最近の話題 2017年3月25日

1. ARMが新テクノロジARM DynamIQを発表

  2017年3月21日にARMは,新テクノロジであるDynamIQを発表しました。ARMの省電力技術であるbig.LITTLEでは,bigコアのクラスタとLITTLEコアのクラスタを持ち,負荷が重いときはbig側を使い,負荷が軽くなるとLITTLE側を使うという方式になっています。

  これに対して,DynamIQでは,一つのキャッシュコヒーレントなクラスタの中に最大8個のコアを含むことができ,8個のコアは同じである必要は無く,異なる能力,電力のコアを入れることができます。従って,サーバ用にはビッグコアだけを入れるという構成も可能です。また,ビッグ4こあとリトル4コアだけではなく,7+1というような任意の分割ができます。また,コアごとに電源電圧,クロックが変えられるので,従来より,ずっと細かい電力制御ができるようになります。また,電圧の制御はハードウェアが自律的に行い,従来よりずっと高速にできるとのことです。

  また,メモリサブシステムは新設計とのことで,処理の性質に応じて割り当てるローカルメモリの用を変えるという記述があり,実際にローカルメモリを持つか,あるいは,キャッシュをパーティションして使えるとかの機能が含まれると思われます。

  ただし,電圧の制御をどのようにやるのか,プロセスのマイグレーションはどのようにやるのかなど,詳しいことは明らかにされていません。ARMは数か月以内に情報を出すと言っているので,8月のHotChipsなどで発表されるものと期待されます。

  そして,プロセサコアのマシンラーニングやAIをサポートする命令を追加し,今後3~5年で,Cortex-A73と比較して,AI性能を50倍に引き上げるとのことです。また,アクセラレータの接続に専用のポートを設けており,アクセラレータのレスポンスを最大10倍に高速化すると書かれています。

  さらに,自動運転に対応するため,ASIL-D準拠のシステムを作れるように,安全性を強化していると書かれています。ASIL-Dは実装方法を規定してはいませんが,一般的には2重化により,一方が故障しても正常動作が継続できるという作りが使われます。

  また,CMN-600 DynamIQを使うと,マルチクラスタのシステムが作れると書かれています。

2. D-Waveが2000 Qubitマシンに新顧客を獲得

   2017年3月16日のTop500 Newsが,D-Waveの2000 Qubitの2000Qシステムの新顧客の獲得を報じています。あたらに2000Qを買ったのはVirginai TechのHume Center for National Security and Technologyで,サイバーセキュリティーとエレクトロニックなセキュリティーの融合の研究を行っているとのことです。

  D-wave 2000Qは,定価は$15Mとのことですが,新規顧客で,マシンの導入を公表できるという広告塔になってくれるVirginai Techのような場合は,相当な値引きがあると見られていますが,本当の値段は明らかにされていません。

  2000Qの最初の顧客は,サイバーセキュリティ関係のTemporal Defence Systemsと発表されており,Vサイバーセキュリティ分野では少なくとも2台が売れたことになります。

  また,また,D-Waveシステムの2番目の顧客であるNASA,Google,Universities Space Research Association (USRA) は,当初導入した512Qubitマシンを1000Qubitにアップグレードしており,さらに,今回は2000Qubitのアップグレードすると発表されました。

  なお,2000QではQubitの制御性が改善されたと書かれており,Qubitの制御回路が改良されているようです。

  また,2017年3月21日のHPC WireはD-WaveとWVの共同研究について報じています。1万台のタクシーの現在位置を把握して,最適に配車する問題は,現在のシステムでは能力不足ですが,D-WaveのQSOLVで問題を分割すれば解けるとのことです。

  完全なエラー訂正をしようとすると,非常に多くのQubitが必要になるのですが,もっと少ないオーバヘッドで実用的に有効なエラー訂正が出来る方法を開発したとのことです。また,Los Alamos研究所のSusan Mniszewski氏らのグループは,D-waveマシンでQuantum Molecular Dynamics問題を解く研究で進歩を達成したとのことです。

