最近の話題 2017年10月7日

1.米国のSummitシステムは11月のTop500には間に合わない?

  2017年10月3日のHPC Wireが,HPCXXL17で発表されたSummitの状況を報じています。それによると,インストールの開始は2017年2月,インストールの完了は2018年2月,受入検査完が2018年9月で110月からアーリーサイエンスでの使用となっています。

  この発表は9月27日に行われたもので,その時点の状況ですが,全てのキャビネットはOak Ridgeに納入されてインストールされているが,それらはカラのキャビネットで,プロセサボードの納入を待っているとのことです。光ファイバの敷設は作業中とのことです。そして,2018年の早い時期に全てのシステムが到着するのを期待していると述べられています。まだ「,ノードボードが納入されていないとすると,何らかの問題が起こって納入が遅れているということもあり得ます。

  先週の話題では,HPLの測定は頑張って間に合わせるのではないかと思ったのですが,まだ,キャビネットはカラでノードボードが到着するのを待っているという状態では,11月1日のHPL性能の提出デッドラインに間に合わせるのは難しいのではないかと思います。また,太湖の光を抜いて1位になれるなら頑張るでしょうが,部分システムで2位,3位にしかなれないとなると,無理はしないと思われます。ということで,今週は,次回のTop500にはSummitは出てこない方に賭けます。

  Summitの計算ノードはPower9 CPUが2個とVolta GPU6個ですから,単純計算では46TFlops程度になります,これが約4600ノードですから,ピーク演算性能は210PFlopsを超えます。ということは太湖の光を超えて世界一になる可能性が大です。ただし,上記のように,その時期は今年の11月ではなく,来年6月になるのではないかと思います。  

2.産総研のABCIスパコンは富士通が受注

  2017年10月7日の日経ITPproが,産総研のABCI(AI Bridging Cloud Infrastructure)スパコンは富士通が受注したと報じています。産総研や富士通からの正式な発表は,まだ,無いのですが,ABCIスパコンの構成などが従来の発表よりも詳しく掛かれており,内部の事情に詳しい筋からの情報であると思われます。

  受注額は約50億円で,東大の柏キャンパス内に産総研が新設するデータセンターに設置されるとのことです。運用開始は2018年度(2018年4月から2019年3月)と幅のある書き方になっています。

  記事によると,計算ノードはIntelのCPU 2チップに,NVIDIAのGPU 4個を接続したもので,この計算ノードを1088台使用するとのことです。理論ピーク性能は37PFlopsとのことです。そして,ディープラーニングに使われる半精度浮動小数点演算の場合は550PFlopsと書かれています。

  この550PFlopsという数字から見ると,NVIDIAのV100 GPUを使用するものと考えられます。

3.IntelがFPGA搭載にProgrammable Acceleration Cardの販売を開始

  2017年10月5日のHPC Wireが,IntelのProgrammable Acceleration Cardの発売を報じています。このカードはPCIe接続で,Arria 10GX FPGAとQSFPの4x 10GbEネットワークインターフェースと2チャネルのECC付きDDR4インタフェース,FlashやUSBインタフェースを搭載しています。そして,CPUにはx8のPCIeで接続されます。

  このPCIeカードはハーフハイトでハーフ長なのであまり場所は取らないのですが,メザニンカードのMicrosoftのCatapaltの方が実装密度の点では有利なような気がします。

  Arria 10を作るAlteraをIntelが買収してしまったので,このような製品がIntelから発売されることに不思議はないのですが,やはり,データセンタでのCPU+FPGAアクセラレータという使い方が公認されたような気がします。

4.SiFiveがRISC-VアーキテクチャのコアでLinuxをブート

  2017年10月4日のEE Timesが,SiFiveのRISC-VアーキテクチャのU54コアがLinuxをブートしたと報じています。RISC-Vはカリフォルニア大学バークレイ校が開発したRISCアーキテクチャの命令セットで,オープンソースであることが特徴です。

  SiFiveは,バークレイ校の開発者が中心になって設立された会社で,Rocktコア(E300)というインオーダのオープンソースコアとU500というアウトオブオーダコアを開発しています。E300の方はオープンソースですが,U500の方はオープンソースではありません。

  U54コアは1.7DMIPS/MHzで,28nm HPCロセスで作られ,32KBのデータキャッシュと32KBの命令キャッシュを含んで,コアサイズは0.234mm2となっています。U54を4コアと2MBのコヒーレントなL2キャッシュを持ち,GbEインタフェースやDDR3/4コントローラなどを含んだSoCは約30mm2とのことです。このチップを搭載した開発用ボードを2018年の1Qに発売する計画です。

  そして,SiFiveは100種類のプロトタイプSoCを3rdパーティーのIPも含めて$10Kで提供するとのことです。これらのIPは製品の出荷を始めるまでは追加費用なしに使えるとのことです。一般にはIPはライセンスされるときに相当なライセンス料を払う必要があり,SoCの開発を始めるのにはお金が掛かり,ハードルが高いのですが,SiFiveのスキームは,開始時に必要な費用が少なく,ハードルが低いのが特徴です。

  SiFiveは,このようなやり方でオープンソースのハードウェア開発で革命を起こそうとしています。

5.Google DeepMindが倫理部門を設置

  2017年10月4日のThe Registerが,Google DeepMindのDeepMind Ethics & Society (DMES)部門の新設を報じています。

  DeepMindの社員だけでなく,社外の有識者を加えたチームを組織し,AIに関して,プライバシー,透明性,経済的影響,ガバナンス,AIのリスク,モラルと価値などの面から検討を行うとのことです。

  DeepMindは,全てのAIアプリケーションは人間による意味のあるコントロールの下に置かれ,社会的に有用な用途に使われるという原則に基づいて検討を始めるとしています。


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