最近の話題 2017年9月9日

1.EUがARM+FPGAのエクサスケールプロジェクトに20Mユーロの予算

  2017年9月7日のHPC Wireが,EUがARM+FPGAでエクサスケールシステムを作るというR&Dに20Mユーロの予算をつけたと報じています。スペインのバルセロナスーパーコンピュータセンター,英国のARM,ICEOTOPE,Maxeler,マンチェスター大学など16のパートナーからなるグループが開発を担当します。

  ARMのCortexプロセサとXilinxのUltrascale FPGAでシステムを作り,2020年までにピーク演算性能400PFlops,消費電力30MWのシステムを開発します。その先は,これを足掛かりに,2022~2023年に4倍の性能のシステムを4倍の電力効率(つまり,消費電力は30MWで変わらず)で実現するという目論見です。

  MaxelerがFPGAのデータフロー,ICEOTOPEが液浸冷却を含むインフラ,Allineaがツール,Zeropoint Technologyがメモリ系のボトルネック解消などを担当するとのことです。

2.IBMとMITがAI研究で協力し,MITに研究所を設置

  2017年9月7日のHPC Wireが,AIの研究でIBMとMITが協力し,MITにMIT-IBM Watson AI Labを新設すると報じています。予算は10年で$240Mとのことです。この研究所は,ハードウェアの開発とヘルスケアやサイバーセキュリティなどを研究するとのことです。

  この研究所のMIT側のチェアマンはAnantha Chandrakasan教授,IBM側はIBM研究所のAI担当のVPのDario Jil氏がチェアマンとなります。

  Watsonはうまくいったケースが喧伝されていますが,ガンの診断ではまだ幼児のレベルで,その他の分野でも苦戦しているようです。IBMとしてはMITの力を借りてAI研究を基本から見直して,本当に役に立つようにしたいというところでしょうか?また,AIアルゴリズムを効率よく実行できるハードウェアやアーキテクチャという話も含まれており,現在のTrueNorthも満足すべきものではないのかも知れません。

3.GoogleのTPU v2

  Hot Chips 29の基調講演にGoogleのJeff Dean氏が登壇しました。マシンラーニングの技術の話が中心ですが,すこし,TPU v2についての新しい情報がありました。TPU v1は256×256の積和演算器のアレイを持っていたのですが,TPU v2では128×128のアレイを2個という構成に変わっています。

  アレイを分割したので,2つのTensor積を並列に計算できるわけですが,それがどういうメリットがあるのかは良く分かりません。しかし,TPU v1と比べると演算器の数としては半分になっており,TPU v1では8bit整数であった演算を浮動小数点にしたためにハード増えて演算器の個数を半減せざるを得なかったのではないかと思われます。

  積和の和の方はFP32での計算と発表されましたが,積の方は低精度というだけで,詳細は発表されませんでした。NVIDIAのVoltaはFP16で積 を計算していますが,MicrosoftはFPGAでms-fp8とかms-fp9という8bit,9bitの浮動小数点数を使っています。Google もこのような低精度の浮動小数点数を使っているのかもしれません。

  また,TPU v2は係数メモリがHBMになり,バンド幅は600GB/sとなりました。ただし,一方の128×128アレイに8GBのHBM,他方に8GBのHBMというように,2分されています。第1世代のHBMですと4個使っても最大500GB/sで,600GB/sには届きません。従って,HBM2を4個使って いるものと思われます。その場合,最大では1TB/sまで行ける筈ですが,600GB/sのバンド幅となっているのは,やはり,1TB/sを出すのは簡単 ではないようです。

4.Intelの10nmプロセスから主要顧客が撤退か

  2017年9月6日のSemiAccurateが,Intelのファウンドリーの10nmプロセスの主要顧客が撤退したと報じています。Intelの14nmプロセスは2013年に開始,10nmプロセスは2015年に開始というロードマップだったのですが,現在でも10nmプロセスを使う製品はほとんどなく,主要製品には14nmプロセスが使われています。

  この状態に業を煮やし,主要顧客の一つが,撤退したとのことです。しかし,SemiAccurateは,どこの会社かは書いていません。Intelのファウンドリーは,CISCO,Panasonic,ARMなどが過去に契約を結んでいますが,これらの中の1社かもしれません。

  いずれにしても,Intelの10nmプロセスが使えるようになるのは2018年ともいわれ,大幅に遅れているのは間違いないようです。

5.OracleのSPARC,Solaris部門のレイオフ

  Oracleはレイオフについて発表していないので,良く分からないのですが,thelayoff.comへの書き込みによると,SPARC部門やSolaris部門の従業員の大部分がレイオフされたとのことです。もちろん,販売した製品の保守はしなければならないので,必要最小限の人員はキープされています。しかし,ハードで言えば,SPARC M8の強化版のM8+を作るエンジニアは残っておらず,今後,Oracleから新しいSPARCプロセサは出てこないという書き込みが見られます。

 また,一説には,今回のレイオフの規模は2500人という報道がありますが,どちらの情報も,他のソースでの確認は取れていません。



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