  量子コンピュータは,まだ,実用とは言えないかも知れませんが,かなり近づいているという感じがします。

3. 10nm世代では,SamsungがTSMCに1Q先行

   2017年3月22日のEE Timesが,アナリストのAndrew Lu氏のレポートをひいて,Samsungは,10nm LPE(Low Power Early)プロセスのウェファをすでに7万枚出荷したと発表しており,10nmに関しては,TSMCのMedia Tek向けの量産よりも1Q早い立ち上がりであるとのことです。

  この10nmウェファは,SamsungのExynos 8895 とQualcommのSnapdragon 835 に使用されるとのことです。これらのSoCは150mm2程度のチップサイズと見られます。

  また,Samsungは10nmと7nmのロードマップに,8nmと6nmのプロセスを追加しました。これは,16nmと10nmの間に12nmを挟むTSMCと同じアプローチで,ギャップを小さくしてTSMCに顧客を持って行かれないようにする作戦と思われます。

  しかし,これらの先端LSIはNREも高いし,多少のシュリンクでどれだけのメリットが得られるかが,顧客が重視するポイントです。また,ファブもプロセスを増やすと開発費も膨らみます。これでどれだけの利益を生み出せるかとのバランスになります。本当に,小刻みのプロセス開発を行って,儲けが増えるのでしょうかね。

4. AMDがRyzen5を発表

   2017年3月15日のSemiAccurateが,AMDのミッドレンジのRyzen 5 CPUの発表を報じています。

  4コア,8スレッドで3.2GHz/3.4GHzクロックのRyzan 5 1400,クロックを3.5/3.7GHzに上げた1500X,6コア,12スレッドで3.2GHz/3.6GHzクロックの1600,1600のクロックを3.6GHz/4.0GHzに上げた1600Xの4品種が発表されました。お値段は,順に,$169,$189,$219,$249となっています。

  これらにRyzen 5は4月の第2週に発売されます。今回の発表は純粋なCPUだけですが,GPUを搭載したAPUも今後でてくると
のことです

5. Intelが3D Xpoint素子を使うSSDを発表

   2017年3月19日のThe Registerが,3D Xpoint素子を使うOptane SSD DC P4800Xの発表を報じています。最初の製品は375GBで,年末までには1.5TBまでの製品を量産出荷とのことです。

  Intelの現世代のDC P300との比較で,キューが短い時の70-30アクセスのIOPSは8倍,Random Readでは10倍,Random Writeでは3倍と高速アクセスで,Random ReadのIOPSは4.6Mとなります。ReadとWriteのアクセスレーテンシの90%が規定値に入るのは,P3700では0.12/0.9msですが,P4800は最大60倍高速と書かれており,これがR/Wともに適用できるとすると,2/15usとなります。99.9%が規定値に入るのは,P3700では4/0.5msですが,これが77倍速くなると,P4700は0.052/0.0065msという計算になりますが,Wrteが速過ぎ,計算がおかしいような気がします。

  また,書き込み耐性は,P3700が全容量の15回/Dayですが,P4800では2倍の30回/Dayに伸びています。

  これらの性能は,コントローラの性能に大きく依存しますから,3D Xpoint素子が,当初の発表のように,NAND Flashと比べて速度が1000倍,寿命が10倍であるかどうかは分かりませんが,IOPSでは他社製品と比べても5倍かそれ以上,アクセスタイムでは50倍というのは,驚異的な性能で,3D Xpointの真価を示すものと言えます。

  なお,この記事では,お値段の話は出てきませんが,かなり高いようです。


6. IntelがAI製品グループを立ち上げ

   2017年3月24日のEE Timesが,IntelがArtificial Intelligence Product Group(AIPG)を立ち上げたと報じています。Intel社内散らばっていたAI関係の開発をまとめるとのことです。
このグループを率いるのはNaveen Rao氏で,Intelが買収したNervanaのCEOであった人物です。

  なお,先ごろ,$15Bという巨額で買収されたMobileyeが中心となるAutonomous Driving Groupは,AIPGには統合されず,別のグループとして存在することになると見られます。ただし,より広範なスコープのAIPGが,ADGを助けるということもあり得るとしています。

  ADGもAIPGもIntelのベテランではなく,買収された企業のトップが率いる体制で,これも,Intelの変化です。


  
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