最近の話題 2017年4月8日
1. AppleがImaginationと訣別
2017年4月3日のEE Timesが,Appleから将来の製品にはImaginationのGPU IPを使わないという通告を受けたという件を報じています。
Appleはこれまでの製品には,ImaginationのPowerVR GPUをライセンスを受けて使って来ていました。Appleへの売り上げは,Imaginationの売り上げの半分を占めるということで,Imaginationにとっては大打撃で,この発表で,Imaginationの株価は60%あまり下がってしまいました。
AppleがGPUのエンジニアを集めているのは公知の事実で,Imaginationからもエンジニアが引き抜かれています。また,PowerVRコアをライセンスしていても,シェーダコアなどは既にAppleの独自設計になっているという見方もあり,AppleがGPUの自社設計に動いていることは予想されたことです。
Imaginationは,ARMに対抗するため,MIPSを買収してCPUコアにも進出したのですが,ビジネス的にはまだ小さく,Appleの撤退の影響をカバーできません。ということで,Imaginationの先行きに対する懸念が60%強と言う株価の下落に表れています。
Imaginationは,AppleがImaginationの特許などを侵害しないでGPUを作ることは難しいと述べていますが,それはその通りで,特許侵害の訴えが頻発することも予想されます。一方,Appleもそれは予想している筈で,関係特許の一括ライセンスをネゴするということも考えられます。
逆にImagination側からは,Appleに三行半を突き付けられることは予想できたはずで,その場合のコンティンゲンシープランはどうなっているのでしょうね。
2.GoogleがTPUはXeonやGPUと比べて30~50倍高速と発表
2017年4月5日のEE Timesが,6月のISCAで発表されるGoogleの論文をひいて,推論については,GoogleのTPUはXeonやNVIDIAのK80 GPUと比較すると30~50倍高速と報じています。
GootleのTPUは64K個の8bit MACと28MiBのキャッシュを集積したチップで,一方,K80 GPUは4992CUDAコアですから,演算精度は高いものの,演算数では12~13倍のアドバンテージがあります。そして,TPUのクロックは1.4GHzで,92TOPS/sで,K80の8.73TFlopsと比較すると,精度は低いですが,10倍余りの演算ができます。
また,Webサービスの推論の場合は,応答時間に制約があり,K80 GPUの演算能力をフルに利用できず,Xeonより若干速い程度の性能しか得られないとのことです。
また,28GiBという大きなソフトウェア制御のローカルメモリが更に性能向上をもたらし,30~50倍の性能というのは,十分,あり得ると思われます。
なお,NVIDIAのP4yaP40は低精度の演算をサポートし,TPUとの性能差は減少していますが,2015年から使っているというTPUと同時期という条件では,K80との比較は妥当と考えられます。
3.Mentorが生データフュージョンで自動運転分野に参入
2017年4月4日のEE Timesが,Mentorがセンサーからの生データをフュージョンする方式のシステムを開発し,自動運転分野に参入と報じています。
自動運転システムは複数のカメラ,LIDER,Radarなど多くのセンサーを使っていますが,それぞれのセンサーにデータ処理が付いていて,例えば,カメラで車線マーカー,周囲の車,信号などを認識しています。各センサーは,このようなハイレベルの認識結果を出力し,多数のセンサーからの認識結果をフュージョンして周囲の認識を行うというのが現在,使われている方式です。
これに対して,MemtorのDRS360システムは,全部のセンサーの生データの位置や縮尺を合わせるという風にして,生データのレベルでフュージョンを行い,そのデータを使って認識を行うという方式をとっています。
システムは,2個のZync FPGAで,このフュージョンを行い,専用のSoCで自動運転の機能を実現しています。そしてセキュリティーなどを担当するMCUが付くという4チップのシステムとなっています。
従来の方式では,センサーごとの認識で,フュージョン部に送るデータは少なくなり,大部分のピクセル情報は捨てられてしまいます。これに対して,Mentorの方式ではカメラのピクセルデータとLIDARのピクセルデータやRadarのピクセルデータを組み合わせて認識を行うので,認識の精度が改善されただけでなく,認識のレーテンシやスループットも改善されたとのことです。