最近の話題 2017年8月12日
1.Summit
の最初の筐体の設置開始
2017
年8月8日のTop500 Newsが,ORNLでのSummitス
パコンの設置が開始されたと報じています。SummitはIBMのPower9
CPUにNVIDIAのVolta
GPUを組み合わせたシステムです。IBMは,まだ,Power9を発表していませんが,搬入された筐体にCPUが入っているのは確実です。
正式稼働は2019年1月からの予定ですが,その前の6ヶ月は,Gordon
Bellを狙う計算などを行う馴らし運転を行うのが通例ですから,来年6月の
Top500に登場するのはほぼ確実です。今年の11月のTop500に登場するかどうかは,この時期にどれだけ筐体が揃っており,意味のあるスコアが出せるかによるので
はないで しょうか。
11月に大湖の光を抜いて1位になれるなら,頑張ると思いますが,そうでなけ
れば,手間と時間をかけてLINPACKの計測はやらないのではないでしょうか。
2.IBM
がディープラーニングのスケー
ラビリティを改善
2017
年8月8日のTop500 Newsが,IBMのディープラーニング
のスケーラビリティの大きな改善を報じています。ラーニングの勾配の計算には,全
ノードの計算結果を必要としますので,一般には,計算ノード数を増やすと通信ネッ
クになり,スケーラビリティが下がってしまいます。
IBM Researchでは,IBMのS822LCを32台(POWER8
64個,P100
GPU 128個)のシステムでディープラーニングの学習で95%のスケーラビリティを達成したとのことです。これまでの記録であるFacebookの結果では89%で
あったので,その分,更に大きなクラスタが組める可能性があります。
また,ResNet-101モデルでImageNet-22kイメージを学習
させた場合,Microsoftが2014年に行ったときは,120ノード
(240 Xeon E5-2450L) のサーバを使って,学習に10日掛か
り,認識率が29.8%であったのに対して,7時間の学習時間で33.8%の認識
率となったとのことです。
IBMはDDL(Distributed Deep
Learning)というソフトを開発し,多重のリング構成のネットワークの使用を最適化したことにより,スケーラビリティを高めたとのことです。
このDDLは,IBMのPower
AIのパッケージとして配布されているとのことです。
3.Everspinが
1GbitのMRAM
のサンプル出荷を開始
2017
年8月7日のEE Timesが,1GbitのMRAMのサンプ
ル出荷を,EverspinがFlash
Summitで発表したと報じています。そして,今年中には量産を開始するとのことです。
また,256Mbitのチップを使い,容量1〜2GBのボードも発売するとの
ことです。
MRAMはDRAMに迫る速度を持つ不揮発性のメモリですが,容量が大きい
チップが作れないことから,電源が切れてもデータを保持する必要があるような機器
などに,使用が限定されてきました。
それが,2usのレーテンシで1Gbitという集積度になったので,用途が拡
大すると思われます。
しかし,256Mbitチップを使うボードは$2200〜となっており,かな
りよいお値段で,やはり,用途は制限されるという気もします。
4.
アリゾナ州立大がシリコンチッ
プ上に常温動作のレーザを作成
2017
年8月7日のEE Timesが,アリゾナ州立大と中国の清華大の
チームがシリコンチップ上に常温で動作するレーザの作成に成功したと報じています。
レーザ発振を起こすのは,2テルル化モリブデンの単分子膜で,シリコンではあ
りません。別のところで膜を作り,それをシリコンチップに貼り付け,エッチング
で,2テルル化モリブデンの細い一本橋を作り,さらにこの橋に丸い穴を連続して開
けます。穴のサイズや間隔で共振周波数が変えられるようです。
なお,2テルル化モリブデンの単分子膜は柔軟で割れず,ほとんど透明で,シリ
コンチッ上に取り付けるのは容易で,CMOSと互換性のある低温プロセスでレーザ
が作成できるとのことです。
現在のプロトタイプは通常の連続波のレーザでポンプしていますが,これを電気
的に発振を開始し,変調できるようにするのが,次のターゲットとのことです。