台とのことで,ハードウェアコストは大したことはありませんが,Bridgesスパコンを使った学習や,最終段階では17人のプロポーカープレイヤーと対戦させて学習させるなどのコストの方がハードコストよりずっと多いと思われます。

  ポーカーは,相手の手が不完全にしか分からないゲームで,相手の情報が不完全な,ビジネス戦略の立案や,軍隊の戦略,戦術の立案に役立つとのことです。

5. 2016年4Qのサーバ売り上げは前年同期比で減少

  2017年3月2日のThe Registerが,GartnerとIDCの調査結果をひいて,2016年4Qのサーバ売り上げを報じています。

  Gartnerによると,全世界の売り上げは$14.84Bで,これは前年同期比では1.9%の減少です。売り上げトップはHPEの$3.39B,2位はDellの$2.58B,3位はIBMの$1.73Bと続いています。そして,4位はHuaweiの$1.25BでLenovoの$0.95Bにかなり差を付けています。

  前年同期比では,HPEは-11%,IBMは-12.2,Lenovoは-16.7%と大きく落ち込んでいます。一方,Dellは+1.8%と僅かながら売り上げを伸ばしています。そしてHuaweiは驚異的な+88.4%の売り上げ増で,Lenovoを逆転して4位になっています。

  一方,IDCの調査では,全世界の売り上げは$14.6Bで前年同期比で4.6%の減少となっています。トップ3は,HPE,Dell,IBMでGartnerと同じですが,Huaweiはその他の方に分類されているので,4位はLenovoになっており,5位はCISCOになっています。各社の前年同期比の値は,多少違いますが,HPE,IBM,Lenovoの落ち込みが大きいという点は変わりません。

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