最近の話題 2017年7月22日

1.IBMが新メインフレームz14を発表

  2017 年7月17日のThe Registerが,IBM新メインフレームのz14の発表を報じています。z14CPUチップは14nm SOIプロセスで作られ,クロックは5.2GHzと業界最速です。

   z14 CPUチップは10コアで,最大規模のシステムは170コアまで拡張できます。z13と比較すると,コアあたりの性能は10%向上しており,コア数の増加を合わせるとシステム全体では35%性能が向上しています。

  10進演算がSIMDになり,メモリが3倍の容量まで拡張できるなど,色々な改良があります,z14の最大の売りが,暗号化です。z13は2.5B暗号化トランザクション/日の性能だったのですが,z14では暗号化ユニットを強化し,12B暗号化トランザクション/日と性能が向上しています。

  ハッカーに侵入されると,ファイルやメモリに存在するデータが読まれてしまいますが,暗号化されていればチンプンカンプンで,情報の漏えいは起こりません。z13でも重要な情報は暗号化して扱っていたのですが,暗号化するしないの切り分けはプログラムで指定する必要があり,面倒でした。また,暗号化が漏れていると情報が漏えいするという危険性もあります。

  しかし,z14では暗号化ハードの性能が上がったので,全データを暗号化して処理しても,スループットやレスポンスの低下は問題にならない程度とのことです。従って,暗号化する,しないでアプリに手を入れる必要は無く,全データを暗号化処理すれば良いとのことです。これは手間も減りますし,安全性も高まるという一石二鳥です。

  単純な処理性能ではx86サーバの方がコストパフォーマンスが高いのですが,東京のセンタが火事になっても大阪のセンタで運用が続けられるというSysplexの堅牢性や,z14の全体暗号化によるPervasive Securityに意義を見出す企業もあり,メインフレームには,まだ,一定の需要があります。


2.IBMの四半期売り上げは21期連続でダウン

  2017 年7月19日のThe Registerが,IBMの2017年4月~6月の四半期の業績について記事を載せています。

  IBMの今四半期の売り上げは$19.3Bで,これは前年同月比で5%のマイナスです。そして,これでIBMは21四半期連続の減収ということになります。

  クラウド関係は$3.9Bで15%増ですが,絶対額では大手に水を開けられています。IBMが力を入れているセキュリティーとビッグデータ分野の売り上げは$8.8Bで5%増です。ただし,クラウドの売り上げ増は,メインフレームやサーバの売り上げを食っているという指摘もあります。

  しかし,伸びているのはこの2分野だけで,Watsonが看板のCognitive Solutionsは$4.6Bで2.5%ダウン。Global Business Servicesは$4.1Bで4%ダウン。Technology Services and Cloud Platformsは$8.4Bで5.1%ダウンと冴えません。

  また,Watsonは,開発に手間とコストが掛かり,IBMも開発コストを回収する程度で,利益は出ていないとのことです。ということで,うまく行くケースが一巡すると,新規のビジネスは停滞して,今期は2.5%ダウンということで,先行きは楽観できないとのことです。これはJeffreisのJames Kisner氏の意見です。

  Shaun Nichols氏は,IBMはInferior Biz Modelの略か?と皮肉っています。また,就任以来,ずっと売り上げ低下が続くGini Rometty CEOの報酬は$33Mと驚くほど高いとも指摘しています。


3.JAMSTECの暁光スパコン

  2017 年7月19日の日経テクノロジーonlineが,JAMSTECの暁光スパコンについて報じています。暁光はPEZYグループが開発するPEZY-SC2プロセサベースのスパコンで,記事に写真が載っているが,これまでより一回り大きな液浸槽が26台で構成されている。

  うまく行けば,今年6月のTop500で2位が狙える30PFlos級の性能を実現することを狙っていた。しかし,Vicor社と共同で開発している電源系統の立ち上げに問題が生じたり,プロセサパッケージの製造歩留まりの問題が発生し,26液浸槽の内の,1.5液浸槽しか動かせず,また,クロックも目標の半分の500MHzになってしまったという。

  現在,PEZYグループは,11月のTop500では,当初計画とおり全システムを動かして性能をだす努力を続けているという。

  なお,この暁光が設置されているのは,かつて世界一であった初代の地球シミュレータが設置されていた部屋で,スペースは大幅に余っている。


4.Graphcoreが$30MのRound B投資を獲得

  2017 年7月21日のThe Registerが,Graphcore社の$30MのRound B投資の獲得を報じています。Graphcore社は,昨年,夏に$30MのRound A投資を集めています。Round Aの投資者はDellTechnologies,Robert Bosch Venture Capital,Samsung Catalyst Fundなどの大手のベンチャーキャピタルです。

  今回のRound Bは$30Mで,Round Aの投資者に加えて,DeepMindのHassabis氏やOpenAIのBrockmanなどAI業界の有名人も多く出資者に名を連ねているとのことです。

  Graphcoreについては,2016年11月5日の話題で紹介していますが,同社のIntelligent Processing Unit(IPU)は競合他社のものと比べて,10倍から100倍の性能を持つとのことです。

  同社の従業員は,現在60名程度ですが,この資金を使って2018年末には120~180人に増員して,今後18ヵ月の内には,

を行うとのことです。

5.GraphcoreのColossus IPU

  2017 年7月20日のHPC Wireが,Graphcore社のSimon Knowells CTOのRAAISにおける発表を報じています。まだ製品発表前なので,大雑把な考え方の発表ですが,参考にはなります。

  Colossusと名付けられたIPUですが,16nmプロセスで作られた大きなチップで,1000個以上の独立したコアを集積し,all-to-allのノンブロッキングのデータ交換ができるとのことです。また,複数のチップをクラスタ接続する機能を供えているとのことです。

  チップは大量のSRAMを搭載しており,その範囲内で処理できるように問題を分割して処理することにより,外付けの大容量のDRAMを不要にしています。SRAMのバンド幅は大きいので,DNNの処理性能は,NVIDIAのVoltaやGoogleのTPU2よりもずっと高いとのことです。

  今年の終わりにはアーリーアクセスのカードやアプライアンスを出す予定だそうです。

6.Intel/MovidiusがUSBスティックのAIアクセラレータを発売

  2017 年7月21日のTheInquirerが,Intel/MovidiusのUSBスティックのAIアクセラレータの発売を報じています。Movidiusはスティック型のアクセラレータのプロトタイプを昨年4月に発表したのですが,昨年9月のIntelによるMovidiusのの買収で,伸び伸びとなり,今回,発売にこぎつけたのだそうです。

  MovidiusのMyriad 2 VPUは1Wの消費電力で100GFlopsの演算性能を持つとのことで,USBスティックの消費電力枠の範囲内で十分に動作が可能です。お値段は$79とのことです。

  ただし,このスティックは推論用で,学習はGPUファームなどで処理する必要があります。

  Snapdragonでは,内蔵のDSPで推論の処理を行っているように,色々な分野で既にエンドポイントでの推論処理は行われています。そのような状態で,このスティックがどのように使われるのかは,いまいち,はっきりしないところがあります。

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