最近の話題 2017年5月13日


1.NVIDIAがVolta GPUを発表

  2017年2月4日の話題で紹介したように,GTC 2017でVolta GPUが発表されました。驚いたのはTensorコアという演算ユニットを搭載したことです。入力はFP16ですから,一般の科学技術計算には使えません。

  結果として,ディープラーニング用のTensorFlopsは12倍になったのですが,HPC向けのFP32,FP64性能はPascalと比べて1.5倍に留まっています。Volta GPUは,米国の次期フラグシップスパコンであるSummitとSierraに採用される予定ですが,このリソース配分にいちゃもんはつかなかったのか心配になります。

  NVIDIAとしては,とにかく,ディープラーニングが今後の重要市場なので,そこに注力し,ライバルとなるディープラーニング用アクセラレータを叩く作戦にでたと思われます。

  V100チップはTSMCの12nm FFNプロセスで作られ,チップサイズは815mm2と製造限界ギリギリの巨大チップです。また,GPU向けのカストマイズと書かれているので,配線本数の増加などが行われていると思われます。トランジスタ数は21.1Bです。

  Tensorコアは4×4の行列AとBを掛けて,4×4の行列Cを足すという演算を1サイクルごとに実行できるユニットです。AとBはFP16ですが,Cと演算結果はFP32にすることも出来るようになっています。VoltaのSMはFP32が64個,FP64が32個,INT32が64個,Tensorコアが8個,SFUが4個,Load/Storeが32個となっています。

  大きな変更は,Tensorコアが追加されたこととINTコアがFP32と独立して設けられた点です。これでアドレス計算などにFP32コアを使わなくて済みます。

  チップ上には84SMが搭載されていますが,製品は80SMとなっています。

  V100チップは,Tensorコアにチップ面積を割いていますが,P100と比べると,FP32コアは3584個から5120個,FP64コアは1792個から2560個と50%増加しています。ただし,ブースト時のクロックは1480MHzから1455MHzとわずかですが,低下しています。

  それから,これまではNVIDIAのCEOはJen Hsun Huangだったのですが,このGTCからJensen Huangに変わりました。人が替わったのではなく,名前だけの変更です。私としては,Jensenとなると発音としてはジェンセンの方が良いと思うのですが,日本ではすでに定着しているジェンスンと表記するのだそうです。私たちが発音する場合は,どうすれば良いのでしょうか?


2.NVIDIAが自動運転でトヨタとの提携を発表

  2017年5月11日のEE Timesが,自動運転に関して,NVIDIAがToyotaとの提携を発表したと報じています。

  これで,自動運転に関するNVIDIAの提携先は,GM,Ford,WV,ダイムラーベンツ,Audi,Volvo,Teslaにトヨタが加わることになります。まだ,自動運転の実用化には時間が掛かり,この提携が変らずに続くとは限りませんが,緒戦でのNVIDIAのリードは圧倒的です。

  今回のGTCで発表されたVoltaアーキテクチャのGPUはディープラーニング性能を大きく改善しており,NVIDIAのやる気が感じられます。ToyotaはVoltaアーキテクチャのGPUを搭載するXavierを使うとのことです。

  また,NVIDIAの主催するGTC 2017の熱気と,IntelのIDFの中止を対比して,伸び盛りのNVIDIAと停滞気味のIntelという見方も出ています。

3.NVIDIAの2018年度1Qの決算大増収,増益

  2017年5月12日のThe Registerが,NVIDIAの2018年度1Qの決算を報じています。なお,NVIDIAの2018年度1Qは,2017年2月1日から4月30日です。

  売り上げは$1.94Bで,これは前年同期比で48%増,利益は$507Mで前年同期比で144%増となっています。

  データセンタ向けチップの売り上げは$409Mで186%増,企業向けのグラフィックスカードの売り上げは$207Mで8%増となっています。

  また,任天堂のSwitch向けのTegraの出荷が来期は増えるとのことです。

  このところディープラーニング関係で,データセンタでのNVIDIA GPUの採用が相次いでおり,これがデータセンタ向けの大幅な売り上げ増に効いていると思われます。


4.CrayがAI向けスパコンを発売

  2017年5月12日のEE Timesが,CrayのCS-Storm500GTとCS-Storm500NXの発売を報じています。500GTは3U筐体に2ソケットのSkylakeと最大10台のNVIDIA P40,あるいはP100 PCIe GPUを接続できます。一方,500NXの方は4U筐体でXeon E5-2600 v4 CPUと最大8台のP100 SMX2 GPUを接続できます。

  この仕様から見て,500NXの方は従来のHPCより,500GTがディープラーニング向けのようですが,なぜ,筐体のサイズや使うCPUが違うのでしょうね。

5.Windows on ARM

  2017年5月10日のThe Registerが,Windows on ARMに関して,MS BuildにおけるMicrosftの発表を報じています。

  基本的にOSやドライバなどはARMネイティブで動くものを開発し,アプリケーションはWindows on Windows(WoW)アブストラクションレイヤを使い,WoWはX86 to ARM CPUエミュレータでx86命令を実行するとのことです。

  デモでは7zipをダウンロードして実行して見せたとのことですが,QualcommのSnapdragonでの使い心地については触れられていません。

6.HPのラップトップにキーロガーが組み込まれていた

  2017年5月11日のThe Inquirerが, 2015年のクリスマス以降のHPのEliteBook,,ProBookやZBookにはキーロガーが組み込まれていると報じています。スイスのModzeroというセキュリティー会社が発見したとのことです。

  このキーロガーは,デバグなどの目的で特定のキーが押されたことを検出する機能として組み込まれたもので,スパイウェアとして意図的に組み込まれたものではないようですが,それでこのキーロガーの危険性が少なくなるわけではありません。

  MicTray64.exeあるいはMicTray.exeというプログラムが,ユーザのキー入力を C:\Users\Public\MicTray.logに書き込むとのことです。Windowsにログインするたびに上書きされて古いものは消えてしまうそうですが,定期的にバックアップをとっているユーザの場合は,古いログに昔のキー入力が残っている可能性があり,Modzeroは,このファイルを削除することを推奨しています。

  HPからの対策は,まだ,出されていないとのことです。

  

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