1.NVIDIAがロボタクシー用のPegasusを発表
2017年10月10日に,NVIDIAはGTC EuropeのJensen Huang CEOの基調講演で,ロボタクシー用と銘打ったPegasusを発表しました。Pegasusは2個のXavierと2個の新開発のAI向けプロセサを搭載し,ディープラーニング向けの演算性能は320Topsとのことです。
Xavierは30TFlopsと言っていますから,新開発のプロセサは130Topsという計算になります。V100のようにTFlopsではなく,Topsと言っていますから,浮動小数点計算ではなく,整数の演算と思われます。整数の演算は浮動小数点と比べると,かなりトランジスタ数は少なくて済みますから,V100のような巨大チップでなくとも130Topsを出せると思います。
運行する範囲がある程度限定されるタクシーの場合は,いろいろな使われ方をする自家用車に比べて起こりうるシナリオが限定されるので,それだけ自動運転コンピュータの能力は低くて済むと考えられ,320Topsあれば,レベル5の完全自動運転が可能と考えているのだと思われます。
320TopsのPegasusを,消費電力500Wとは言えワンボードに収めて,車にAIスパコンを乗せるというのもすごいのですが,NVIDIAの凄いところは,NVIDIA DRIVEと称する自動運転車の開発システムを提供しようとしているところです。
NVIDIAは,すでに,全米の舗装道路の20%の道路のデータをライブラリに収めており,そのデータを使って,自動運転AIの学習をさせ,そのデータで道路を再現して,バーチャル走行ができる環境を作っています。そして,開発した自動運転車を全米の舗装道路全部を走らせるRe-simを行って,ドライブAIに問題がないことを確認する体制を作ろうとしています。このRe-simは5日間で全ての道路を走り終えることができるとのことです。
同じ道路でも天候や周囲の車の状況などで条件が変わりますから,1回走ればよいということでもないとは思いますが,全米の道路を1回は走ったということは,システムが正しく動くことをある程度の確度で確認するものであると思います。
全米のすべての道路のデータベースとか,バーチャルロードをバーチャル走行する環境の構築,それを高速で実行するNVIDIAのSaturn VのようなGPUスパコン環境など,他社が簡単に追いつけるものとも思われません。NVIDIAが自動運転で独走態勢を固めたとまでは言えませんが,それに近づいているという感じはします。このため,NVIDIAの株はうなぎ登りで,もう少しで$200を超える勢いです。
2.NVIDIAのSaturn Vスパコンの写真
NVIDIAはディープラーニングの開発システムと銘打ったDGX-1というシステムを作り,それを並べたクラスタ型のSaturn Vというスパコンを作りました。このシステムは2016年6月のTop500で28位にランキングされています。
その当時,公開された写真はラック1本にDGX-1が10台搭載され,12本のラックが並んでいるというものです。しかし,これでは,Top of the Rackのスイッチがありませんし,中央付近に置かれるトランクスイッチも見当たりません。ということで,これは本当の写真ではなく,CGで作られた偽写真です。
GTC EuropeのJensen Huang CEOの基調講演の中で,Saturn Vスパコンとは言ってないのですが,それ以外のものではあり得ない写真が公開されました。ラック1本に6台のDGXが搭載され,そのラックが11本+11本で中央付近にはトランクスイッチを置くスペースがあるように見えます。
不思議なのはラックによってDGXの搭載位置がばらばらなことです。なぜなのでしょうか?
なお,2017年10月13日のマイナビの記事に,偽物と本物のイメージが掲載されています。
3.産総研のABCIスパコンの補足
先週の話題で産総研のABCIスパコンの話題を紹介したのですが,この時は,まだ,富士通からのプレスリリースなどは出ていませんでした。その後,2017年10月10日に富士通からのプレスリリースが出ましたので,補足させて戴きます。
基本的にはx86システムのクラスタ型のスパコンという扱いで,PRIMERGY CX2570 M4サーバを1088台使っています。CX2570 M4は2U半幅のサーバで水冷となっています。
各サーバは,Xeon Gold CPUを2個,V100 GPUを4台搭載しています。なお,Gold CPUの型番は示されていません。また,ローカルストレージにはNVMe規格に対応したIntelのP4600シリーズのSSDを使っています。
科学技術計算では37PFlops,ディープラーニング向けの混合精度の計算ではピーク550PFlopsと書かれています。
4.Intelが17Qubitチップを作成し共同研究機関に提供
2017年10月10日のHPC Wireが,Intelが共同研究を行っているQuTechに17Qubitのチップを提供したと報じています。QuTechはオランダのDelft工科大の研究機関で,Intelは10年で$50Mの共同研究契約を結んでいるとのことです。
17Qubitのチップを作るにあたって工夫が行われたのは,信頼度の向上とQubit間のRFの干渉を減らすことであったそうです。このチップは20mKで動作させるとのことです。
現状は,チップができたところで,各Qubitの個別の特性がどうなっているか,エンタングルさせた時の特性がどうなるかなどの測定はこれからとのことです。