最近の話題 2017年6月10日(と5月27日と6月3日の話題)

1.Samsungが2020年に4nmプロセスを目標と発表

  2017年5月24日のEE Timesが,Samsungの半導体プロセスのロードマップのアップデートを報じています。それによると,2020年には4nmのPost FinFETのプロセスのリスク量産を開始するとのことです。

  Post FinFETのトランジスタは,SamsungがMulti Bridge Channel FET(MBCFET)と呼ぶ,ナノシートを使うゲートオールアラウンド構造とのことです。

  Samsungは,今年8nm,来年にはEUVを使う7nmを出し,2019年には5nmと6nmプロセスを出し,2020年の4nm MBCFETプロセスにつなげるというロードマップを描いています。

  このMBCFETについては,2017年6月5日のEE Timesが報じています。IBMとパートナーのSamsungとGlobal Foundriesの発表で,この発表では5nmとなっています。そして,この記事に,3層のシリコンナノシートをゲートで包んだトランジスタの断面写真が掲載されています。

  この5nmのトランジスタは,7nmのトランジスタと比較すると40%高性能で,現在先端の10nmトランジスタと比較すると75%低電力と書かれています。

2.DARPAがグラフ処理プロセサの開発に予算

  2017年6月9日のEE Timesが, DARPAが非ノイマン型のHIVE(Hierarchical Identify Verify Exploit)と呼ぶプロセサの開発に4.5年間で$80Mの予算を付けたと報じています。

  この開発には,Northrup Grumman,IntelやQualcommがハードウェアを開発し,PNNLとGeorgia Techがソフトウェアツールの開発にあたるとのことです。

  グラフ処理はスパースでランダムなデータのアクセスが多いので,8B単位で高速にメモリアクセスができるメインメモリを中心に,高速のスクラッチパッドメモリを持つGraph Analytic Processorがたくさん付くという構造になるようです。詳細は分かりませんが,HPEのThe Machineと似ている感じです。

  1G頂点というような大規模なグラフでもリアルタイムに分析できる,GTEPS/Wで,現在のGPUなどの1000倍の性能を目指すとのことです。

3.Googleがロボット関連企業2社をSoftbankに売却

  2017年6月9日のThe Registerが,Alphabet(Googleの親会社)が,ロボット関連のBoston DynamicsとSchaftをソフトバンクに売却すると報じています。

  Boston Dynamicsはロボットでは老舗,Schaftは東大発のベンチャーで,2014年のDARPAのロボットチャレンジで優勝して注目を集めた会社です。しかし,Googleが狙っていた軍関係の契約を受注できなかったことから,売却することになったようです。また,Boston Dynamicsは軍用のロボットも手掛けており,Googleのイメージと合わないという問題もあったようです。

  売却の条件は,公表されていません。

4.Washington州が無人の自動運転車の公道試験を解禁

  2017年6月8日のThe Registerが,ワシントン州のJay Inslee知事が,無人の自動運転車の公道試験を認めるという知事命令を出したと報じています。自動運転車はシステム故障を含むすべての事態に対処できることが求められています。

  Inslee知事は自動運転車は酔っ払い運転や,わき見運転をせず,安全だと述べています。また,この決定の発表にはGMとGoogleの幹部も同席しており,これらの企業が州内に自動運転関係の施設を作り,人を雇用するという効果も期待しているようです。

5.ボーイングが自動操縦の旅客機を計画

  2017年6月9日のThe Registerが,ボーイングがパイロットのいない自動操縦の旅客機を計画していると報じています。

  ボーイングの787は,既に,自動の離陸,着陸システムを備えており,通常の飛行を自動で行う行う機能は備えているが,ハドソン川の奇跡のように両エンジンがバードストライクで停止した時に,最寄りの空港に行くには高度が足りず,市街地に不時着すると被害が大きいので,ハドソン川に不時着水したサレンバーガー機長のような判断ができるレベルには,まだ,達していないとのことです。

  しかし,パイロット不足は深刻なので,ボーイングはパイロットレスの旅客機の開発を続けており,来年には,乗客は乗っていないのですが,パイロットやエンジニアを乗せた自動操縦機の飛行実験を行う計画だそうです。

6.AlphaGoが碁の世界一ランキングの柯潔九段に完勝

  2017年5月25日のThe Inquirerが,GoogleのAlphaGoと人間では世界ランキング一位の柯潔(Ke Jie)九段との3番勝負で,AlphaGoが3連勝したと報じています。

  また,中国のトップ棋士5人が相談しながら,次の手を決めて指す相談碁でも,AlphaGoが勝利したとのことで,新しいCloud TPUを使うAlphaGoに対して,人間では勝てないことがはっきりしてきました。

  これ以上,やっても意味が無いので,Google DeepmindのDemis Hassabis氏は,AlphaGoの開発はこれで打ち止めで,このAI技術を実用に使う研究に切りかえるとのことです。


7.最後のItaniumのKittsonの出荷を開始

  2017年5月23日のThe Next Platformが,5月からIntelが最後のItaniumプロセサであるItanium 9700の出荷が開始されたと報じています。

  前の世代のItanium 9500 Poulsonが出荷されたのが2012年ですから,5年近い年月が経っており,あまり話を聞かないので開発を中止したのかと思っていたのですが,HPEとの契約に従って,嫌々ながら開発を続けていたようです。

  HPEはIntegrityシリーズのハイエンドサーバのアップグレードに使うようですが,もう,他に使う会社は無いと思われます。

  こういう仕事に廻されたエンジニアは大変で,本当にご苦労様と申し上げたいです。

8.GoogleのクラウドTPU 訂正

  2017年5月22日のThe Next Platformが,GoogleのクラウドTPUの記事を載せています。それによると,4TPUを搭載するボードの左辺中央の2つの幅広のコネクタは,Omni-Path Architectureのコネクトと推測しています。

  5月20日の話題では,私はM.2SSDではないかと書いたのですが,初代TPUはコプロセサ的なCPUと密に繋がっている作りで,これを踏襲しているとすると,Next Platformの方が正しいと思うようになりました。ということで,訂正いたします。

  その場合,ストレージはメッシュネットワークの上端から左右のCPUラックに接続されていると思われます。


  




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